~虚偽~
リザベル王女と《人格操作》によって操られたグレイが戦いが終息した戦場を横切りミーア陣営に移動していた。縄に繋がれた状態で馬に跨がる様を武器を捨てたインザス国の兵士達の鋭い眼差しや好奇の目などが突き刺さるが、王女は何にも感じなかった。王女は兵達には後から敵を騙すための演出とでも言えば何とでもなると思っていた。そんな兵達を横目にジルの居る天幕に着き中に入った。
「ジル様、リザベル王女を捕縛して参りました。」
「おう、ご苦労様。」
天幕の中心にジルが鎮座し右側にブライ、オーガスト、シェリー、左側に、ラゴールとラベンダーが居た。
リザベル王女は自らグレイに捕縛を命じたとはいえ、ジルの前で跪くのは自身の矜持が許せなかったが、今は仕方がないと割りきりジルと話始めた。
「やぁリザベル王女。また会ったな。」
「フン。忌々しい。さっさと殺せばいいものを。」
「俺は、あまり殺すとか口に出したり行動に移したりするのは嫌いなんだよ。」
「よく言う。我が兵士を魔法で焼き殺したくせに。」
「戦争だからな。それはお互い様だ。こっちは怪我人は居るが死者は誰もいないがな。」
「そうでしょうね。ゴーレムとアンデッドが最前線ならば死ぬ兵はいないでしょうね。それに、いきなり最終魔法打つとは思わなかったわ。」
「違うぞ。あれは、第三位階魔法だ。」
「なんですって!あれがあなたのサードマジック?馬鹿馬鹿しい。そんな嘘に騙されるものですか。」
「信じなくてもいいさ。そんな事より、本題に入るぞ。何故、戦争を仕掛けた?しかも用意周到に準備までして。」
「他国から国を守る為よ。あなた達の国と違いこっちは四方八方を敵国に囲まれているから戦力増強は急務なのよ。」
「だから、戦争を仕掛けただと?」
「そうよ。その中でも比較的弱い国から攻めるのは常套手段でしょ。南にはあなた達シガー王国、北にはグリム公国、東には大国・高天原、西にはガイア帝国、北西には12の小国が加盟している北西部諸国連合。これだけの大国に目を付けられたら否が応にも戦うしかないじゃない。」
「なるほどな。だからと言って許す事はないぞ。」
「許して貰おうなんて思ってないわ。まだ負けてないんだし。」
「なに??」
リザベル王女は縄を解き魔法《人格操作》を唱えようとしたが縄が取れなかった。魔法は対象者に手を向けなければ発動しない。縄が解けなければ魔法を使用することが出来ないのだ。
「ちょっと、きつく締めすぎよ馬鹿。外れないじゃない。」
「当たり前でしょう。捕縛してるのですから。」
「えっ?あなた、魔法で操られてたんじゃ……。」
「演技ですよ。」
「はぁ?」
ジルや他の者達は笑いを堪えるのに必死だった。リザベル王女にでは無く、下手すぎるグレイの演技にだ。
「リザベル王女。お前は、魔法に依存しすぎなんだよ。魔法なんざ、使い手次第で強くも弱くもなる。グレイが掛からなかったのは、お前より強いからだよ。」
「そんな馬鹿な!そんなの嘘に決まってる!」
「しょうがない。じゃあ俺に人格魔法してみたらいい。グレイ縄を解いてやってくれ。」
グレイは、リザベル王女の縄を刀で切った。
「後悔しても知らないわよ。《人格操作》!!」
リザベル王女はジルに向かって魔法を唱えたが、ジルは効いていない素振りをしている。それを見た王女は何度も何度も魔法を唱えた。悔しかったのか、涙を流しながら魔法を唱えた。ジルだけではなく廻りにいるブライ達に向けても唱えたが効果は無く、諦めた頃には王女の魔力は枯渇していた。
「もう、いいだろう。お前の敗けだ。」
諦め床に座り込んだ姫に、声を掛けた者がいた。
天幕の入り口から白髪の髪と髭を蓄えた凛々しい年配の男性とその者に仕えていると思われるローブを纏った此方もまた凛々しい男性が入ってきた。その者達は、王女に近づき肩にそっと手をかざした。
王女は、振り向きその人達を見て驚いた。
インザス国 国王レイモンド=ハインリッヒと宰相ゴリアテ=ボルクバルトだった。
「父上!!ゴリアテも!どうして?」
「ジル殿に助け出してもらったのだ。」
ジルがグレイに頼んだ一仕事とは、ゴリアテの救出と王女の元への潜入だった。救出には、ミーシャの案内でコクウの背に乗りインザス国のゴリアテが幽閉された城へ降り立ち助け出したのだ。その城にはインザス国王までも軟禁されており二人を助け出したのだ。戦争中の為、城には数名の兵士しか居なかったので救出は容易だった。その時に、城にある鎧等を拝借し王女陣営近くまでコクウで運んでもらい、王女の元までたどり着き潜入したのだった。
リザベル王女はインザスが陥っている四面楚歌の状況を打開するため、シガー王国に戦争を仕掛ける事を国王と宰相に進言したが一蹴され、仕方なく二人を幽閉し事を起こしたという事だったのだ。




