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第四:初めての冒険へ

今回からいよいよ戦闘がスタートします。各の力量を見極めるための緒戦はどのような戦いになるのでしょうか。

批判コメントを絶賛募集中です。「ここがなっていない」というご指摘をお持ちしています。批判があるからこそ書き手は修正していくことができるからです。

 月が天頂に差しかかっているが、鬱蒼たる森の中を歩いているため見通しはあまり利かない。先頭を歩くトルーズと殿を務めるグラーフの持っている松明の明かりが周囲をわずかに照らしていた。トルーズのすぐ後ろを進むナジャフが方位磁石を巧みに用いながら地図に示された場所へ導いてくれる。

 深い森を進んでいると開けた場所に出た。少し盛り上がったところには三〇ほどの墓が立てられているようだ。その背後にある崖の膚には大きな洞穴が空いている。

「ここがシグリズがいるという洞穴だな」

 先頭のトルーズが額の汗を拭って振り返った。金属鎧と背負った装備の重さが堪える。こんなときこそナジャフの持つ『収納の指輪』の出番なのだが、今回は相手が不死の亡霊シグリズである。『指輪』には討伐したのちその周囲を清める聖水が大量に収められており野営等の装備はトルーズとグラーフが分担して背負っていたのだ。

「そのようですね。ここからは不浄な気配を感じます」

 列の三番目を歩いていたエイシャが答える。彼女は戦いに赴く際、つねに厚手の全身鎧を身にまとっている。その胸部には女神セスティナを崇める教団の聖なる紋章が刻まれており、その上に金色に輝く『神の聖印』が揺れている。

「シグリズに限らず不死の魔物は夜活発に動く。最上級のリッチともなれば昼夜を問わずに現れますがね。ですので朝まで待ってから洞窟を探索し、首領のシグリズが潜むと思しき場所で夜まで待機すべきでしょう」

 紫のローブを着た賢者ナジャフは提案した。

 それにトルーズが待ったをかける。

「いや、今すぐ突入すべきだろう」

「なせだ?」

 黒いローブにミスリル銀製の『マナの首飾り』を着けたカセリアが聞き返した。

「まず、こちらの戦力がどれほどの強さなのか確認できていない。もし敵がこちらよりも強ければ帰途を封じられて全滅させられるだろう」

「たしかにその危険はあるな。だが私の魔法があればシグリズなど恐るるに足りない」

 トルーズは自慢げに語ったカセリアと向かい合わせる。

「次に、俺たちの任務は敵を殲滅することにあるのであって、首領のみを倒して雑魚が残ってしまったのでは本質的な解決にならないからだ」

「なるほどな」

 その説明に皆が納得した。的確な状況判断は伊達に『勇者隊』一番隊隊長に任じられたわけではないことを示している。皆は急いで背負っていたリュックなどの装備をその場に下ろした。前衛を務めるトルーズとレフォア、そしてグラーフの三名が突撃態勢をとる。

「敵がアンデッドなら、あの墓は格好の見張り台です。敵が潜んでいるとみて間違いありません」

 ナジャフの進言に耳を傾ける五人。

「グラーフ殿の大剣には魔法がかかっていないから、まずエイシャ殿は『聖なる武器』の祈りをかけてくだされ。それが完了したらトルーズ隊長とレフォア殿、グラーフ殿は一気に突撃するのです。エイシャ殿は『ターン・アンデッド』の奇跡を準備しておきます。ただし発動は前衛三名の形勢を見て判断していただきたい。今回は各の力量を確認することが優先です」

「承知いたしました」

 さっそくエイシャが奇跡を祈りはじめた。

 グラーフの大剣が白いきらめきに包まれていく。『神の聖印』による助力は凄まじく、大剣のきらめきは太陽の輝きに匹敵するほどであった。

「カセリア殿はここで支援魔法を準備しておいてください」

 カセリアは不服そうだったが、トルーズとナジャフの言うように互いの力量がわからないことにはこの先に待ち受けるであろう魔物討伐にも差し障りが出かねない。今回は支援に徹することに腹を決めた。

「よし。レフォア、グラーフ、いくぞ!」

 声をかけたトルーズはすかさず墓地を目指して走り出した。そして二人を置いていくほどの走力を見せながら墓地へと突進していく。走力には自信があった。騎士団でも随一の脚力を誇っている。そのため乱戦に突入して下馬すると単騎突撃が目立ってしまう面もあったのだ。集団戦には向いていないが『勇者隊』のような少数部隊であればその能力を遺憾なく発揮できる。

 トルーズが墓地に近づくと、地面が突然割れ、骸骨の大群が姿を現した。

「スケルトンだ! 頭をかち割らないと倒せないぞ!」

 すかさず目の前の一体に狙いをつけたトルーズは勢いよく『封魔の剣』を振り下ろした。

 楯で頭部を防御するスケルトンはグシャッと生卵が割れるような感触を残して楯や頭のみならず脊椎もろとも粉砕されてしまった。魔剣の威力は想像以上にすさまじい。今までの愛剣では楯に阻まれていたことだろう。

 『風鳴り』の甲高く風を切る音とともにレフォアも襲い来る敵を次々と両断してまわった。グラーフは一振りで三体を同時に切り伏せる。いずれも頼もしい働きを示してくれた。

 奇跡と魔術を唱えるべく待機していたエイシャとカセリアが状況の推移を見守っているほんのわずかな間に、前衛三人が三〇体の骸骨をすべて粉砕していた。




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