始まり
「ん…ん…。」
カーテンから入ってくる光で目が覚めた。
ふと床を見ると蝋人形の残骸やら花瓶の破片やら色々散らばったままグチャッとなって放置されている。
「あー…やらかした。」
片付けこれ相当大変だな…。
昨日の夜に単身赴任中の父から珍しく電話がかかってきてその内容にブチ切れて最終的に物にまで八つ当たりしてしまったのだ。
うちは俗に言う片親で母さんは俺がまだ小さい頃に蒸発して今何処にいるのかすら推測が付いていない。
父は俺が中学に入った時に海外へ仕事に行ったきりもう一度だって帰ってきていない。
そんな父から入った電話。
あんなやつだから自分の子供や家を態々心配する訳がない。
どうせ何処かで…
「あー、やめやめ。」
ネガティブ思考に入るのを頬を両手でパチンと叩き、止めにした
布団から抜け出して着替え、机の上に置いてあったチョコを一欠片口の中に放り込み、頭が甘さでシャキッとしたとこで掃除に取り掛かる。
まずは花瓶の破片から怪我しないように大きい物は新聞に包み、小さい物は踏み付けてしまわないように掃除機で吸い、袋の中に放り込んで結んで部屋の出口に置いた。
そうして次は自作の蝋人形の破片やら四肢やら頭やらを纏めて先程とは違うポリ袋に入れ、お札を貼って先程と同様、部屋の出口に置く。
本来ならこういう蝋人形は神社やお寺に出してお祓いしてもらったほうがいいのだけれど、もう面倒くさい。
穢れ祓いの神社で貰ったお札だから清めてくれるだろ、と楽観視して札の束をポケットの中に押し込み雑巾を持つ。
「序でだから此の儘、家の中全部綺麗にしてしまおうか。」
和風造りのこの家は一般的に言うとかなり広い。
広いからこそ、魑魅魍魎共が隠れやすいし、ホコリやゴミも隠れやすい。
…まぁ魑魅魍魎は別にいいんだけどね。優しいやつ多いし。
ピンポーン
「えっ、ちょっ……。は、はーい」
チャイムが鳴り、困惑して雑巾を置いて玄関へ向かう。
こんな朝っぱらから家に来るなよ……