~払拭~
ミーシャ=ボルクバルトと名乗る女とジルが天幕の中に居るところにラベンダーが呼びに行ったグレイがやって来た。グレイが天幕に入った時、目前の女に声を掛けた。
「ミーシャ!なのか?」
「グレイ!元気だった?」
「ああ。だが何故、こんなところにミーシャが?ジル様どういうことです?」
「俺も、こんがらがって訳がわからん。それで、グレイとミーシャは顔馴染みなんだな?」
「ええ。一応、婚約者なんです。」
「じゃあ、お前は婚約者の父親を殺すつもりだったの?」
「は??何をおっしゃってるのですか?なぜ私がミーシャの父を殺すのです?」
「父親が誰か知らんのか?」
「知ってますよ。ミーシャの父親は貿易商のデリー=コリンズさんですよ。最近は会っていませんが…。」
「偽名か…。話は変わるがゴリアテ=ボルクバルトは見た事あるのか?」
「当たり前じゃないですか。」
「本当か?はっきり顔を見た事があるんだな?」
「いえ、ハッキリとは…。いつもフードを目深く被って顔が隠れていますから…。」
ジルはミーシャにも話を聞く事にした。
「ほら、私が言ったことほんとだったでしょ!」
「ああ。婚約者って事はな。」
「リザベル王女が黒幕の証拠はないのか?」
「あったら、すぐに見せてるわよ。」
「じゃあ何故、グレイに素性を隠してた?」
「父に口止めさせられてたからよ。敵対関係のある国の王と自国の宰相が仲良く懇談するわけにもいかないでしょ。」
「言われてみればそうだが…。ミーシャもグレイの素性を知らなかったのか?」
「もちろん。幽閉された父に聞くまで知らなかったわ。ミーアの城で会ったこと無かったし、会うときはいつも私の家の別荘だったから。」
グレイは話について行けず困惑な表情を浮かべている。ジルは、今までの話を頭で整理しグレイにそれを伝えた。リザベル王女が話し合いを申し込んできたが自国に帰還したこと、ミーシャが現れリザベル王女を狙った事、ゴリアテ=ボルクバルトが1年も幽閉されミーアとシガーの戦争には関与していないこと、グラント=ミーアとゴリアテが懇意の中だということ、そしてミーシャはゴリアテの娘だということを。
「まさか、ミーシャの父のデリーさんが実はゴリアテで1年も前から幽閉されているなんて…。」
「二人は秘密裏に会い、なんとか戦争を止めたかったのだろうな。グレイ、お前はミーシャを信じるか?」
「ええ。彼女の言う事ならば信じます。」
「そうか。ならば俺も信じよう。念のために城にいるルゥを呼んでくれ。ルゥの『以心伝心』使って調べるぞ。」
「はい。では早速。」
城にいるルゥを伝達ナイフで内容を伝えたら今すぐコクウでこちらに飛んでくるという。すぐに到着するだろう。
リザベル王女が来た時点でルゥを横に置いておけばこんな事にはならなかった。明らかにジルの人選ミスだが、予想できる筈もない。
「全てを知る鍵はリザベル王女だな。振り回されてばかりだ。」
「確かに…。自国に帰ったのも処刑も演技ですね。」
「おそらくな。まったく、たいした役者だ。」
「しかし、このままでよろしいのですか?」
「んなわけないだろ。そろそろ、こちらからも打って出るさ。」
そうこうしているうちに、ルゥがコクウに乗って陣営までやってきた。今まであった事をルゥに話し、固有スキル『以心伝心』で、ルゥはミーシャの心を読んだ。ミーシャは、嘘偽りなく本当の事をジルとグレイに話していた。
「グレイ、お前に一仕事任せたいがいいか?」
「もちろん。何をすればよろしいですか?」
「○○○と×××を頼む。」
「了解しました。では今からミーシャとルゥと出立いたします。」
「任せた。」
時を同じくしてインザス国に帰還中のリザベル一行の馬車の中。リザベル王女と指揮官ルイス=ハーケンが話していた。
「フフフッ。中々、面白くなりましたねルイス。」
「こちらの思い通りに事が運びましたな。しかし矢を放ったのは誰だったのですかね。」
「たぶん、ゴリアテの手の者でしょ。」
「気付かれていたのですか?」
「いえ、まったく。あれのお陰で怪しまれなく済みましたしね。領主代行の顔も見れたし計画は順調ですね。」
「ミーアの領主代行も対したことないですね。陸の王の息子なれど父とは違いますな。」
「騙されてるとも知らず。ゴリアテを悪者と勘違いするくらいですものね。ゴリアテに少し同情してしまうわ。」
「気付くでしょうか?」
「おそらくね。今ごろ矢を放った者に真相聞いて悔しがっているでしょう。わたしを殺しておけば良かったってね。」
「姫様に刃を向けてきますね。」
「その前にシガー王国は滅亡しますよ。」
「では、予定通りに?」
「ええ。インザス兵2000でグランベルへ。王都には、あの者達の軍勢1000が攻める手筈です。同時侵略開始です。」
「面白くなってきましたね。」
「あぁ。楽しみだわ。心逝くまで蹂躙してあげる。」
不気味な笑みと共にリザベル王女とルイス=ハーケンは高笑いを上げた。




