ゴーレムとの闘い1
寝る準備をしていたネイノートは、この場所に接近する何者かの気配を捉えた。
ウィンとサラシャ、クラストも気付いているようで、警戒をしている。
それぞれ情報を確認共有した結果、相手は敵意を持つ可能性が高く、数は二体。
その力はブラッドウルフを超える程の脅威だという。
一同は武器を取り、脅威を感じる方角に身構えた。
暫くすると、めきめきと木を押し倒す音が聞こえ、木々の間からはその巨体が垣間見える。
「あれは……金属の身体?……!魔法人形です!恐らくタイロンが……!」
サラシャが敵の正体を暴き叫ぶ。
ネイノートの約二倍、3(3メートル)の高さ程ある巨体は、その光沢から金属のように見えた。
透明になった腹部には、それぞれ青く光る球体と、緑に光る球体が確認出来る。
「クラスト!そっちの一体は任せるわ!」
「心得た!」
クラストは高速で緑のゴーレムに飛びかかった。
緑のゴーレムは蹈鞴を踏み、そのまま草木に隠れ見えなくなってしまう。
ネイノート達は、クリスタルウルフを抜く残りの戦士で、青に輝くゴーレムを倒さなければならない。
風の翼は隊列を組む。
剣士であるカノンカと、進化したウィンが前衛に立ち、剣、弓、銃を持つロンダニアが、中衛で足りない箇所を補う。
そしてサラシャとネイノートが、後衛から矢と魔法で援護をする形になった。
ソーセインはサラシャの更に後方で戦いを見守る。
ウィンの実力を確かめる、といった目的を掲げてからの、強敵との連戦に実は皆少し呆れていた。
だが気を引き締めなければならない。
このゴーレムは、ブラッドウルフを超える強敵なのだから。
出方を窺っているとゴーレムは行動を開始した。
巨大な腕を振り回し接近してくる。
その力はオークを軽く超え、当たれば死は免れない。
しかしその動きは緩慢で、黒衣の剣士との戦いで過敏になっているせいもあって、余計遅く感じる。
ゴーレムの腕は単純な軌道しか描かない。
カノンカはその軌道を見切り、腕を掻い潜ると魔力を宿した魔法剣を振った。
ギャリィィン!
けたたましい金属音と硬い感触にカノンカは顔を顰める。
続いて四本の矢がゴーレムを襲う。
ガン!ガガガン!
胴体に二本、肩と足に一本ずつ的中するも、その音から分かる様に、魔法人形の体は相当な強度を持っているようだ。
彼等の攻撃はどれもこれもダメージを与えるに至らない。
またカノンカの魔法剣でも切れないことから、魔法に対する耐性も有していると思われる。
ウィンとサラシャは魔法の詠唱を終え、魔法を発動させる。
「みんなを守って!英雄の盾!」
サラシャの魔法は、先の戦いでタイロンの剣戟を防いだもので、ネイノートが持つ『火竜の弓』に付与されている、『対物理魔法障壁』よりも上位の防御魔法だ。
ゴーレムの一撃を防ぐ程の強度はあるだろう。
これで皆ある程度の余裕が出来た。
ウィンはカノンカに気を取られるゴーレムに対して、空気を圧縮し弾として打ち出す。
ウィンドバードの時に比べ、遥かに強力になったそれは、しかし体勢を崩す程度にしかならない。
ゴーレムの体は、強度と共に重量も相当あるらしい。
だが細かな思考は出来ていないようで、目に見える者を追ったり、攻撃してきた者に反撃をする、といったような、単純な戦術しか出来ていなかった。
サラシャは鈍く光る魔法人形の異常な強度を見て、防御魔法の合間に大きな声で叫ぶ。
「あの硬さは魔鉱石魔法人形!?魔鉱石で出来たゴーレムに、物理攻撃は殆ど効きません!ウィンさん!魔法で攻撃を!」
その言葉を聞いたウィンは、少し長い魔法の詠唱を始めた。
魔物の言葉で紡がれるその詩は、強力な風の刃を作り出す。
人の使う魔法でいうところの、第三節詠唱魔法『風刃』。
刃こぼれを知らぬ風の刃は、鉄の剣すら切り落とす威力を持っている。
ウィンの唸り声が響き、風の刃がゴーレムを切り裂いた。
ゴーレムの体には、肩からわき腹にかけて、大きな傷が出来た。
ゴーレムは人形であり痛みに声を上げることは無い。
だがその動きは鈍く、ダメージが入っているのは誰の眼から見ても明らかだ。
カノンカは更に魔法剣で傷口を狙う。
同時にネイノート、ロンダニアもぞれぞれ傷口に向かって矢を放つ。
物理攻撃でのダメージは微々たるものだが、確実にゴーレムの傷口は広がっていった。
あと一歩で勝てる。
そう思った時だ。
ゴーレムの体に変化が起きたのは……




