魂の居場所
サラシャと人に戻ったクラストは、息絶えたバーニッシの下で祈りを捧げる。
近くにはギルドマスター、グランドを始め、軍の上級兵士が集まっていた。巨人族の死体の処理について話し合うために来たのだが、誰もが言葉を発せず、祈る二人を見つめる。
サラシャは立ち上がると振り向き、立ち並ぶ兵士に頭を下げた。
「彼を弔ってあげたいのですが、よろしいでしょうか……」
魂の弔いは澄ませた。だが醜き姿のまま、人に手を加えられるのは何とも心苦しい。
彼女のその言葉に反対の言葉を上げる者はいない。
殺し殺されの関係だったにしろ、死すれば皆等しく尊ぶのがこの世界の流儀だ。
実際は人間にのみ当てはまるものだったが、もはや彼らには、魔族を魔物と同類に見ることは出来なくなっていた。
また、敵対していた人間に供養されるよりも、同じ魔族にされた方が彼としても嬉しいだろうと考えた。
サラシャは感謝の意を伝えると、再びバーニッシに向き直り、歌を紡ぐ。
「赤き火の精霊よ。彼に安らかな眠りを……」
その詩は、死した者の身体と魂を、精霊の下へ送る鎮魂歌。
火の精霊が承諾したのか、巨大な体は赤く燃え上がり、瞬く間にその姿を消した。
後に残るのは人型に焼け焦げた地面のみ。
よく見ればその現象は、他のゴブリンやオーガにも起きていて、ところどころに焼け跡を作り出していた。
それを最後まで見届けて漸く、皆は王国の中へと戻っていく。
巨人族率いる魔王軍との戦いはこうして幕を下ろした。
真っ白な視界。
暖かなぬるま湯の中を漂うような心地よい感覚。
私はどこかへ向かっているのだろうか?一方に向けひたすら真っすぐ動いている。
「おう。お前さんも来たのか」
懐かしき声が聞こえた。
朧げに見える色や形には見覚えがある。赤の友だ。
「タイロン様にも困ったものだな」
冗談交じりに話すその顔は、嬉しそうに綻んでいるように見える。
「彼らはこれから更に辛い思いを味わうだろうが……まぁ、心配はあるまい」
私の頭の中には緑色の少年が思い出された。
小さき人間の中でも特に小さき少年を。
あの戦場で、一番勇敢だった戦士を。
「まぁ、虹色のと黒色のが来るまで、気長に待つとしようか。待っててやらないと、次来た奴が寂しがっちまうからな」
豪快に笑う赤の友は、自身の眼の前に座るように促してくる。
同意した私は、赤き友の前に座ると、昔話に花を咲かせた。
虹色の友と会えるのはいつになるかわからないが、再び会えたなら、また改めて礼を言わねば。
私と赤の友の話が尽きることはなく、共にいつまでも笑いあっていた。




