~首都到着~
夕暮れ近く、ミーア国の首都グランベルの近くまで辿り着く事ができた。ここからでも遠目でグランベルの城や街を見える。街の後方にはアース火山が煙をあげて俺たちを迎えてくれている様に思えた。
人拐いに遭った者たちの顔からも安堵の表情で、助けた時はまだ強ばっていた表情から考えられないほど笑みが浮かんでいた。
子供たちは、キャッキャッとはしゃいでいて、俺にもなついてくれたのが嬉しかった。
予定より少しばかり遅くなったが、野盗を野放しにするよりはいいだろう。
街の門前に着くと、そこには10人程の兵士とそれをまとめる牛の角がある巨漢の兵長と、1人だけ服装の違う者が立っていた。見た感じ位の高い者の様だ
。
「ジル=ヴァンクリフ様であらせられますか?」
「はい。ヴァンクリフ家長兄ジル=ヴァンクリフです。到着が遅くなり申し訳ない。」
「お待ちしておりました。私は元ミーア国、国王グラントが子。グレイ=ミーアと申します。今はわたくしがこの国の代表代行をしております。お見知りおきを。」
軽く挨拶を交わした時、グレイは後ろにいる人たちに気づいた。中に顔見知りがいた為、驚いた顔をし、そして段々と目にうっすらと涙を貯めていた。
「お前たち無事だったのか!?」
俺の横でいきなり泣きそうな顔をしてグレイは叫んだ。
それと同時に荷馬車から子供たちがグレイ目掛けて飛び出して来たのだった。
「グレイさまぁーーーーーーー。」
子供たちは、グレイに勢い良く飛び込んだ。
「おおー。良かった。本当に良かった。」
子供達を抱き締め周りの事など関係なく抱き締めていた。
「この、お兄ちゃんが助けてくれたんだよ。」
捕らわれた人たちと子供たちが嬉しそうに事の顛末をグレイに話していた。兵士の中の家族もいるらしく皆が嬉しそうにしていた。
「ジル様、有り難うございます。皆を代表してお礼を陳べさせてください。」
「気にしなくていいですよ。道中でしたので。」
「いや、しかし…」
ブライが口を挟んできた。
「主は、いつもこうなので気にするな。」
グレイはブライを見て
「ブライ??ブライなのか??生きていたのか!!!」
「久方ぶりだなグレイ。」
「もう、戦で死んだかと思っていたぞ。」
「戦で倒れ奴隷商に売られた俺を、主に助けていただいたんだ。」
グレイとブライは階級は違えど昔からの友だったらしく、
また生きて会えたことが何よりも嬉しかったみたいだ。
人拐いに遭った民が生きて帰ってきた。
戦死したと思っていた友も帰ってきた。
グレイは心底喜んだ。脇目も振らず泣くほどに。
(こいつはいいやつだな。民の為に泣ける奴はいい奴に決まってる。)
俺も、グレイが喜んでいる姿を見てなんだか嬉しくなった。
「ささ、こんなところで立ち話もなんですし。城にご案内致しましょう。」
一人の巨漢の兵長らしき者が皆をまとめてそう言った。グレイも後に続き
「そうだな。ジル様どうぞ城へ。」
グレイの後ろにいた兵士たちに、拐われていた人たちを家に送り届けるよう兵が指示を出していた。
大人たちは頭を下げ子供たちが俺に手を降ってくれたので振りかえした。だが2人だけはその場に留まったままだった。
猫妖精族と森の民族だ。二人は徐に、俺の前でいきなり跪いた。
「助けていただきありがとうございます。ヴァンクリフ家ご長男のジル様とは知らなかったとはいえ申し訳ありません。」
二人が頭を下げて土下座してきた。
「待って。何やってんの?」
(いきなり、土下座はやめてくれ。悪者みたいじゃねーか。)
「しかし、失礼の数々。申し訳なさすぎて。僕の腹を切って詫びとして受け取っていただき…………」
俺は言葉を遮るように
「アホかぁーーー。助けた命無駄にすんなー。」
「しかし……。」
「あぁーもぅー。勝手に死ぬことは許さん!!死ぬまで生きろ!!わかったな!!」
訳が分からない事を自分でも言ってるなと気づいていたが死なれるよりはいい。
(切腹って、女がすんなーー!!)
息を切らして猫妖精族を叱った。
それを見ていたもう一人のエルフは冷静にーー
「私は、お助けいただいた命をあなた様に使っていただきたい。どうかお側にお仕えしたく存じます。」
「そっか仲間はもういないんだもんな。」
「はい。仇をとっていただいたのに恩を返さずにおめおめ生きていくくらいならば、いっそこの命など……」
また俺は言葉を遮った
「ストーーーップ!!今度は、お前が腹を切るとか言うんじゃないだろうな。」
「腹など切りません。首をこの短刀で……」
「アホかーー!!そんなもん、いっしょだろうがーー!!」
(こいつらは、命を軽く思ってるのか?)
俺は、この二人に、10分間、説教地獄をお見舞いした。
ケットシーとエルフは、その場で正座をして聞いている。
それを見ていた、ブライとグレイと兵長はおもしろがっていた。ブライなんか腹を抱えて笑ってやがる。
笑ってる3人を俺はジト目で見たら、3人とも俺に背を向けやがった。
(こいつら、他人事だと思いやがって…)
「それでどうしたいんだ?」
「あなた様にお仕えしたいです。」
「僕も。」
「はぁ~。わかったよ。ただし勝手に死ぬことは許さんからな。」
「はいっ!!」
二人が声を揃えて嬉しそうに返事をした。
やれやれだ。
今日の一日の中で一番疲れたかもしれないな。
(野盗退治の方が楽じゃねーか。)
そのやり取りが終わるのを図ったかのように、グレイが気を使ってくれた。
「それではジル様お疲れのようなので、ご案内しますね。」
「ええ、お願いします。」
そういって城に向かって歩きだすのだった。




