~出立~
良く晴れた朝だ。まだ朝だというのに太陽が眩しい。
昨夜のうちにその日の出来事は、家の者には伝えておいた。ダリルに会って奴隷商会に連れて行ってくれた事、奴隷商の女主人のメリルやケンタウルスのブライをことなどを。
屋敷の前には荷馬車があるが馬は外してある。荷物はそんなに多くはないので、俺が一人乗れるくらいの小さな馬車だ。
何故小さい馬車なのかは、昨日の夜ひと悶着があったからだ。
母と執事やメイドが思い思いに荷物を増やしたおかげで、大型馬車3台分くらいの大荷物になったので後から自分でいるものと要らないものを分別する地獄のような作業が始まったのだった。
そのおかげで軽い荷物だけで済んだのだから良しとしよう。そうしないとブライが死んでしまいそうだからな。
荷物を載せ終わるとメリルとブライが並んで屋敷にやってきた。
「ジル様、おはようございます。少し遅かったですか?」
「おはようございます。そんなことないですよ。今準備し始めたところですから。」
「これをお渡ししますわ。」
腕輪を手渡された。従属の首輪だ。
「それでは契約を譲渡致します。この腕輪をあなたがブライにはめた時点で契約終了ですわ。」
「分かった。はめるだけなんだな。」
「そうですわ。」
「外す時はどうすればいいんだ?」
「取り付けた者が解除と言ったら、それで契約破棄になります。」
「なるほどね。じゃあ付けてみようか。」
ブライの前に行き、腕にはめてみた。腕輪は少しだけ光出してすぐに消えた。
「これで完了しましたわ。」
ブライは、なにかやるせない顔をしている。
すかさず、俺はブライの首輪に触れる。
「解除。」
首輪は少し光りブライの首から外れ落ちた。落ちた首輪を拾い上げ俺の魔法小鞄に入れる。
ブライは驚いた表情で、俺に勢いよく話し出した。
「主!一体何を?」
「解除したんだけど。」
「いやまあ。そうなんですが。そうじゃなっくって!」
「あのなぁ。昨日俺が何言ったか覚えてる??」
「悪いようにはしないと…」
「だろ?悪いようにしたか?」
「されてはいませんが、イヤしかしですね……。」
「大体、俺は奴隷なんかいらないんだよ。仲間が欲しいんだ。なにそれともお前、奴隷のほうが良かったの?」
「それは……。」
「だろ。ならいいじゃん。ミーア国にはお前を知ってる者たちもいるだろうし。会った時、気まずいじゃん。」
「それはそうなのですが……」
ブライは、まだあっけにとられている。
それを見ているメリルがクスクス笑っている。
気づいたら周りには父や母、弟と執事たちも見ていた。全員で笑っていた。
父がブライを見て。
「ブライだったな。あきらめろ。そいつは俺と一緒で言い出したら聞かんぞ。」
母も。
「なかなか強情なのよ。奴隷なんてやめて仲間になっちゃいなさい。」
ブライはまだビックリしたままの表情だった。
「りっ 陸の王では??」
(ビックリしてるのそっちかよ!!言ってないのかよ!)
俺は、メリルの方をジーっと見た。
メリルはケタケタ笑っている。
(確信犯かよ……。)
「なんだ、お前名乗っていないのか。」
「ええ。素性は隠していたんもんで。」
少しため息をつき、ブライに向かって俺は名を告げた。
「改めて自己紹介するよ。ジル=ヴァンクリフだ。よろしくな。」
「主が、陸の王の息子!? もう、なにがなにやら…」
「そのことは、道すがらゆっくり話すよ。」
「よろしくお願いします…」
「それじゃあ、ブライの荷物をチャッチャと載せて出発しようぜ。」
「分かりましたよ。後できっちり教えてくださいね。」
「もちろん。時間はたっぷりあるから、ゆっくり話すよ。ブライもミーア国のこと教えてくれよ。」
「主には、奴隷から解放していただいた恩がありますから、俺がわかることならなんでもお教えしますよ。」
「よろしく頼む。頼りにしてるぞ。」
「任せてください。ですがお願いがあります。」
「なんだ?」
「仲間と言って下さり嬉しいんですが、俺はあなたにお仕えしたい。ですので部下がいいです。」
「分かった。でも部下でも、仲間だからな。俺が間違っていたりしたら遠慮なく言ってくれ。」
「はい。心得ました。」
俺とブライの会話を聞いていた父が誇らしそうに
「森の賢人と言われているケンタウルスにここまで言わせるとわな。」
それを聞いていたブライが
「陸の王よ、我々ケンタウルスは自身が認めたものにしか忠誠を誓いません。主はこれまで俺が見た全ての者の中で一番です。」
「そうか。まだまだ未熟者だが、ブライよお前が支えてやってくれ。」
「はい。御心ままに。」
(俺よりか、父に従ってるように見えるじゃねーか。)
荷車をブライに取り付け、ブライの横で歩きながら行こうとする。
「では、皆いってきます。」
そう言ってみんなに別れを告げブライと共に新天地 ミーア国へ向かった。




