~初友~
3日後王都エルシャで行われる闘いに向け、各々の能力を確認したジルであったが、自身が思っていたより仲間の能力数値が大幅に上っていた。戦いや戦前準備等により向上したのだろう。シリウス、インシュミットはさすが大公爵と近衛騎士団団長だ。数値も高く、固有スキルを持っている。ブライも武技の獲得は聞いていたが固有スキルも獲得していた。予想外だったのがアルディだ。数値は元より、固有スキルと加護を持っているとは思わなかった。
「一子相伝の固有スキル」らしく、王座を継承するときに固有スキルも継承するらしい。血族間でしか継承は不可能なのでバルバロッサも知らなかったみたいだ。
皆が確認をするにあたり、やはりジルの能力には度肝を抜かれていた。余りにも数値が出鱈目で、高い数値のシリウスやインシュミットでさえ、目を丸くしていた。
能力確認が終わり、ゼネガー、ラベンダー、ガーネットは早速、王都エルシャに向かう事になった。
「じゃあ旦那、俺達はそろそろ向かう。何かあれば知らせる。」
「ゼネガー頼んだ。」
斥候に必要な金を各自に渡し颯爽と3名は行動に移した。転移玉でプリスデンまで転移し、それからエルシャまで移動する。今日中にエルシャに着くだろうとのことだ。
シリウス、インシュミットが武器や防具の手入れをしたいというのでグレイが、職人街の鍛治師組合会長ドルフ=ベインの元へ案内した。
ブライ、ヒルデ、ネロ、ミリアリアは明日朝に出立するための準備に取りかかる。
ルゥはコクウと飛竜の世話と準備に、シェリーを連れていった。
ラゴールは体を動かしたいらしくオーガストとカムイを連れ出し、演習場に向かった。
執務室には、ジルとアルディが残った。ジルが休憩にと紅茶と菓子を運んできた。二人でお茶を飲むなど久しぶりで少し気が緩んだのだろうアルディの表情は緩んでいた。
「崇さん、ここの紅茶美味しいですね。」
「摘んできた茶の葉を細かくしてから乾燥して余計な堅い部分を取り除いてるから旨いんだよ。」
「凄いですね。手間隙掛けて作ってるんですね。」
「砂糖もあるから使ってみてよ。」
「砂糖?この白い塊ですか?」
「そうそう。驚くぞ。」
アルディはシュガーケースに入っている角砂糖をカップに入れ混ぜて、飲んでみた。
「おぉ!甘くなった!これ旨いですね。」
「だろー。この焼き菓子も食べてみてよ。」
テーブルの上にある菓子をアルディは手に取りたべた。
口に含んだ途端アルディは幸せそうな顔をした。
「旨い!なんですかこれ?」
「クッキーっていって転生前の世界の菓子なんだ。牛の乳と小麦、卵、砂糖を使った焼き菓子なんだ。」
「毎日、こんな旨い物をこの街の人々は食べてるのですか?」
「いや、実は初めて出したんだ。最初に食べて欲しくてな。」
「私が初めて?」
「あぁ。この体は元々お前のだろ。いま生きていられるのもお前のお陰だからな。せめて誰も経験ない事は一番最初にして欲しくてさ。」
「崇さん……。ありがとう。」
「こんなもんで終わりじゃないぞ。病気で出来ない事だらけだったんだから楽しみにしとけよ。」
「はい。」
「だから、絶対死ぬなよ。」
「ええ。崇さんもですよ。」
「あぁ。わかった。」
お互いの素性を知っている二人の歓談は、実に有意義で癒される時間がそこにあった。
「あの…崇さん。お願いがあるのですが。」
「お願い?」
「今後、二人の時も崇さんと呼ぶのではなくジルと呼んでいいですか?私の時もアルディと呼んで欲しいのです。」
「構わないけど、なんで?」
「知っての通り、私は今まで病床の身で友と呼べる人などいなかった。転生したおかげで体は元気ですが立場上、やはり友はいません。こんな風にお茶を飲んだり、たわいもない話をする事もありません……。」
「お前、なに言ってんの?」
「えっ?」
「俺達、もう友達じゃん。お互い立場はあるけど、そんなもん、場所を弁えとけば問題ないだろ?」
「ありがとう崇さん…。」
「名前もジルって呼ぶんなら敬語使うなよ。俺も今度からアルって呼ぶから。」
「わかりました、ジル。」
「敬語!!」
「わかったよ、ジル。」
「ん、それでいいよアル。」
アルディは心より喜んだ。自分が気にしている事をジルがあっさり突破してくれた。それがなによりも嬉しかった。
「そういえば、アルって武器あるの?」
「あっ!あの騒動で剣を持って来れなかったんだ。」
「おいおい…。じゃあ、作りに行くか。」
「鍛治の神の加護持ちのジルが作ってくれるの?」
「不満か?」
「逆!ヴァルカン様の加護付きの剣なんて見たこと無くて。」
「そういや武器作ったこと無かったわ。」
「本当に、いいのか?」
「さっき言ったろ。初めてを経験させるって。」
「ありがと。友からの贈り物なんて初めてだ。」
「じゃあ、俺達も鍛治工房に行こうぜ。」
ジルとアルディは紅茶を飲み終わらせ、グレイやシリウスがいるであろう鍛治師組合会長ドルフ=ベインの工房へ向かったのだった。




