~空上~
昨日は、徹夜で鍛治をしていた疲れもあり休養日としていたのだが、神話級武器を作ったのが思いの外、街に知れ渡り出会う人それぞれに剣や槍の製作を頼み込まれる事態になってしまった。アルには、剣を拝見したいという人が溢れ、ドルフさんにも人の波が押し寄せ、依頼や弟子入りなんかもあるみたいだ。
一体だれが吹聴しに回ったのかと頭を傾けていたら、呆気なく犯人がわかった。父シリウス=ヴァンクリフだ。
余程、嬉しかったのかあちこちで言ったらしく、出立前のブライや訓練していたオーガストにも自慢したみたいだった。神話級武器は騎士や兵士ならば一度は使ってみたい代物で貴族ならば飾って置きたい装飾品らしく、ブライやオーガストまで創ってくれと頼んできやがった。
(神話級を装飾品だなんて………。)
「残念ながら、加護持ち専用武器じゃないと神話級にならないんだ。俺の杖もアルの剣も専用だし。」
ちゃんと説明すれば分かってくれると思ったら、グランべルに帰ってきてからでいいから伝説級を、打ってくれと言いやがった。
(アホか!伝説級を簡単に作れるかーー!!)
そんな、いざこざが街のあちらこちらで行われていたのだ。
(あぁもう、休養できない…………。)
兎にも角にも、昨日は騒々しい1日が過ぎたのだった。
~決戦当日~
朝早く準備を整えたジル、アルディ、グレイ、シリウス、インシュミット、オーガスト、ルゥ、シェリー、ラゴール、カムイそしてコクウと飛竜達は間もなくグランベルから王都エルシャに向け出発しようとしていた。
ブライ、ヒルデ、ネロ、ミリアリアは昨日の内にグランベルから出立し、今は王都エルシャ近くまで来たと伝達ナイフでつい先程、連絡があった。
コクウにはルゥが手綱を握り、アルディ、グレイ、インシュミット、カムイ、が乗り、ジル、シリウス、オーガスト、シェリー、ラゴールが飛竜に跨がった。
搭乗経験の無い者をコクウに載せる予定だったが、シリウスが飛竜の手綱を握りたいと我が儘を言いグレイと強引に代わっていたのだ。だがグレイは高いところが苦手なので快く代わっていた。
空を爽快に飛ぶ事など、羽が生えた翼人族や
翼羽族、竜人族の特権であった。
グレイ以外の皆は空を楽しみながら移動をしていると、ラゴールが、ジルに話しかけてきた。
「なぁジルの旦那、ちぃーと聞きたいことが、あんだけどよー?」
「ん??なんだ?」
「なんで、こっちにブライを連れて来なかったんだ??」
「なんでって、そんなもん見りゃ分かるじゃねぇか。」
「???」
「人馬がどうやって竜を跨がるんだよ。」
「あぁーなるほどな。」
「そういう事だ。」
「ブライもこんな楽しい事、経験できずに可哀想なもんだ。着いたら自慢してやろ!」
「ほどほどにしとけよー。」
ラゴールはそういうと、飛竜と高く飛んだり、空中で回転したりして満喫していた。それを見た、シリウスとオーガストもラゴールの真似をして遊び、挙げ句には競争までしていた。
「ははは。元気だな。」
アルディもインシュミットもシェリーも笑いながら3人を見ていた。グレイだけは顔を青ざめているのは言うまでも無い。
そんな事をしながら移動していると、プリスベンの街が見えてきた。シリウスは空から見る自分の町を眺め嬉しく思ったが、必ず取り返すと心の中で誓っていた。
シリウスの、その姿を見たジルは気になった事があったのでアルディに聞いてみた。
「アルディ様、少し気になったのですが、王国が奪われバルバロッサが新しい国名にするかも知れませんよね?」
「多分そうなるだろうな。」
「奪い返したらまたシガー王国名乗っても宜しいので??」
「あっ!!」
アルディは、大事な事を忘れていた。この世界では、国が終焉を迎えた時、その名も終わりを告げなければいけない決まりがあった。シガー王国が再興しても、その名を再び付ける事は出来ないのだ。
「しまったな。考えてもいなかった……。」
「今、考えましょう。幸いまだエルシャに着くまで時間はありますから。」
「そうだな。ジル、何か良い名は、あるか?」
「そうですね。シンプルで良いと思いますね。」
「例えば?」
「○○○○○王国ってどうです?」
「単純すぎないかそれ?」
「周知させ易いので、これくらいで良いのですよ。皆にも聞いてみてください。」
アルディはジルの言うように国名の事を皆に聞いてみた。
インシュミットに聞くと、「アルディ様が決められた名が良いかと。」と言い、名すら出さなかった。グレイは其れ処ではないから、そっとして置いた。
次にシェリーに聞いてみると。
「そうですねー。美女の国、美麗郷なんてどうですか?」
(それ、男は住み辛いよね……。)
オーガストに聞いてみれば……。
「やはり、男は筋肉なので、筋肉王国ですね!」
(筋肉馬鹿丸出しだし……。)
ルゥなんて……。
「この子の名前がポチなんで。タマなんていかがですかー。」
(飛翔竜、ポチなの? タマ……?猫??)
ラゴールに至っては……。
「ラゴール帝国!!」
(お前の国になってるし………。)
終いに、シリウスなんか………。
「我らは最強ですからな、最強軍団なんてどうですか!」
(最早、国ですら無い…………………。)
皆から聞いた国名は衝撃的で、アルディは胸の内でツッコミを入れていたのを誰も知らない。
「ジル……。国の名、ジルが言ったのにするよ……。」
「でしょ。シンプルが一番ですって。」
アルディは、ジルの言った言葉の意味が凄くわかった。それと、名付けはジル以外には絶対させないと心に誓ったアルディであった。




