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金銀百鬼夜行  作者: 釜田 葎
プロローグ
1/2

金丸舎人

 金丸舎人は美男子である。

 誰もが認める美少年である。

 絶世の、とまではいかないが、少なくとも彼の通う欅附__私立欅野高等学校付属中学校の中で最も美しい男子生徒である。

 否、県内一だろうか。

 関東一だろうか。

 勿論、彼に惚れる女は数知れず。

 長い睫毛に縁取られた、少しつり上がったアーモンド型の茶色っぽい瞳。高いのに、不自然にならない形の良い鼻筋。ワックスで整えられた柔らかそうな茶髪。きゅっと引き結ばれた薄桃色の、まるで桜の花びらのような唇。

 どれをとっても非の打ち所がない。例えるならば、芸術家に作られた美術作品だ。

 さらに言えば、テレビに出ている芸能人などがかすんでしまうほどの美しさを持っていることもまた確かである。

 そして、自他共に認める美少年であることも否めない。

 ただ、それを鼻にかけているわけではない。

 むしろ疎んでいる。

 彼は学校のアイドルと言うべき存在であるから、当然女子生徒の大半が憧れを抱いている。噂によれば、ファンクラブもあるそうだ。

 だが、彼はそれを嫌っている。

 せっかく整っている顔なのに、その口は常に真一文字に結ばれ、眉根は寄せられている。

 普通なら「怒っている」と勘違いされてもおかしくない表情だが、金丸の場合「物憂げな表情」となり、それを見た女生徒の感想が「憂鬱そうな表情もまたクール」となるわけだ。

 美連鎖。ビューティフルスパイラル。

 傍から見れば羨ましきことこの上なしだが、彼は違うのだ。他者から羨ましがられ見上げられるほど顔つきはさらに険しくなり、今にも舌打ちを始めそうな凶悪な顔つきに変わりつつある。

「お前、そのうち女に刺されるぞ」

 彼の唯一の友だちは口癖のようにそう言う。それはやっかみ半分、心配半分なのだろう。

 無表情、無口、無愛想な学校一の美少年。

 三年A組在籍、金丸舎人の肩書きはこんなものであった。

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