~山賊大頭~
ネロは猪頭族に、ゼレナーは巨躯族に危なげなく勝利した。
ブライは、こちらの勝ちだから縄につくようにラゴールに言ったのだが、聞きはしなかった。
「何言ってんだ?お前ら3人倒せば俺の勝ちだろうが。」
「…戦闘狂が……。まぁ、お前ならそう言うだろうな。早く立て引導を渡してやる。」
「話が早くて助かる。んじゃ殺りますか。」
ラゴールは持っていた酒瓶を捨て、その場に立ち自分の得物を後方より取り出した。それはラゴールの背丈程の大きな武器だった。
「久しぶりに相棒のお披露目だな。」
その武器は刀と呼ぶにはあまりにも大きくあまりにも不恰好だった。
「こいつは刀じゃないぞ。大鉈だ。」
大鉈とは切ることもできれば叩き潰すことも出来る万能な武器だが、扱うには並大抵の筋力では持つことすらも出来ない。刃渡りは1間 (180cm)、刃厚は3寸 (9cm)、武器の全長は7尺3寸 (219cm)もある。騎馬戦などで使われており馬ごと真っ二つにできる代物だが今では使い手もいない為あまり知られていない武器だった。
「骨董品だな。そんなものをまだ使う者がいたとはな。」
「はっはっは。使える者がいなくなっただけだ。そんなことはいい。さぁ始めようぜ。」
「あぁ。さっさと来い。」
「いっくぜー。」
ラゴールは大鉈の峰を肩に乗せ右手で柄を持ち、ブライに突っ込んでくる。武器を振り回す事はしない。大柄の武器は振り下ろした後、隙が出来るのをラゴールは知っていた。
肩に乗せ右手に持ち、蹴りや左拳で相手の隙を作り、ここぞというときに大鉈を振るうのだ。
ブライもまた、その事は知っていた。人馬騎士たるもの大鉈の威力や特性は、若い頃から聞かされていたからだ。大鉈は騎馬戦では馬ごと切られる事など知っていて当然といえば当然である。だからこそ、その対応も戦い方も知っている。
「ちょこまか逃げてばかり。てめぇ、まともに戦いやがれ!」
「貴様は何もわかってはいない。」
「なにぃ?!」
「大鉈は一撃を狙って闘うものでは無い。」
「言葉で俺を惑わすのは無理ってもんだ!!」
「心配するな。体で教えてやる。」
ブライはラゴールから距離を取った。双剣を鞘に戻し腕を交差させ剣の柄を握った。まるで両腕から繰り出す抜刀術のような構えだ。
「良く見ておけ技の力を。右の剣には風を左の剣には雷を。」
ブライは腰を下げ、ラゴールを一点に見つめ技を出す時を待つ。
「剣技か。フン、打って来いやぁー!!」
頭の中で反撃の流れを組み立てた。剣技を避け、すかさず大鉈での一撃を決める。ラゴール反撃のプランは固めた。
「武技『疾風迅雷』!!」
体に風と雷を纏い疾風のようにそして迅雷のように、直線上の敵を打つ高速剣技。切られた者は疾風で飛ばされ雷に打たれた衝撃をくらう。
「がはっ。」
ラゴールは武技の衝撃よって高く舞い上がった。二本角の右角は折られ、そのまま地面に叩きつけられた。ラゴールが考えた反撃プランなど何も役には立たなかった。剣技とは、技を磨きに磨き昇華させるもの。一度も見ずに対応することなど不可能なのだ。ラゴールは叩きつけられた場所から動けないままだった。
動けずに地面に仰向けで倒れたラゴールの元へブライは歩み寄った。
「これで、俺達の勝ちだ。」
「なぁ、教えてくれ俺の大鉈の使い方は間違っていたのか?」
「間違ってはいない。ただ足りなかった。」
「何が足りない。」
「防御だ。」
「なにぃ?防御だと?」
「お前は、手足の攻撃を繰り出し隙を伺っていたが、大鉈の刃腹を使った防御が出来ていればもっと複雑な攻撃も出来ていたし剣技を防がれていたかも知れない。俺は勝ててなかったかもな。」
「ちっ。そこまで考える余裕ある奴が言ってんじゃねーよ。」
「なかなか楽しかったぞ。」
「てめぇも戦闘狂じゃねーか。」
「フフフ。かもな。」
相対する同士だったが、剣を交え二人は互いを認めあっていた。
「あーぁ。負けだ負けだ。約束通り、好きにしてくれ。」
「じゃあ、教えてくれ。首謀者は誰だ?」
「それは………。」
ラゴールはブライにすべてを話した。
首謀者や黒幕。
裏で何が行われようとしているのかを……。
ブライは言葉を失った。
シガー王国を揺るがす程の事柄でブライには衝撃過ぎた。
「まさかな……………。」
「そりゃ、驚くよな。俺も聞いたときは驚いた。」
「この話、俺の主の前で証言してくれるか?」
「あぁ、いいぜ。」
ブライは直ぐ様、ジルに連絡を取りラゴールから聞いた全ての内容を伝えた。
大鬼族
怪力が特徴で個体にもよるが人族より少し大きい。闘いを好み、死に対して些か短絡的。大酒飲みで女好き。
小人族
見た目は人族だが上背は低い。童顔な者達が多くよく人族の子供に間違われる。身長は高い者でも140cm程度だ。
手先が器用で身体能力は高い。素早さが武器だ。




