~敵、進軍~
敵は動く気配すらなく情報収集班からも定期連絡はあるものの、これといった情報も出ないまま3ヶ月が経とうとしていた。軍備増強班は鉱山に入り浸りで作業したおかげで予定していた鉱石量は十分確保できた。ラゴールの贖罪も、しょうがないから許してやることにした。食糧貯蓄班は順調に成果をあげている。ポルタの植物操作のおかげだな。ミリアリアは魚を干物にしルゥは狩人達と野生の獣を捕まえ干し肉を製造して保存食を作っていた。貯蓄倉庫は城の地下にあるので冷結晶を多数設置して冷蔵保管庫として利用している。外貨獲得班は銀鉱山を解放できたのが大きく銀の売買をマウワー公のツテを利用し売りさばいている。桃色岩塩なんかも売れ行きは好調だ。
皆は戦争の事など忘れるくらい忙しく有意義な時間を過ごしていた。食う寝る働くたまに遊ぶ。戦争などなければミーアの発展は成長の一途をたどる筈であった。
だが、そんな時は長く続かなかった。
情報収集班ラベンダーから伝達ナイフで連絡が入ったからだ。
「こちらジル。ラベンダーどうした?」
「ジル様、敵が動きましたわ。」
「そうか。連絡が来た時点で、そう思ったよ。」
「さすがですわ。」
「世辞はいい。数はどれくらいだ?」
「400程ですわ。」
「400?少ないな。」
「そうですわね。わたくしはこのまま調査しておきます。また連絡いたします。」
「わかった。気を付けてな。」
ラベンダーはインザス共和国に潜入中で、武装した兵が進軍を開始した事を知らせ、すぐに調査を再開させた。だが本来2000の兵がいるはずなのだが進軍しているのは400だけなのが気になった。
(甘くみられているのか?)
だが、こちらとしては都合が良い。いきなり2000もこられたらどうにもならないからな。ミーアに到着するのは3日後の明朝。決戦はアース山、東側の平地だ。
あそこならば、街から離れているし被害を防げると予想したからだ。
直ぐ様、父シリウスに通信玉で連絡をとった。
「父上、ジルです。」
「一ヶ月ぶりだな。どうした?」
「とうとう、インザスから兵が動いた模様です。」
「そうか。やはり待ってはくれなかったな。」
「ええ。インザスはこちらで対処します。ですのでそちらは、お任せします。」
「大丈夫か?お前達の方が敵は多いぞ?」
「何とかして見せますよ。父上は王をお守りください。」
「わかった。ジル、死ぬなよ。」
「簡単に死にませんよ。では。」
父との通信を終え、すぐに幹部達を緊急召集した。
~執務室~
幹部は達は開戦したこと伝令役から聞き、すぐに執務室まで飛んできた。各自、大粒の汗を滴ながら走ってここまで来てくれたことは何も言わずとも分かった。
俺が神妙な面持ちで皆を待っているのを見て、言葉を発する者など一人もいなかった。
「みんな集まってくれたな。伝令役から聞いたと思うが、到頭インザスから進軍が始まった。皆は各自の仕事を懸命にしていたにも関わらず、こんな事態になったのは俺の責任だ。もし、最悪の事態になれば俺を恨んでくれ。」
「それは違います。ジル様は我々を導いていただきました。感謝はあれど恨む事などありません。」
「ありがとうグレイ。」
「主、ここにいる者達は敗れるつもりなどハナからありませんよ。」
「ブライ。そうだな、すまん。」
「だいたい、こんな時でもどうにかするのが主でしょ?なに汐らしい事言ってるんですか。」
「あははは。ブライに励まされるとは思わなかった。俺は今まで街を守ることばっかり考えていたよ。守られるほど弱い街じゃなかったな。」
「そうですよ。街は壊れたら直せばいいんです。街の事は気にせず戦いましょう。結界も張ってあるんですから街の者たちも大丈夫ですよ。」
元々、俺には覚悟が足りなかったのだ。なるべくなら敵であろうが亜人であろうが魔物であろうが殺すという行為はしたくはなかったのだが、仲間や民に刃を向けた以上許すことはしないし赦しを乞うことも認めない。全力で叩き潰す。悪魔と罵られようとも全てを受け入れる。俺は腹を括り、敵を殲滅することを皆に告げた。
「まず前線に兵士100と防衛に兵士200に分ける。前線には俺とグレイ、ブライ、ラゴール、オーガスト、シェリー、ラベンダー。防衛にはマウワー公、シンドルフ公、ウィンストン公、ネロ、ルゥ、ヒルデ、ミリアリアだ。ゼネガーとガーネットには、引き続き情報収集に徹してもらう。」
「ジル様、兵士100でよろしいのですか?」
「後で見せるが、別に兵士用意してあるから任せておけ。そのあと、グレイは策を練ってくれ。」
「心得ました。」
「前線に出るものは戦いの準備に取りかかれ。防衛の者達は後方支援の準備と街の者に通達しろ。村の者には街へ避難をさせろ。」
「了解です。」
「今この時より我々はインザ国と戦争に突入する。俺たちに喧嘩を売ってきた事を後悔させてやれ。インザスの兵を殲滅せよ。」
「「「はっ!!!」」」




