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竜神の加護を持つ少年  作者: 石の森は近所です
ピクシードラゴン編
8/93

8.後処理

修正済みです

 クロが盗賊の討伐を完了したというので、

誘拐されてきた娘3人と、やってまいりました洞窟へ――。


「あれ、盗賊の死体は?」

「そんな情操教育に悪いものを、洞窟に残して置く訳なかろうが!」


 何、この教育パパさん――。

確かにグロ態勢が無い俺には、死体は酷だな……。

親の亡骸は、本当に酷かった。


 あぁ、考えたら気持ちがどんどん暗くなってきた。

肩の上に止まっていたクロから、翼でバシバシ叩かれた。

元気付けてくれているらしい。


 それで、盗賊じゃないっぽい魔術師はどこにいるの?

――と聞こうと思ったら何かを踏んづけた。


「ぎゃぁー、助けて下さい、殺さないで、食べないでぇ」


 あ、暗くて分から無かったけどここにいたわ。

俺が――踏ん付けてしまったみたいだ……。

食べないでとか言っているけど、クロ食べたの?

ちょっと怖くて聞けないんだが――。


「外で処分するので、口の中に入れて運んだからな!」


なるほど、食われたと勘違いしてもおかしくないね!


「別にあなたを殺す気も、害する気もありませんよ。貴女は他の人達みたいな盗賊じゃないんでしょ?」

「盗賊って……ジャズさん達はオワルスター伯爵の私設警護隊って聞いていましたよ?」


 どうやら誘拐3人娘達の言っていた通り、盗賊では無いらしい。

聞き取り調査でもしとこうか。


 「こんな山奥に、何の用があって立ち入ったんです?」

「それは、伯爵様が私設警護隊を使ってピクシードラゴンを捕獲するのに『急望!魔法が使える魔法師募集!』って冒険者ギルドに募集が出ていて依頼を受けて伯爵様からジャズさん達を紹介されて――」


 「それでは、そのジャズさんって人達が盗賊で、商隊や村を襲ってこの女の子を生贄として用意したのも知らなかったと?」

「ひぇぇーそんな。そんなの、知っていたら引き受けませんよ!犯罪者じゃないですか!」


 心眼の能力とか持っている訳じゃないから真実かは分からないけど……。

嘘を付いている様にも見えないな。

――どうしよ?

見ておれんとばかりに、今まで黙って聞いていたクロが喋り出した。


 「コータよ、人間は嘘をつくと体温がわずかばかり上昇する。我達竜はそういったものに敏感じゃ!――そのものの体温は、恐れで下がってはおるが、発言によって上昇する事は無かった。故にその娘の言っておる事は本当だぞ」


すげーな!


 これが野生の勘ってやつか?感じるって事は勘じゃないのか――。

うろ覚えだけど蛇とかが、温度に反応するとか前に見たテレビで言っていた様な気がするな……。


 蛇と一緒にされたのが勘に触ったのか――。

羽でバシバシしばかれた。

――酷い。


 「じゃあ、潔白も証明されたって事で、君の名前は?――俺はコータ、それでこの竜はクロ。こっちの3人は知っているんだよね?」

「私は、オワレスの、街の冒険者で魔法師のイアンといいます。名前までは……なんせ奴隷で生贄と聞いていたので」


 情が移らないように聞かなかったって事か――。

この世界の人々ってドライなのかな?



 「結果としては、竜の縄張りに足を踏み入れた盗賊が、竜に襲われて全滅した訳だけど、イアンさんも冒険者としての依頼で来たなら――任務失敗って事になるよね?」

「勿論です。ペナルティーは痛いですが、盗賊の一味として討伐されなかっただけでも幸運でした」

 「一人だけ生き残って帰っても問題は無いの?」

「魔法師は貴重な戦力ですから、竜に襲われた時にジャズさん達に匿われたと言えば……「無理じゃな!」」


イアンの言葉を遮ったクロから、辛辣な言葉が投げかけられる。


 「そもそも、30人の集団が襲われて、ただ一人だけ奇跡的に――それも無傷で助かる事など在りわせん!自分の縄張りに入った者に竜はそこまで寛大じゃ無いからじゃ。よしんば怪我を負って戻っても悪巧みのボスのその伯爵がそなたの嘘を見抜けないと?」


 伯爵が何らかの手を使い――。

イアンさんの嘘を暴くだろうとクロは言った。


 「じゃ私はどうすれば……」

「そなたは冒険者と言ったな?」


 イアンは視線を足元に固定させ――。

思考に陥りながらも。

クロに『はい!』と返事を返す。


「冒険者ギルドと言うのは、そなたの国だけの組織か?それとも大手の商会の様に各国をまたにかけた組織か?」


 なるほど、独立した組織なら国に戻らなければ死亡扱いで処理されて……。

後で忘れ去られた頃に戻れば、問題は無いと言う事かな?


