~推参~
約束の正午まで半刻ほど前。空からの移動をしているジルの元へゼネガーから連絡が入った。
「こちら、ジル。」
『ゼネガーだ。闘技場内部に潜入できた。』
「どうだそっちの様子は?」
『闘技場観覧席には海の王軍と近衛騎士団が民衆を見張るように配置してるな。たぶん無理矢理連れてきたんだろうよ。グレイ達も観客席に、潜入完了してる。そういや、来賓席には各国家代表者も参列して中には、知った顔も居てるぜ。』
「知った顔?誰なんだ?」
『インザスの国王と宰相だ。あと、五月蝿い女二人も呑気に座ってやがる。』
「リザベルとミーシャか?」
『ああ。』
リザベル王女とミーシャ嬢は、概ね式典の招待状を送られてきたことを知り無理矢理、国王やゴリアテ宰相についてきたのだろう。
(静かにしていたと思ったら、抜け目がないな。)
「後は何かあるか?」
『阿呆の海賊共も観客席で見ているぜ。堂々と海賊帽被ってふんぞり返ってやがる。』
「わかった。今は、様子を見てるしかないだろうな。」
『それと、潜入していた時、民の何人かが、バルバロッサに向けて新国反対と叫んでいたんだが、兵士に拘束され連れ出されていた。』
「助けられそうか?」
『大丈夫だ。ガーネットが、すでに向かった。』
「そっちの判断で構わないから民衆に何かあれば動いてくれ。」
『了解だ。また何かあれば連絡する』
「頼んだ。」
ゼネガーとの通信を終え、ジルは皆にゼネガーとの会話の一部始終を伝えた。それを聞いたグレイは「面倒な事にならなければ良いのだが……。」とポツリと言ったのをジルは聞こえていた。
「グレイ、面倒な事とは、なんだ?」
「いえ、リザベル王女とミーシャですよ。」
「二人がなんだ?」
「会場で騒がないかと……。」
「さすがにそんな事……………するな。」
「でしょ。二人なら絶対しますよ。」
「今更、しょうがない。ほっとけ!」
そんな二人のどうでもいい心配をよそに、王都エルシャが視界に入るまでの距離まで来ていた。
「そろそろ着くぞ!闘いの準備を怠るな!行くぞ!!」
「「「 おう!!! 」」」
~ 式典 開幕 ~
闘技場には多くの人々が集まり、騒々しくも緊張感ある雰囲気に包まれていた。各国代表者が一同に来賓席に腰掛け、式典の様子を伺っていた。グリム公国、大国・高天原、ガイア帝国、北西部諸国連合国、インザス共和国、後は5つ程の小国が来席していた。バルバロッサ=ワインズマンは内外的に自らを代表として認めさす為、各国に招待状を送っていたのだ。
管楽器が奏でるファンファーレがどこからともなく鳴り響き、登場口より楽隊の音と共にゆっくりと海の王バルバロッサ=ワインズマンが闘技場中央にある式典台まで歩いてきた。その傍らには、数人の近衛兵と妖術士ザザン=ダン、軍団長ルイス=ハーケン、騎士団長ドラルコート=レイスの姿があった。
バルバロッサは誰にも聞こえないような声で、ザザンに問い掛けた。
「ザザン、奴等は来たか?」
「いえ、まだです。」
「本当に来るのだろうな?」
「間違いないかと……。」
「ならば良いが…。」
バルバロッサは台中央に立ち、闘技場に集まる人々の注目を一心に集めた状態で演説を始めた。
「この度は、お集まりいただき感謝申し上げる。我が名はバルバロッサ=ワインズマン。シガー王国に蔓延る由々しき悪の元凶、国王アルディ=オズワルドを追放さし者である。伝統あるシガー王国を復活させるため、我らはひとつにならねばならん。いまこそ、新しい王である我と共に、この国を一から作ろうではないか。そして新しい国の名は
ロッサ。ロッサ王国である。」
「ハッハッハッハッ!!」
其の時、闘技場の上空より会場を包み込む大きな笑い声が聞こえてきた。その声の行方を兵士達は捜すように首を振り、周囲を見渡していた。ザザンだけが上空を見上げていた。
「来たか…。ジル=ヴァンクリフ!」
彼方、上空より一人の男が闘技場中央台前に地響きと共に降り立った。
その者は降りた衝撃を殺すよう足を曲げたままその場に佇んでいる。大きな鉈を背負いし、片角の大鬼族の男、ラゴールだった。
「挨拶は、終わったかオッサン?」
「貴様何者だ?!」
バルバロッサを守護する近衛兵の威嚇に似た問い掛けに、ラゴールは睨みを利かせながら答えた。
「俺たちか??俺たちは………。」
そして、闘技場中央に次々と飛翔竜や飛竜が降りてきて搭乗していた者達が姿を現した。
屈むラゴールの後ろに皆が立つと、バルバロッサに向かって吠えた。
「オズワルド王国だ馬鹿野郎!!!」




