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3・森を抜けて畑を越えて

姫サイド

「素敵、ピョンスロット様!!」


 わたくしは思わず駆け寄ると、カボチャ兵士の頭をかりかり食べているピョンスロット様を抱き上げました。


「うわーっ、私はまだしょくじ中……」


 ああ、なんという肌触りなのでしょう!

 白くふわふわな毛は、もふもふとしていてまるで綿毛を腕いっぱいに抱きしめているよう!

 ウサギさんは毛皮の下は細いと思っていたのですけれど、案外もちもちしていて抱き心地がいいです。


「うーむ、なんというもふもふの技……! むむむー」


 ピョンスロット様がわたくしに抱っこされて、まったりとし始めました。


「ホッホーウ?」


 わたくしの肩に、ピョンスロット様を運んできたフクロウさんも留まります。

 今はもう、午前中くらいの時間ですから、ちょっとフクロウさんは眠そう。


「ピョンスロット様。助けていただいた恩返しと言っては何ですが、このままお運びしましょうか?」


「なんと!? 一国の王女ともあろうかたに、そんなことをさせるわけには……むむむー、しかし、なんというもふもふの技……」


 むふふ、もこもこ、ふわふわとした生き物が大好きなわたくしです。お城でも、猫や犬をなでなでしてうっとりさせるのは、大の得意でした。

 ピョンスロット様はすっかり、わたくしのもふもふの虜なのです!

 このままずっともふもふしていたい……。


 ……………………はっ!


「そ、それどころではありませんでした! ではお運びしますね。ご案内下さいませ」


 我に返ったわたくし。

 こうして、わたくしはピョンスロット様の指示をいただきながら、森の中を歩いていったのです。




「ここです、ひめ」


「まあ!」


 ピョンスロット様が案内して下さったのは、とても素敵なところでした。

 鬱蒼(うっそう)と茂る森の間に、そこだけ大きく切り開かれて、畑が広がっていたのです。


「ここはもしや、ピョンスロット様がお作りになった畑なのですか?」


「ははは、ウサギたるもの、やさいは自分で作らねばですからな」


 わたくしの腕の中で、ピョンスロット様が楽しそうに笑いました。

 あんまり楽しそうなので、わたくしも楽しくなって来ます。

 楽しいついでに、ピョンスロット様をこちょこちょしました。彼はまた「むむむー」と唸りながら、わたくしのもふもふにウットリとします。


 ………………はっ!


 気がつくと結構な時間が経っていました。

 これはいけません。

 わたくしのもふもふ癖は危険です。しばらく封印しなければ。


 畑の近くには、大きな木がありました。

 木には、ちょうどピョンスロット様が出入り出来るような(うろ)がございます。

 なるほど、あそこで暮らしていらっしゃるのですね。

 でも、わたくしが入るには、きっとお尻が引っかかってしまいそうです。


「ひめが入るには、おしりが……おっほん、しつれいしました」


 ピョンスロット様も同じことを考えていらっしゃったようで、咳払いをしました。

 その後、わたくしの腕からピョンと飛び降りると、背負っていたニンジンを抜きながら言います。


「少々まっていて下さい。私がひめのため、へやをたてましょう」


 彼は森に向かって、トテトテと走ります。

 二本足で走るウサギさんなんて初めて見ました。

 そして、ピョーンとジャンプすると、ニンジンを持ったままクルクルと回転します。

 まるで、オレンジ色の竜巻が生まれたようでした。


「まあ! あっという間に、丸太の山が!」


 ピョンスロット様は、ニンジンで木を切っていらっしゃるようです。

 どうやっているんでしょう!

 さすがピョンスロット様です!


「ピョンスロット様! わたくしもお手伝い致しますわ!」


 不肖ショコラーデ・ボンボン。

 ウサギさんが頑張っているのに、一国の姫たるわたくしがぼんやりと眺めているなんて出来ません。

 腕まくりしながら、ピョンスロット様が切って下さった丸太に組み付きました。

 あっ。

 これは重いです!

 ショコラには無理です!


「ああー、重すぎます!」


「ひめはそこでまっていて下さればよろしい」


 ウサギさんはわたくしに向かって、優しく言いました。

 表情はよく分からないのですけれど、きっと素敵な微笑みを浮かべてくださっているに違いありません。

 なんだか、わたくしの胸がきゅんきゅんします。


「丸太は、こうしてどこをたたけば動くか知っていれば……こう!」


 ピョンスロット様が、ニンジンで丸太の一部を叩きます。

 すると、まあ不思議!

 一つの丸太が起き上がり、これに弾かれて別の丸太が動きます。

 それが次々と連鎖して、筒のような形になってしまいました。


 今度はピョンスロット様、お口にロープのような物を咥えながら丸太の周りを駆け回ります。

 あっという間に、丸太はロープで繋がれてしまいました。


「これを……こう!」


 スコーン、と、とても良い音がしました。

 筒のように見えていた丸太が、ドシーンと横たわります。

 そうしたら、まあ、なんてことでしょう!

 可愛らしいログハウスがそこには出来ていたのです!


「そまつな家ですが、ひめのかりの宿としてごていきょうしましょう」


 ペコリと一礼するピョンスロット様。

 素敵です!

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