 「はい、ギルドはそもそも魔物のスタンピードや――他国との戦争時に臨時で雇用出来る傭兵の代替で考えられた組織ですから。国を跨げば登録もまた別の扱いになり新規で登録になります。それが何か?」


イアンはクロが何を言いたいのか、分かって居ないらしい。


 「イアンは、このまま国に、オワレスの街に戻れば伯爵に消される。そうならない為には国外に逃げるしか無いと言っておる」

「何故、私が?」

 「伯爵の私設警護隊、もとい盗賊団と行動を共にし――。ただ、一人だけ生き残り嘘の証言をした。となれば、自分の秘密を知ったが為に、何も語らないと考えても不思議ではなかろう。伯爵が盗賊とグルだとばれてもその地位は安泰なほどの大物なのか?」


 それはいくらなんでも無いだろう――。

独裁国家の王ならいざ知らず……。

領地を任されているだけの、雇われが……。

犯罪者とグルだとか国の信用に関わる。


 ようやく自分の状況を理解したのか……。

イアンの瞳からポタポタ涙が溢れ出る。

それでも嗚咽をもらしながら、たどたどしい言葉で話し出した。


 「ぐすっ……ようやく魔法師になって、これからいっぱい稼いで片親でここまで育ててくれたお母さんに恩返しできると思っていたのに――。こんな依頼受けるんじゃなかった。貴族様の私設警護隊をサポートするだけで金貨5枚もの大金がもらえるおいしい仕事のはずだったのに……」


 金貨5枚が大金なのか?

小説とかでは、金貨1枚で10万円位だったけど……。

50万円と考えたら2、3日の仕事で――高いな!


 こっちの世界の事は何も知らないからな――。

教えてくれる知識人がいると助かるな。

ついでに、魔法も教えてもらえると尚ラッキーだけど!


 「イアンよ――ここからは提案なのじゃが……我はコータと二人で山奥より出てきて、世情をまったくといっていいほど知らん。旅をしながら世界を見聞して歩こうと思っておった所じゃ――。それでじゃ、わしらと共に旅をせんか?我の力を持ってそなたの安全は保障しよう!母君には旅先からこっそりと手紙と仕送りでもすれば良かろう?一生戻らない訳では無いのだ。ほとぼりが冷めるまでじゃ」


 クロが伯爵の城に乗り込んで――。

ブレスを吐けばすべて丸く収まる気もするんだけどね!

それだとクロが災害認定されて、勇者達から付け狙われるか……。

あ、クロに呆れとも取れる視線を投げかけられた。


しばらく思考の海に篭っていたイアンが決意した様に――。


「分りました!竜さんとコータさんと共に旅に出ます!」


 吹っ切れた表情でそう言って、宜しくお願いします。と握手を交わす。

この世界にも握手とかあったんだ……。


「で、そっちの3人はどうするのだ?」


 あ、アルテッザは商会のある街まで戻りたいって言っていたな。

獣人の二人は住んでいた村はもう無いみたいだけど……。

俺の思考を読んだクロが、まずアルテッザに言う。


 「そなたが、街に戻るのを止めはせん。イアンとは立場が違うからの。生贄は盗賊達による人選だったのじゃろうから――。そなたが伯爵に狙われる事は無いだろう」


 アルテッザは少し考えていたが――。

決心したように俯かせていた顔を持ち上げ言った。


 「私は商会の娘です、父の安否も気になりますし、街には留守を、留まって守ってくれている母もおります。ですから帰ります!」

「ふむ、よかろう。では旅のついでにトーマズだったか――。その街まで送るとしよう」

「有難う御座います!」


アルテッザが深々とお辞儀をする。


「それでじゃ、獣人の二人はどうする?」


 二人もアルテッザ同様、当初は顔を下げ思案していた様だが……。

最初に口にしたのは白い犬獣人のポチだった。


「わたしの村は――。村人も、村も、もう残って無いだに。行く当てが無いなら強い力に護られていたいだに!」


 先程、イアンに旅の安全はクロの力を持って保障する。

――そう言っちゃったもんね。

それにしても獣人だからか、やっぱり脳筋……。

獣人の女の子達に失礼な事を考えていると、狼獣人のホロウも口を開いた。


「私も竜様とコータさんと一緒に行きます、理由はクロ様が強いからです!」


――――ぶっ。

思わず拭いてしまって、4人の娘達から白い目で見られた――。


クロは……なんか上から目線で見下していた。


 だって強い力に護られたいならまだしも――。

強いからだよ?どれだけ脳筋なんだよ!と思うでしょ――。


一応、フォローしておくか……。


「あーごめん、ごめん、馬鹿にした訳じゃないんだ……ぷぷっ――」


喋っているうちに、思い出し笑いをしちゃって壺にはまった。


 腹抱えて涙目になっていると――。

いきなりクロの尻尾で殴り付けられた。


ブン――。



お読み下さり有難う御座います。

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