3・そしてウサギを騎士とする
これは……!
と、わたくし、ニンジンを受け取って衝撃を受けました。
とってもズッシリとした、中身が詰まったニンジンさんです。
でも、ピョンスロット様はこのニンジンさんを使って、カボチャの兵隊をやっつけたり、ログハウスを作ったりしていましたけれど。
きっと、とても便利なニンジンさんなのでしょう。
これを剣に見立ててわたくしに手渡したということは、つまり、騎士叙勲を行って欲しいということなのでしょう。
ピョンスロット様は、わたくしを守ろうと考えて下さっているのです!
「それでは……不肖、ショコラーデ・ボンボン、騎士叙勲とやらをやらせていただきます!」
わたくしはニンジンを構えると、コホンと咳払いしました。
焼き魚の良い匂いが漂ってきます。
「えーと、汝ピョンスロットはー。えー、うーん、最初からピョンスロット様は騎士様だけど、ええと、わたくしの騎士として努めて下さい……!」
「はっ」
ウサギさんが片膝を突いて目を閉じます。
片膝突いてても、立ってるときとあんまり背丈が変わらないんですねえ。
彼の小さな肩に、もふっとニンジンが当たります。もう片方の肩にも、もふっ。
なんということでしょう、もっふもふです。
わたくしはニンジンさんをくるりと回すと、ヘタをピョンスロット様へ手渡しました。
以前、お父様がなさっていた叙勲の見よう見まねです。
これでいいのかしら……。
「これで、私はあなたのきしです、ひめ」
ニンジンをいつものように背中へ収め、ピョンスロット様は立ち上がりました。
そこで、ちょうどお魚も焼けたみたいです。
わたくしは、サラダと一緒にお魚を食べます。
「まあ! 温かいお料理なんて初めてです! あつっ、あつっ……美味しい……!」
王族であるわたくしは、いつもお毒味が済んだ後の冷めたご飯を食べていました。
こうして、誰も間に入らずにすぐご飯を食べるなんて初めてです。
サラダにも、ピョンスロット様特製のオリーブオイルドレッシングを掛けて食べます。
とってもヘルシーです。
「肉とやさいだけというわけにも行きません。たびにでたら、ひめのためのパンを手に入れましょう」
「ああ、そうでした! パンはその辺りに生えているという訳でも、川で泳いでいる訳でもありませんものね」
「あさにめしあがったパンは、ひめの馬車につまれていたものです。あれでさいごですから、しばらくは魚とやさいの生活ですよ。やさいも、こうして……」
ピョンスロット様は、幾つかの樽を見せて下さいました。
その中では、お野菜が塩で漬けられています。
「つけものを作るのです。こうすれば、やさいのえいようはのこったままながもちする。これと、くんせいした魚で次の町までの旅をやりすごすのです」
「旅の準備が着々と進んでいるのですね! わたくし、不謹慎なのですけれど、ワクワクします!」
お食事を終えて、料理の後片付けをします。
火種が残らないように土を掛けて消し、薪は残ったものを積み上げておきます。
食べ終わったお魚の頭や骨は、地面に埋めておくんですって。
わたくしにとっては、何もかも新鮮です。
「わたくし、自分でご飯の準備をしたことも、片付けをしたこともありませんでした。何もしなければお料理はできませんし、何もしなかったら片付かないのですね」
「ほんらいであれば、ひめが心をさくひつようがない、さまつなことです。ブルーブラッドを持つものは、より大切なしごとがあります。ですが、今はひめも私も、ともに旅をするあいだがらです。自分のことは自分でせねばなりません」
すまし顔でピョンスロット様は言いました。
「もちろんです! ピョンスロット様、どうぞショコラに、色々なことを教えてくださいませ」
「かしこまりました、わがきみ」
そうしてウサギの騎士様は、短い手足で見事な礼をしてみせたのです。




