~はじめての朝~
小鳥の囀りで目が覚めた。
転生して初めての朝だ。
(不思議な事が立て続けにおこったな…)
ただ、今から昨夜起こったこと説明しなきゃならないと思うと憂鬱だ。
説明できない部分には「記憶にございません。」で通すことにしよう。
古い政治家がよく使う手だな。
こんなところで役に立つとは思わなかった。
ここの人たちのことをあらかじめ思い出しておこう。
屋敷には父親、母親、弟、執事とメイド、執事見習いがいる。
名前 シリウス=ヴァンクリフ
続柄 父
種族 人族
年齢 40才
ヴァンクリフ家 当主
爵位 大公爵
ヴァンクリフ家当主にてシガー王国北側地域を領地に持つ。性格は豪快だが計算高い。また王国に仇なす者あれば容赦なく斬って捨てるため皇帝の懐刀とも言われている。シガー王国、重鎮の一人。二つ名は「陸の王」。
頭の中でその人の事を思い描くと説明文みたいなものが
出てきた。
(おぉー!!これは便利だな。さすが剣と魔法世界だな)
さすがにステータスや寿命は見れないが年齢はわかるのか。
丸裸にされるのは俺も恥ずかしいしな。
名前 マリア=ヴァンクリフ
続柄 母
種族 人族
年齢 36才
大公爵婦人
18歳でシリウス=ヴァンクリフと婚姻を結び、二人の子供を授かる。性格は温厚だが厳しい一面もある。
貴族の令嬢だったため早くに結婚した。
名前 ライル=ヴァンクリフ
続柄 弟
種族 人族
年齢 12才
ヴァンクリフ家 次男
兄を尊敬し家族を大切にする正義感溢れる少年。髪は金髪の端正な顔つきで性格豪快でもある父と温厚な母のちょうど半分くらいである。
剣に至っては兄よりも強い。
名前 クリストファー
種族 人族
年齢 60
ヴァンクリフ家 執事長
長年ヴァンクリフ家に仕えている。メイドたちの教育係でもあり礼儀作法に厳しいが二人の跡取りには少し甘い。
いまは、執事長だが昔は王国暗部だったため剣や魔法も使いこなす。
名前 ラベンダー
種族 吸血鬼族
年齢 20
ヴァンクリフ家 メイド
10才の頃に孤児院から引取られてから以降ヴァンクリフ家に仕えている。ラベンダー色の長い髪が特徴で名前の由来らしい。見た目は優しいお姉さんだが、ヴァンクリフ家に迷惑をかけるような輩には冷たい目で見下し口調も荒くなる。クリストファーが暗器術を教えており諜報活動にもたけている。家事全般そつなくこなす。
名前 ガーネット
種族 山羊族
年齢 18
性別 男
ヴァンクリフ家 執事見習い
8才の頃に、ラベンダーと共に孤児院から引き取られてきた。短髪の赤い髪で頭から角が出ているのが特徴だ。性格は口数が少なく物静かでラベンダーを姉みたいに慕っている。ラベンダーと同じで当家に仇なすものには敵意を向け威圧する。
クリストファーが戦う術を教えており屋敷に忍び込む者には容赦しない。
2人が人族でないのには驚いた。
見た目は人族にしか見えないからだ。
この世界では多種多様な種族が生活をしているらしい。
亜人といわれる者は体の一部が特徴的だが9割は人間と変わらないみたいだ。
違う種族同士でも供に生活できるのか。
差別するような家族でもないし大丈夫なんだな。
部屋でブツブツ言いながら考え事を寝巻きのまましていると
コンコンっドアをノックする音が聞こえてきた。
「はい」
「おはようございます。お起きになられましたか?」
ドアの前でそう言葉を交わすと
ガチャ
開いたドアの前で一礼をし男の老執事が部屋に入ってきた。
クリストファーだ。
顔を上げ俺を見るなり、ビックリした表情だった。
「おぉ。ジル様、立っていても大丈夫なのですか??」
前の俺は病弱で寝たきりだった。
そりゃ驚くのも無理はない。
「もう、大丈夫ですよ。」
元気良くそう言うと。
嬉しそうに笑ってくれた。
「お元気になられて…爺は嬉しい限りです。
ささ皆様がお待ちです。お着替えをお手伝いいたしますから元気な姿を皆様に見せてあげてください。」
クリストファーは俺の寝巻きを脱がそうとしたが
(勘弁してくれ。着替えは自分でするって……。本当は子供じゃないんだから)
「ひとりで出来ますから大丈夫ですよ。」
「よろしいのですか?わかりました。朝食の用意ができておりますので後程お越しください。」
「はい。着替えたらすぐに行きます。」
一礼をし老執事は部屋から出ていった。
着替えがテーブルに置いてあったのですぐに着替え
記憶を頼りに応接間に向かった。
目の前には大きく重厚な観音開きの扉がある。
軽く深呼吸をして、その扉を開けた。
皆がビックリした表情で俺を見てる。
母親は両手を口に当てて嬉し涙を流していた。
「おはようございます。」
「おはよう。もう体はいいのか?」
父親が一番最初に口を開いた。
「ご心配お掛けして申し訳ありません。この通りもう大丈夫です。」
「積もる話もあるが、朝食を食べたら俺と一緒にきてほしいところがある。」
真剣な眼差しで父は俺に言った。
「わかりました。お供します。」
そう言うと皆で朝食を食べ始めた。
朝食にはパンとスープ等が並べられているが、あまりおいしくない。
パンは固く。スープは薄い。
現代人の口には合わないらしい。
せっかく作ってもらったものを残すのは失礼だから食べきることにした。
朝食を食べていると、ジロジロ見られニヤニヤされている。
(なんだ??視線が痛い。)
気になったので俺から話しかけた。
「あのぅ、食べ方変ですか?」
そう言うと母が
「ちがうの。昨日までベッドから起きることさえできなかったのに、朝食を一緒に出来る事がうれしいのよ。」
そんなふうに言われたら少し照れる。
喜んでくれているのでいいことだ。
和気藹々と朝食を食べながらくだらない話をしている。
食後の紅茶を飲み終わると、
父がそろそろ出掛けるから準備をするようにと言ってきた。
どこに行くのだろう。
何故か心配になってきた。