~代理~
俺は父シリウスとフォード神父と屋敷に帰ってきた。
応接広間に皆を集めた。広間中央の椅子に父シリウスが座り
両脇にフォード神父と執事長が立っている。
長机の左端には俺が座り、対面に母と弟が座っている。
父が腕を組み目を見開きながら全員が座ったのを待った後、話始めた。
「皆に俺が考えていることを話す。」
そういうと、その場にいる者は背筋が延びた。
「いま、俺が公爵としてこの地域の領主なのだが、先日、国王様よりミーア国の統治も任命された。」
続けて話す
「だが、すでにシガー王国で一番広い領地の俺がこれ以上持つことは他の将校の反感を買うと思い悩んでいたのだが、しかし王のご厚意を無下には出来ん。そこで、この領地をジルに統治させようと思う。」
(えっ!!いきなり??)
まわりは、ザワついている。
そりゃそうだ。俺もビックリしている転生して次の日に
領主しろだなんて。
「ちょ ちょっと待って!!俺、まだ18だよ。」
思わず敬語を忘れて言ってしまった。
「おっ!ジル言葉遣いが変わったなー。お前、いい子を演じていやがったな。いいぞ、ほんとの自分をさらけだせ。その方がやり易い。」
父は、嬉しそうにイジってきた。
(あぁーもぉーー)
「だいたい。18歳なら成人だろうが。何を言ってるんだ。」
(えっ。そうなの?)
受け継いだ記憶には、そんなもん無かったぞ。
(あいつ、覚えてなかったな。)
「あなた、ジルは病床に伏せていたので知りませんよ。」
母が助け船を出してくれた。
(ナイス!母上)
「けど、18になったからには統治を開始しなくてはいけないですしね。」
(あららっ)
母は俺の方を見て話を続けた
「この国では爵位が子爵以上の家の子供が18になれば親元を離れ自らの領地の一部を与え統治しなければいけない決まりがあるのよ。」
父が母の言葉に合わせて
「まぁ統治するといっても、領地の一部を領主代理として代行するのだから失敗しても俺の責任だから気にするな。」
うまく丸め込まれているような気がするぞ。
「いきなり、領主代理やります。って言えるわけないでしょ」
「ジル。お前なら大丈夫だ。俺が保証する。」
フォード神父も続いて
「ジル様それは、私も保証しますよ。昔から加護を持つ者が統治する場所は繁栄が約束されていますから大丈夫と言えます。しかも二柱も加護を持つ稀有な存在が統治するならば従属されたミーア国も喜びますよ。」
「そんなものなのでしょうか?」
「ちょっと待って!!」
母がいきなり口を挟んできた。
「フォード神父、ジルが二柱の加護持ち?本当なんですの?」
「ええ、本当です。シリウス様と確認いたしました。ジル様、よろしかったら皆様に御見せしてはいかがですか。」
「わかりました。みんな家族なんで、見てもいいですよ。」
そういうと、胸に入れていた教本を母に渡した。弟のライル、執事長のクリストファー、メイドのラベンダーと執事見習いのガーネット。みんなが確認した。
「ええっ!」
「すごいっ!」
「これはっ!」
思い思い驚いた声をあげた。
そりゃ、俺も驚いたぐらいなんだから驚くよな。
「ジル、やりなさい。これだけの能力なら問題ないわ。やらなきゃダメよ。」母が言うと…
「兄さん、やりなよ。僕も応援するよ。」ライルまで…
「やりなされジル様。」クリストファーも…
「あぁ、もぅ~!!わかりました。やりますよ。やればいいんでしょ。失敗しても知りませんからね。」
皆のやれやれコールに根負けした。
「よし。やってみろ。必要なものは用意する。遠慮なく言え。」
「わかりました。では早速、ミーア国の現状を知る為、ミーア国の国土、財政や財源の資料等何でも良いです。ありとあらゆるものを用意していただきたいです。これを精査してからミーア国にいこうと思います。」
いきなり用意出来ないようなものを言った。
(フフフっこれなら、少しは時間が稼げるだろ。いきなり明日から行けと言われかねないからな。)
「そういうことなら、すぐにでも用意できるぞ。」
(へっ??)
(あるの??)
「お おねがいします。」
(くそー。的が外れたぁ。)
「少し待て。用意させる。クリストフ」
「はい。資料はここに。」
(もう用意していたのかよ。
準備万端じゃねーか。)
一冊の本を渡された。
「これだけ?」
「これだけなら、明日までに読めるだろう。」
「ですよね。自室にて読んできてもいいですか?」
「わかった。では引っ越しの準備はこちらでしておく。明日、早朝出立で馬車で2日後には着くだろう。相手側にはそう伝えるからな。」
「わかりました。準備はおねがいします。」
「俺が助けてやれるのはこれくらいしかないからな。あとはお前次第だ。思いっきりやれ。」
「はい。精一杯、頑張ります。」
これは、腹を括るしかないな。
死ぬ気でやるか。一回死んだしな。