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Magic of OZ~天性持ちの転生者~  作者: 赤間 そあ
~第二章 王国崩壊編~
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~二回戦~

インシュミットの活躍によりバルバロッサ騎士団団長ドラルコート=レイスを倒すことが出来た。元は部下だったドラルコートを斬る事になったインシュミットは、どこか淋しい目をしていた。裏切ったとは言え仲間だった者を斬る事になり心傷を負う羽目になったからだろう。掛ける言葉も見つからないまま二回戦が始まろうとしていた。


「それでは、続きまして二回戦を執り行いと思います。両陣営代表者前へ。」


進行役の女が会場全体に聞こえるように声を上げた。

バルバロッサ側はルイス=ハーケンが一歩前に出て、グレイの方を見て手招きして挑発をしてきた。それを見たグレイは静かにだが今まで出したこともない殺気を出しながらルイスに目掛けて歩き出した。


「よう。応じてくれてありがとよ。」


「気にするな。安い挑発に乗ったまでの事だ。しかし話し方まで偽っていたのだな。最初に比べ軽いな。」


「だから言ってるじゃねぇか。名演技だったろ?」


「ああ。三流役者のな。」


「ひでぇーな。三流とか傷つくわ。」


「本当の事だ。」


「まぁいいか。」



進行役が片手を上げ、そのまま振り下げ、開戦の合図をした。



「それでは二回戦、開始!!」



ルイス=ハーケンはマントを脱ぎ捨て、腰にぶら下げた剣を抜き、グレイは太刀の柄に手を添え腰を落とした。マントを脱いだとき、グレイが斬ったはずのルイスの右手が露になったのだが、その右手は人族の肌の色は無く、濃赤紫に近い色をしていた。それを見たグレイの視線を感じたルイスが気づく。



「ああ。これか?お前が斬ってくれたからな。新調したんだ。」


「新調しただと?」


「俺は元々、前の戦争で右腕を切られてから無いんだよ。そんときからザザンに妖術でちょいちょい取り替えて貰ってるのよ。材料はこっちが用意しなきゃならんのが手間だけどな。」


「取り替えた?材料?何を言っている?」


「わかんねーよな?材料は俺が殺した奴なんだよ。俺には武技や固有スキルなんて持ってないんだけど腕の持ち主が習得していたりすれば俺が使えるんだなー。強い奴の腕なら簡単に強くなれるし便利だぜ。今回の腕は気持ち悪い色しているが、特別製だから気を付けろよ。」


「どこまでもイカれてる……。」


「お喋りも飽きてきたし、そろそろ始めようか?楽しいお遊戯の時間だ。」


ルイスの剣を持つ右腕から禍々しい殺気を解き放っている。元々の持ち主に心当たりがありグレイは様子見に一撃を入れてみた。だがルイスは避けることなどせずに、その腕でグレイの剣を受けた。だが一撃は斬れることなどなく弾かれてしまう。


「おいおい、いきなりだな。」


「その腕は紫竜人族(ドラゴモラド)の腕だな?」


「おぉ!正解だ。よくわかったな。」


「その肌の色と頑丈さから予測したまでだ。どうせ、固有スキルや武技も毒が関係したものだろう?」


「その通り。固有スキルは『猛毒分泌』武技は『毒手』。しかし、絶滅寸前の希少種族なのに知っていたとは。」


「少ない種族と分かっていながら貴様は殺害したのか?」


「だからなんだ?弱い奴が悪い。当たり前だろう?」



ヘラヘラした態度のルイス=ハーケンにグレイは静かに怒りを滲ませた声で呟いた。



「そうか…。弱者が悪い…か……。」


「そういう事だ。さぁ今度はこっちから行くぞ!」



ルイスが握る右手から少しづつ毒液が垂れていき剣に付着していく。まさしく毒の剣だった。その剣をルイスはグレイに振り下ろしていくのだがグレイは既で躱す。だが髪や服に毒の滴が当たり、ジュウと溶ける音が鳴る。



「はっはっは。剣だけじゃなく飛び散る毒にも気を使えよ。猛毒だからな。」



話ながらもルイスの剣とグレイの刀が交差する。刃を交えてはいるが致命傷の一撃はどちらも当たらない。毒の飛沫にも意識を集中しなければならないグレイは追い込まれてはいるが、なんとか防いでいた。



「そろそろ、終わるかグレイ=ミーア。中々、楽しかったぜ。」


「そうだな……。」



そう言ったと同時にグレイは刀を左腕に斬りつけた。ルイス=ハーケンの左肘から下の腕が宙を舞い、斬られた本人は一瞬何が起きたか把握出来ずにいたがすぐに左腕に激痛が走り絶叫した。



