~剣と杖~
ジルはアルディを連れ、北側アース山脈側にある職人街にある鍛治師組合会長ドルフ=ベインの工房に到着した。アルディの剣をジルが打つ事にしたのだ。
カランコロン
扉を明けたら呼び鈴がなり中に入った。数人いたが誰も此方には気を止めず黙々と作業をしていた。
「ドルフさん居るかい?」
「おぉ、旦那久しぶりだな。親父さん達も来てるぜ。で、こちらは?」
「あぁ。紹介するよ。アルディ様だ。」
「はじめまして。アルディ=オズワルドです。」
ドルフは口を開けたまま驚いていた。
「今日はすごい日だな。陸の王が来たと思ったら、国王様まで来られるとは…。鍛治師組合会長ドルフ=ベインと申します陛下。」
「畏まらないで下さい。」
アルディとドルフは挨拶の応酬をしている。工房の中には、グレイとシリウス、インシュミットが居ており自らの手で武器や防具の手入れをしていたが、真剣な眼差しで作業していた為、ジル達に気づいていなかった。
「ドルフさん、急で悪いんだけど一本剣を打ちたいんだが。」
「剣?旦那は魔法師だろ?」
「俺のじゃないよ。王のだよ。」
「王の剣を旦那が打つのかい?こりゃ見ものだな。ヴァルカン様の加護付きの剣ならば凄いに決まってる。」
「鉄の地金あるかい?」
「そんな物よりいい物あるぜ!ちょっと待っててくれ。」
ドルフは奥にある扉を明け何やら捜していた。どこにしまったのか忘れたみたいであちこちの棚の扉を開けては閉めてを繰りかえし、やっとの事で見付けたみたいだった。
「あった、あった。」
埃がかぶった古びた木箱を両手に持ちジルとアルディの前に持ってきた。
「ずいぶん昔に仕入れていて、俺もすっかり忘れちまってたんだが、まぁ見てくれ。」
机の上に、濃い赤の地金と黒光りした地金を取り出した。
「これは?」
「赤い方が『猩々緋鋼』、黒い方が『黒檀鋼』。どちらも鋼より堅いが軽量で耐久性に優れた代物だ。赤は剣や槍等に向いている。黒は杖に向いている。どうだ?」
「凄いなこれは。肌で感じるほどだ。」
「本当だ。吸い込まれる程強く美しいのがわかるな。」
「二人とも解ってるなー。旦那、こいつを使ってはくれないか?」
「いいのか?」
「かまわねぇ。ただし条件がある。」
「なんだドルフさん?」
「デザインは俺に任せてはくれないか?王の剣に携わるのが長年の夢なんだ。」
「わかった。いいよ!」
「本当か??」
「当たり前だろ。こんな良い地金をくれるんだから。王もよろしいですよね?」
「もちろん。こちらからお願いしたい。」
「やったぜ!!実はもうデザインしてあるんだ。」
「ははは。早速、見せてよ。」
ドルフは、設計机の上に置いていた紙を二人に見せた。
「こいつだ。」
そこには赤い刀身の両刃の剣と宝玉の着いた黒い杖が描かれていた。
「おぉー。いいじゃないか!」
二人が誉めちぎるのでドルフは少し照れていたが、自信満々だった。
「剣は刀身を猩々緋鋼で製作。柄に3つの穴が空いているだろ、そこにグレイさんが見つけた、熱結晶、冷結晶、光結晶を嵌め込み普通の剣から魔法剣になる。杖は全体を黒檀鋼で製作。地面に接するところは尖らせ玉鋼で補強。上部に結晶を嵌め込む穴を開けておいた。何を嵌めるかは任せる。剣は王に、杖は旦那に。どうだ。」
「素晴らしいな!」
「時間も無いから早速はじめよう。ドルフさん手伝って!」
「任せとけ。」
「ジル、私にもなにか手伝う事は無いか?」
「それなら、嵌め込む結晶を選びに行ってきてください。
グレイ、王をお連れしてくれ。」
名を呼ばれ気付いたグレイは此方に来た。
「ジル様、アルディ様、来られていたのですか?声を掛けてくだされば良かったのに。」
「手を止めさせたら悪いと思ってな。」
グレイは何故結晶が必要なのかをジルに聞くとそれならばと懐より何かを取り出した。
「これは?」
「ジル様に鑑定していただいた、採掘場で採った石英です。これを加工して《付加》で魔法付与してみては?攻撃魔法や回復魔法を付与した方が闘いの幅が広がるのではと。」
「なるほど……。ジルどうだ?」
「いいですねそれ。グレイの案を採用しよう。石英はまだ持ってる?」
「ありますよ。ただ杖に付ける大きさの物はありませんね。」
「それは、わたしが取りに行くよ。グレイ案内頼めますか?」
「アルディ様が?それならば私が取りに行きますよ。」
「いいんだ。剣を打ってくれる友のために探しにいきたいんだ。」
「アルディ様……。わかりました。では共に行きましょう。」
グレイはアルディと共にジルの杖に取り付ける結晶を採掘する為、採掘場に向かった。それを聞いたジルは俄然やる気を出し鍛治に取りかかるのだった。
「さぁ、ドルフさん。始めようか。」
「おうよ。最高の逸品を打とうぜ旦那。」




