~一回戦~
中央に置かれた台が海の王軍兵士達により撤去され、式典から一転、闘技場に様変わりをした。闘技場内は、まるで学校の運動場のような土で出来た場所で行われ、障害物などなく戦いの合図を出す進行役らしき女が一人。
「それでは、只今より代表戦開戦いたします!!一回戦、両代表者、前へ。」
女の掛け声により、バルバロッサ側はドラルコート=レイスがインシュミットを睨みながら剣を鞘から抜き、片手に持ちながら前に出た。
「偉そうにほざいたからには、覚悟は出来てるんだろうな元団長?」
「覚悟なら出来てるさ。貴様を斬る覚悟だがな!」
「!!!」
審判の合図により、一回戦が開戦した。
「始め!!」
合図を待たずにドラルコートは剣を両手に持ち、インシュミットに振り下ろしたが、読みきっていたかの如く半歩、体を後方に下げながら同時に水平に斬りつけた。間一髪、ドラルコートは体をくねらせ避けたと思ったのだが、一筋の生温かいものが滴り落ちた。
「くっ。」
「浅かったか。避けるのだけは昔から上手いな。」
ドラルコートは首の薄皮を軽く切られていたのだ。だがインシュミットはドラルコートを執拗に煽り続ける。
「一撃で終わると思っていたが、俺もまだまだだな。」
「インシュミット!!まだ愚弄するか?!」
ドラルコートは、頭に血が登り沸騰している。そんなドラルコートを見たバルバロッサはこのままでは不味いと感じ落ち着くよう声を掛けた。
「熱くなるなドラルコート。貴様を煽り自滅を誘っているだけだ。」
ドラルコートは、バルバロッサの言った言葉によりハッと我に返り、冷静さを取り戻した。
「すいません。まんまとインシュミットに乗せられました。」
「落ち着いておれば、貴様の方が闘いならば強いだろう。いけ。」
「はっ!」
インシュミットはドラルコートの剣の腕前だけは認めていたが、短気ということも知っていた。それを利用すれば難なく勝てる相手だと思っていたのだがバルバロッサの助言によって阻まれた。
「そう簡単にはいかないか……。」
元々インシュミットは相手の隙や弱点を見極め、そこを突くことを得意としていたが、今回はその戦法は無理と即座に判断し、頭を切り替えた。
「では、気を取り直して行くぞインシュミット!」
冷静さを取り戻したドラルコートは、大きく深呼吸しインシュミット目掛けて素早く飛び跳ねた。まさしくそれは言葉通り跳ねるであった。足に負荷をかけ反動でインシュミットの周囲を跳ね回る。ドラルコートの武技、『跳飛』。高速の移動術で、相手の周囲を囲むように斬りつけながら飛び跳ねる。剣に一撃の重さは無いが、繰り返し斬りつけられれば相手は徐々に疲弊し闘争心を削り取られていく技である。
「ふはははは、貴様をゆっくりと、いたぶり殺してくれるわ。」
跳ね回りながらインシュミットに傷を負わせるドラルコートは優位に立って攻撃している自分自身に優越感に浸っている。
しかし、インシュミットは小さな傷は負わされているものの冷静に剣を捌き一瞬手前で避けているので致命傷は無かった。
「何を喜ぶ?大きな一撃すら当てられないのに勝っているつもりか?」
「強がりだな。貴様こそ守ってばかりで勝てると思うのか?」
「それもそうだな。なら攻撃に移るとしようか。」
ドラルコートは飛び跳ねながらの攻撃を緩めず、何度も何度もインシュミットに浴びせ続けた。
「ドラルコート、お前はまだ気づいてないのだな?」
「ふん。何を企んでいるのかは知らんがこれで終わりだ!」
ドラルコートの最後の一撃を繰り出したがインシュミットは嘲笑うかの様に左腕の小盾で受け止めた。ドラルコートの剣を小盾で受けたまま膠着状態になっている。
「俺が、開始からすでに固有スキル発動しているのも気付いていないのだな。」
「なに!?」
インシュミットが持つ固有スキル『攻防一体』。攻撃をすればするほど守備力が上がり、相手の攻撃を受ければ受けるほど攻撃力が増すスキルであった。
「俺の固有スキルは、攻撃と守備が上がるだけのスキルだが、貴様に見せた事の無いとっておきがあるんだよ。」
「とっておきだと?」
インシュミットは右手で持つ剣をドラルコートに振り下ろした。
「終わりだドラルコート。武技『竹篦返し』。」
敵から受けた一撃を約1、5倍にして相手に返す技。しかも固有スキル『攻防一体』により更に1、5倍上乗せし約3倍の一撃をインシュミットはドラルコートに見舞ったのだった。固有スキル、武技共に単体ではそこまで強く使い勝手の良い技ではないのだが、二つを併せる事により、インシュミットの矜持ある得手になっていた。
「ギャぁぁぁぁー。」
その一撃はドラルコートの剣や装着していた鎧ごと真っ二つに切り裂いた。
「貴様の敗因は、やはり短気と頭を使わない事が原因だ。」
インシュミットに切られたドラルコートは地面に真っ二つに、された状態で闘技場に崩れ落ちた。その様を見ずインシュミットは体を反転させジル達の元へ戻っていった。ただ、戻ってきたインシュミットの顔は、どこか寂しげであった。




