~圧倒~
ジルが魔法小鞄から取り出した鉄製の小さな玉を指で摘まみ、リザベル王女に見せた。
「その玉がなんだというのです?」
「まぁ見ていて下さい。」
ジルは、小さな玉を地面に軽く放り投げた。
すると、その玉は地面の岩石と同一化しながら膨れ上がり成形されていき、全長10mほどの巨大な人型の岩人形がそこに立ち上がった。
「な なんですのそれは!!??」
「魔岩傀儡ですよ。俺の命に忠実な人形です。魔力も食料も消費しない有能な兵ですよ。」
「…ジル殿が強気なのは、これがあったからですね。ですが1体だけでは…。」
「1体?何言ってるんです?面白いのはこれからですよ。」
ジルは魔法小鞄から合計100個の鉄の玉を放り投げた。魔傀儡核と名付けたその玉は、岩を吸着すれば魔岩傀儡に、砂を吸着すれば魔砂傀儡に、鉄鉱石ならば魔鉄傀儡に変化した。
魔岩傀儡40体、魔砂傀儡30体、魔鉄傀儡30体、計100体の魔傀儡軍団の完成である。
「いかがですか?一体で一般兵の30人程の力はありますよ。さらに…。闇暗系第三位階魔法《不死者行進》。」
ジルは、ゴーレムが横一列に並ぶ後ろ側に魔法を唱えた。
ジルが唱えた途端、昼間だと言うのに辺りが暗くなり大量の黒い霧が漂い始め、死魔術師100体、骸骨兵100体、霊鎧100体、死神100体、屍喰100体、首無騎士100体、死竜20体が出てきた。
「これで我らの兵は全部ですよ。ちなみに《不死者行進》は魔力消費激しいので、3日しか持続できませんけどね。」
ミーア戦力はジル、ブライ、オーガスト、シェリー、ラゴール、ラベンダー、兵士100、魔傀儡軍団100、不死者軍団620、合計826名となった。
リザベル王女とルイス=ハーケンは言葉を失っている。インザス共和国の兵達は凍りつき、怯え震えている。それもその筈、巨大な魔傀儡や死竜の前では一般兵の人族の力など役には立たない。消耗戦では間違いなく勝てはしない。
「もう、ちょっと時間があればインザスの兵と同数まで揃えられたのですけどね。」
リザベルは、ジルの軍勢を見て瞬時に頭を切り替えた。ジルが持つこの戦力が欲しくて欲しくてたまらなくなったのだ。
「ジル殿、提案がありますの?」
「提案?」
「わたくしと手を組みませんか?あなたの軍勢と、わたくしの兵がいれば世界の全てが手に入りますわよ。」
「もういい………。」
「えっ?」
「もういいと言ったんだ。お前は俺たちを蹂躙すると言った。今更、手を組む筈ないだろうが。」
「いや、しかし……。」
「全軍攻撃開始!」
リザベル王女は、ジルの逆鱗に触れている。しかしまだ何かを話そうとしていたがリザベル王女の言葉をかき消すようにジルの号令が響き渡り戦いの火蓋が切って落とされた。
「火炎系 第三位階魔法《火柱》!」
リザベル王女と話している場所からジルは最初の一撃を敵の軍勢の中心部に向けて放った。
威力が桁違いのジルの魔法が敵兵の1割を焼失させた。
それを合図にゴーレムとアンデッドが敵に向かって行く。
ジルは戦場を背に陣営まで下がっていった。
ブライや他の者達が陣営の天幕の前で戦場の様子を見ていた。
「主、楽しみにしとけとはあれの事だったのですか?」
「ああ。便利だろ。」
「ここから見ても敵が可哀想な程、宙を舞っていますよ。」
「核を壊されるか命令達成するまで動き続ける仕組みなんだよ。」
「ゴーレム強すぎません?」
「それ、俺も予想外だったよ。あんなに強いとはね。」
「主の魔法も相変わらずですし。」
「ムカついたから加減できなかったな。」
「戦場では頼もしい限りですよ。では我らも、そろそろ行きます。」
「王女と将校たちは殺すなよ。」
「了解です。主はここにいてて下さいよ。」
「なんで?」
「なんでって。味方が主の魔法に巻き込まれるからですよ。」
「へいへい。待ってたら、いいんでしょ。」
「お願いしますよ。」
装備を整えたブライ達は一気に戦場へ駆けて行った。ブライは戦場を縦横無尽に走り回りながら敵を倒し、オーガストは、100名の兵士達と共にインザスとの距離を詰め、シェリーとラベンダーは敗走する敵兵をなぎ払い、ラゴールとその一味は高笑いを上げながら敵を倒している。その戦場を制しているのは紛れもなくジルの軍勢であった。リザベル王女やルイス=ハーケンはその光景に気が狂いそうになっている。リザベル王女は後悔していた。手を組む相手を間違った事を、ミーアの兵の力を侮った事を、そしてジル=ヴァンクリフその者との圧倒的なまでの力の差を。
その戦場の光景は誰が見ても、蹂躙しているのはジル達の方だった。




