~占拠~
海の王が大船団を率いて王都エルシャの沖合い50m程のところで停船し小舟に乗り換えシガー城へ向かっていた。
大船団の詳細は、最大500人が搭乗可能なガレオン級帆船が約5隻と、少し小さいが小回りの効く最大50人搭乗可能なキャラベル級帆船が10隻。海の王と呼ばれるだけの事はある大軍であった。ガレオン級には海の王の船の象徴である荒波の絵が描かれた旗が掲げられていたのだがキャラベル級には海賊帽を被った髑髏の絵が描かれていた。それは間違いなく海賊船であった。海賊船が王都に乗り込むなど前代未聞であった為、海の王が引き連れていたとしても騒ぎにならない訳はなかった。
ゼネガーとガーネットはその船団が上陸しようとしていた騒ぎを利用し、王の救出に成功したのだ。王だけではなく、信用できる者数名と内情を知る敵将校2名捕縛し転移玉でシリウス=ヴァンクリフ邸宅に移動したのだった。転移玉で執務室まで安全に転移できたアルディ=オズワルド国王を見たジルとシリウスは安堵した。
「王よ、御無事でしたか?」
「シリウス、心配かけた。ジルの配下と持たせてくれた道具のお蔭で大丈夫だ。」
「それは、良かったです。……ですが、王都は……。」
「海の王バルバロッサ=ワインズマンに占拠されてしまった。あろうことか王国の者が海賊と繋がっていたなど、あってはならない事を……。」
「国王直近の近衛兵達も、やはり…。」
「あぁ。プリスデンに視察に来た時に城に残った近衛兵に根回しをしたのだろう。」
「ここにいる者達以外は寝返ったと見て間違いないようですな。」
国王と共に転移したのは、近衛兵団団長、大臣、秘書長と2名の侍女だ。もちろんゼネガーとガーネットそして捕縛した将校二人も転移している。
「シリウス様、申し訳ありません。近衛兵団を指揮する私の責任です。」
そう言ってきたのは、近衛兵団団長のインシュミット=ハイマンだった。若くして団長に任命された腕利きだ。
「インシュミット、聴くが何故、近衛兵達は国王様や民からも信頼が厚いお前を裏切り、バルバロッサと手を組んだのだ?」
「副団長のドラルコート=レイスの仕業かと思います。」
「奴か……。腹黒いとは思ってはいたが…。バルバロッサと共謀したのだな?」
「間違いないかと思います。兵達もドラルコートの口車に乗せられ寝返ったのかと……。」
「だが乗せられたから仕方なく、などとはいかんぞ?」
「わかっております。国王様を裏切ったのですから情状の余地などはありません。この酬いは必ず。」
「うむ……。」
シリウスの横で話を聞いていたジルを見て国王アルディ=オズワルドは声を掛けた。
「ジル、世話をかけた。」
「いえ。国王様が御無事で何よりです。」
「先程聞いたが、インザス共和国との戦は見事だったみたいだな。戦いぶりをこの目で見たかった。」
「大それた事などしてませんよ。」
「謙遜しなくても良い。大したものだ。」
「有難う御座います。」
国王との会話を聞いていた、周りの側近たちはジルを見て、何者かとシリウスに聞いてきた。
「紹介が遅れたな。我が息子のジルだ。今はミーアにて俺の代わりに領主をしている。」
シリウスの紹介で大臣、近衛兵団団長、秘書長と挨拶を交わした。
近衛兵団団長 インシュミット=ハイマン
法務大臣 フィフス=ゴードリック辺境伯
秘書長 サルビア=ローリングス
侍女 レモングラス
侍女 ローズマリー
大臣は立場的に三人の大公爵の次にあたる地位で通常五名が就いており爵位は公爵と辺境伯だ。この五大臣は戦場以外を取り持っており財政、法務、外交等を各自が受持ち、問題事項をあらかじめ精査する役割を担っている。今回の反乱により逃げ仰せた一人以外の後の4名は海の王側に就いたらしい。秘書長はシリウスに仕える執事のクリストファーと同じようなもので国王専属秘書である。侍女の二人は国王の世話をする者達だ。
自己紹介を軽く済ませジルは、国王との会話を再開する事にした。
「斥候に出ていたガーネットが、空の王を海の王が殺害したと敵将校に聞いたのですが…。」
「なに?初耳だが…。」
「そうですか。捕虜を尋問にかけたいと思うのですが。了承いただけませんか?」
「かまわない。やってくれ。」
ジルはラベンダーとガーネットとルゥに尋問をするように伝えると彼女は光悦な表情で嬉しそうに二人の捕虜を連れて執務室から出ていった。その後をガーネットが付いていった。ラベンダーの顔を見た場にいる者達は一様に顔がひきつっていた。
「ジル、彼女に任せて良かったのだろうか?」
「国王様、大丈夫ですよ。ラベンダーが適任ですから。ガーネットも付いていることですし。さすがに殺す事はしませんよ。たぶん………。」
「彼女の、あの笑顔は怖すぎる……。」
「あはは…は…は………。」
とりあえず空の王については、グレイとラベンダーの尋問を待つ事にし、他の者は海の王の対策を話合う事にしたのだった。