「てめえぇぇーーー!!」


「何を吠えている?貴様が言うところの『弱い奴が悪い』なのだろう?だいたいベラベラ喋りすぎだ。頑丈な右腕が斬れないならば左腕を斬ったまでだ。」



劣勢と思われていたグレイだが見事にそれを10秒先を未来視できる固有スキル『先見之明(センケンノメイ)』を使い翻した。グレイは劣勢なのではなく、相手に隙が出来るのを待ち攻撃に移っただけであった。


「推されてるフリをしてやがったのか!?」


「名演技だろ?」


「腕一本取ったくらいで勝った気になるなよ!」


「いや、終わりだ。」


「なに?!」


グレイは自らが持つ刀を腰から下げている鞘に収めルイスに終わりを告げた。

その場でグレイは空を見上げた。すると、闘技場を差していた太陽の光が何かに覆われ、小さな影が地面に写しだされた。その陰はみるみる大きくなり闘技場を飲み込む勢いで広がりを見せた途端、大きな咆哮が辺りに響き渡ったのだ。



グォォォォォォーーーーーーー!!!!



「なんだありゃー!!」


闘技場にいた観客が空を指差し大声で叫んでいた。ルイス=ハーケンが観客が指差す方を見ると、大きな巨体がゆっくりと闘技場中央に下降してきた。それは、赤紫色をした、とても悠然で堂々とした姿の巨大な竜であった。コクウや飛竜達はその竜の姿を見て興奮していた。

その竜が闘技場に着地し辺りを見回しルイスの右腕を見た瞬間、怒りの表情で睨み付けた。


『貴様か…。我が従者を殺し……腕を盗んだ下朗は……。』


「り、竜だ と……。」


睨まれたルイスは、ひどく震えておりその言葉を発するのが精一杯だった。


『よもや、まだ生きれる等と思うなよ。侍従一族の恨み、我が晴らしてくれる。』


竜は、仲間を殺された怒りを込めた炎を口から吹き出し、ルイス=ハーケン目掛け放ったのだ。その炎は瞬く間に、包み込み叫び声すら聞こえないままその炎に焼かれルイスは絶命した。ルイス=ハーケンが居たであろうその場所には、黒い煤だけ地面に残っただけであった。その竜の元へ様子を見ていたコクウや飛竜達が歩み寄り、跪いたように頭を下げその竜と話していた。


『そこの刀を携える人の子よ。顔も名も知らぬ我が従者の為に怒り、先の下朗と刀を交えてくれたそうだな。礼を言う。』


グレイに向かって、その竜は礼を告げたのだ。コクウや飛竜達が今までの経緯を説明したのだろう。


「元はと言えば私が取り逃がしたのが原因ですので…。」


『謙虚だな、気に入った。我が来るのを感じ、自らの刀を収め、我に敵を打たせてくれた。此れだけでも礼を言う事柄だ。』


「滅相もない。貴方から礼など不要ですよ。十大竜王が一角、紫炎竜ファフニール様。」


『ほほう。我を知っていたか……。』


「ええ。ルイス=ハーケンが無知なだけですよ。紫竜人族(ドラゴモラド)は古よりあなたを崇拝し侍従につく種族ですからね。」


『益々気に入った。これは今回の礼だ。受けとれ。』


そういうとファフニールは赤紫色をした五枚の板のような物をグレイに手渡した。


「これは?」


『我が竜鱗だ。売れば金になるし鍛えれば刀の材料にもなる。お前の主ならば作れるだろう。』


ファフニールはジルに向けてニヤリと笑みを浮かべながら大きな体をゆっくりと向けた。

(スゲーな……。俺を見ただけでステータスを理解したのか?)


『お主、名は?』


「ジル=ヴァンクリフです。」


『飛翔竜や飛竜が世話になっているそうだな。礼を言う。』


「いえいえ。此方も助かっていますので。」


竜王とは、すべての竜種を統べる者の事を言い、世界には十体の竜王が存在していた。その中の一体に礼を言われる経験した者など世界広しと言えど少数だろう。



『お主、中々の力を持っておるな。魔力だけならば我ら竜王の末端に引けをとらぬぞ。』


「そうなんですか?自分ではあまり分からないもので。」


『フフフ、面白い奴だ。また会うこともあろう。その時を楽しみにしているぞ。ハッハッハッ。』


「ええ。また、お会いしましょう。暇があれば我等の街にも遊びに来てください。」


『では、いずれ。さらばだ。』


紫炎竜王ファフニールは、大きな羽を広げ空高く舞い上がり飛び立っていった。嵐のように来ては過ぎ去り、その場にいる者達全てが凍りつくほどの恐怖と威厳だけ置き去りし去っていったのだった。

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