~オーガストの任務①~
オーガスト=ギュスターク。
彼は、兵長という兵をまとめる役職をになっている。
しかし先刻、思いもよらない失敗をしてしまったのである。だがそれは彼に責めを問うべき失敗でもない。国が戦争で敗北しその戦後処理にグレイと国内中走り回っていてその隙をつかれて貴族がした事だったからだ。その事を知る者たちは彼を責める事はしなかったが当の本人は罰を受けない事は自分を必要されていないのかと勘違いを勝手にしていた。
「あのような失敗をして、情けない…。」
勝手な想像は止まらない。
「役立たずだから、代わりなる副官を探せと言われたのだろうな…」
オーガストは、戦場では仲間のために前線で盾にも矛にもなる男なのだが、失敗をした自分に対しては誰よりも厳しいのだ。だからこそ失敗に対して罰を受け皆の規範となるようにもしている。だが今回の、お咎め無しには役に立たないからお咎めがないと思ってしまっている中々に面倒くさい者でもあった。
大きなため息をしながら歩いていると、何やら騒がしい場所にきた。そこではブライと若い兵士が訓練所で模擬戦をし、周りには人だかりできていた。
「さっき任務に連れていく兵士の選定に行くと言っていたな。俺も落ち込んでばかりでは汚名を返上もできん。ブライを見習わんとな。」
オーガストは訓練所を後にして、練兵所に向かうことにした。訓練所は兵士となった者たちが日々訓練を行う場所で、練兵所は兵士が兵士希望者たちつまり兵士見習いを訓練をする場所であり昇格試験に合格すれば晴れて兵士となれる施設だ。武功をたてれば兵士に登用されることもあるので必ず練兵所に入る必要もないのだが兵士になるにあたり兵士見習いでも、剣術などの基礎訓練はもちろん城内警備、街中巡回、国境警備も訓練に含まれている為、慣れるために見習いから始める者達も少なくはなかった。
オーガストも練兵所出身者であり練兵教官も務めた経験があったので、どのような者がいる事も承知していた。
「ふふふ。久しぶりだなここに来るのは……。」
オーガストは練兵所前で施設を見て教官時代を思い出していた。
「もしかして…オーガスト?」
懐かしんでいたオーガストに、誰かが声をかけてきた。
「んん?」
声を掛けられた方を振り向いてみるとそこには頭上から出た長い耳と純白の長い髪、赤い瞳に眼鏡が特徴の月兎族の女性が立っていた。
耳が長いだけで後は人と、なにも変わらない姿だった。
「シェリーなのか??」
「やっぱり、オーガスト。お久しぶり。」
「久しぶりだな。元気にしてたか?」
「元気は元気だけど全然顔を出してくれないんだもの嫌われたかとおもっちゃったじゃない。」
「すまん。立て込んでいたのでな。申し訳ない。」
「ウフフ、冗談よ。気にしないで。」
この、シェリーという女性はオーガストより若いが練兵所の同期であり、いまは訓練所と練兵所を取り仕切る立場にある兵士教養機関所長という肩書きがあった。
オーガストはシェリーにジルから与えられている任務を話し、協力を要請したいことを告げた。
「なるほど。若い兵士を一ヶ月育てながら魔獣の間引きと確保。面白そうじゃない。けど若い兵士見習いは男女併せて20人程しかいないのだけど…」
「20人?少ないな。」
「戦争の影響でね。なり手が少ないのよ。」
「そうか。その20人貸してもらえるか?」
「いいけど。あなたが20人面倒見るの?」
「いや、もう一人副官として誰か捜そうと思っているんだが。シェリー誰か心当たりはないか?」
「あるわよ。見習いの子達には女の子もいるから女性教官の方がいいわよね。」
「うむ。男に教えるのとは違うだろうから、女性の方がいいかもしれないな。」
「なら。間違いない人がいるわよ。」
「ほんとうか。紹介してくれないか?」
「紹介料は高くつくけど良い?」
「俺に出来ることなら。どこに行けば会えるんだ。」
「どこも行かなくていいわよ。」
「ん???」
「だって、その教官私だもの。」
「そ、それは、いかんだろう。所長が一ケ月も留守にしたら。」
「大丈夫よ。所長権限でなんとかなるわよ。」
「いや、しかしな……。」
これ以上、無下に断ると後が怖いことをオーガストは悟った。
オーガストはシェリーと昔なじみということもあるが、それよりもシェリーが、怒ると凄まじく恐ろしい事を知っていた。
昔、シェリーに酔っぱらった兵士が絡んできて死ぬほど殴られている姿を見せられ、それを止めに入ったことがありそれ以来シェリーを怒らせたらヤバいと肝に命じていたのだ。
「あら。私じゃ不満??」
「そ、そんなことはない。不満どころか有り難いくらいだが……」
「なら、良いじゃない。」
「………わかった。お願いしよう。だが役職がある者を勝手に連れていくわけにいくまい。ジル様に許可をいただきに、共に来てくれるか?」
「わかったわ。私も領主様に一度会ってみたかったからいいわよ。」
ジルに許可を貰いに二人はジルのいる執務室に向かうことにした。
オーガストは一縷の望みで、ジルが駄目だと言ってくれる事に賭けたのだ。
その時、大事なことを忘れていたのをオーガストが知る由もなかった…




