~陰謀~
「主が街に結界を張るとはな……。」
(なんでもありの主の滅茶苦茶度合いに慣れているはずだったが今回の事は次元が違う……。)
「あの方は、一日でご自分の任務を……。まぁいい、主は特別だからな。」
自分で自分を慰める日が来るとは夢にも思わなかったブライだったが、それよりも自分の任務を一番に考えようと思っていた。
まずは、20名の兵を集める為に行動した。
「兵舎を見に行ってみるか。」
門前から街の中央にある兵舎へと移動することにした。
兵舎とは、城に常駐する兵たちが交代するための場所であり、食堂や仮眠室もある。兵は基本3交代で見張りを変わる。常駐する者は独身者で構成されており、独身寮みたいになっている。
ブライも以前はここで寝起きをしていたので、どこに何があるか手に取るようにわかる。
兵舎食堂に来たが誰もいない。
「おかしい。いまならちょうど交代時間のはずなのだが?」
訓練所の方にも顔を出してみたのだが、誰もいない。
「どういうことだ?」
あまりにも不思議だった。戦争で多くの兵士たちが倒れたが余りにも少なすぎる。城内へ行き城の警備に当たっている兵を呼び止め話を聞くことにした。
「すまない。聞きたいことがあるのだが…」
「なんでしょう。」
「なぜ、こんなに兵士が少ないのだ?交代できないほど戦死者が出てたのか?」
「その事ですか……ブライ様、ちょっとこちらへ…」
兵士は人目につかない場所へブライを誘導した。
「聞かれては不味い事なのか?」
「ええ。実は…交代の兵たちは皆、貴族の方々の命令で動いているみたいなのです。」
「どういうことだ?」
「わかりません。」
「妙だな…。」
「兵士たちは貴族の命令となれば逆らえず。それに……屋敷に行った者たちが言うには何やら怪しい者たちもいると……。」
「うむ、わかった。その事は俺がなんとかするからもう少しだけ頑張ってくれ。」
「わかりました。私から皆にそう伝えます。」
「よろしく頼む。」
フライは急ぎジルのもとへ向かう。グレイと共に職人街へ行くのを聞いていたからだ。
ブライは遠くにジルとグレイの姿が見えた。
「ジル様!」
「ブライ?どうしたんだ息を切らして。」
「実はお耳に入れたいことができまして……。」
ブライは事の顛末をジルとグレイに話した。
「貴族は一体何を……。」
「やれやれ。貴族十中八九何か企んでいるな。」
「ブライ、全ての貴族なのだろうか?」
「いや、12ある貴族の内、マウワー家とシンドルフ家それにウィンストン家は関与していないらしい」
「マウワー家とシンドルフ家とウィンストン家の評判は?」
「シンドルフ家、ウィンストン家は代々民を大事に思う者たちです。私が代表のときも助けてくれましたから。マウワー家は、商売で忙しいみたいですね。」
「わかった。至急速やかに全ての貴族を城の執務室に集めろ。俺が直に話をする。結界の事は伏せててくれ。そうだな領主から顔合わせの場を開くとでも言っておいてくれ。」
グレイとブライは速やかに行動した。
ジルも城の執務室に向かい彼らが来るのを待つことにした。
一時間後
執務室の中に貴族の当主が集められた。
軽く挨拶と自己紹介をしてから、和やかな歓談のフリをして見せた。
そろそろかと思い話を切り出してみる。
「あなたたちに少し聞きたいことがあるんだが。何故あなた方の屋敷に兵達がいるのかな?」
和やかだった、その場が凍りついた。その11の貴族の内の3人は普通お茶を飲んでいるが残りの9名の貴族は、ひきつった顔をしている者や、何とかとぼけようとする者などがいる。
「あなた方は私用での兵を利用することは、国で定められ禁止されているのを知らないのかな?」
「ジル様、少しよろしいですか。」
お茶を、飲んでいたマウワー家当主ラインバルト=マウワー公爵だ。
「どうぞ。」
「この者たちが、わざわざこんな分かりやすい真似をするのは不自然な気がするのですが。」
「マウワー公、何が言いたいのです?」
「仕組まれている気がします。」
「なぜ、そう思う……。」
「この者たちを追い落とす事ができれば利を得る輩がいるのではと。」
「なるほどな。」
「わたしも、よろしいですか?」
シンドルフ家当主ルドルフ=シンドルフ侯爵だ。
「この者たちを利用という事ですが、いまこの国の状態を見れば追い出したところで利があるようには思えません。地位を乗っとるにしてもいま事を起こす必要はないと考えます。」
「と言うと。」
「王国に援助のある状態より持ち直してからそれを期に行動を起こせば利があるでしょう。」
「それはそうですが、兵を私物化したのは看過できない。」
「ごもっともです。処分は免れないでしょう。」
「では、あなたたちの処分が決まるまで屋敷にて謹慎してもらう。いいな。」
顔面蒼白になり、その9家当主たちは執務室から兵に連行され屋敷に戻った。屋敷前に兵を常駐させる。計らずとも兵を派遣した形になった。
俺はその場にいる残りの3家当主と話をする。
「あなたたちはどう思う?」
ウィンストン家当主ロイ=ウィンストン伯爵がいう。
「なんとも言えませんね。兵の私物化は大事になる、王国に反旗を翻したと思われる可能性がありますから沈静化を図る方が良いのでは。」
「だが、それが奴等の狙いだとすると?」
「奴等とは?」
マウワー公が口に出した
「隣国、インザス王国。」
シンドルフ侯とウィンストン伯が驚愕しながら叫ぶ。
「バカな。不可侵条約があるじゃないですか。」
「そんなこと許されるはずがない。」
俺もマウワー公と同じ考えだった。
「考えてもみろ。何故ミーアとシガーが争ったんだ。得する奴等は誰だ。」
「まさか……。」
「確定ではないですけどね。今すぐ攻めては来ないでしょう。」
「何故です??」
「行動を起こすなら、私が来る前にもうやっていますよ。それとさっきは言ってませんが彼等の屋敷の中に怪しげな者たちもいるみたいですよ。多分インザスの者たちじゃないですかね。」
「ジル様、今は確固たる証拠を集めるしか無いですね。」
「マウワー公、あなたの情報網に期待します。」
「何故私にそんなものがあると?」
「商売は情報が命でしょ。それに怪しい話に乗らず信用を得る事に注視してたのでは?」
「フフ。あなたは、すごい人ですね。お見通しですか。」
「そんなことないですよ。それと、あなた方にこれを渡しておきます。」
思念伝達ナイフを渡し使い方を説明した。
「これ、すごいですね。」
「試作品だからなくさないでね。では、マウワー公にはインザスの情報収集をシンドルフ侯、ウィンストン伯には、9名の身辺調査をおねがいします。」
「わかりました。ではそのように。」
「よろしく頼みます。」
話が終わり、3名の当主は帰っていった。
さてと、問題山積みだな。とりあえず今はこの事には静観することにした。




