表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臆病者の弓使い  作者: 菅原
62/119

黒衣の剣士

 結構な時が経ち、幾つかの籠が薬草で一杯になる。

「初日からこんなに取れるなんて思ってませんでした。さすがネイ君です!」

ソーセインは気分良く、足取りも軽く籠を抱え歩く。

嬉しそうに歩く彼を見ているだけで、皆笑顔になった。


 ネイノートの家につくと、籠を小屋の中に入れ、外で火を起こしそこへ皆集まった。

やがて日も暮れ始め、森が赤く染まっていく。

そのうち辺りは夜の闇に沈むだろう。

それからが冒険者の本格的な仕事の始まりだ。

 一先ず腹ごしらえの為、ネイノートとロンダニアは弓を持ち、夕食の狩りを始めた。

成果はまずまずで、ネイノートが兎を一匹と狸を一匹。

ロンダニアが兎を一匹と……あとは狩りの途中で見つけた果物が数個。

これだけあれば足りるだろう、とネイノート達は急いで帰路につく。

 ネイノートが友人に振る舞った最初の食事は、彼得意の丸焼きだったが、これまでの商人同様、やはりソーセインにもすこぶる好評であった。


 夕食も過み、談笑と共に食休みをしている時、それ(・・)はやってきた。

殺気……全てを切り裂く刃物のような鋭い殺気だ。

全く隠す気が無いようで、ウィンとネイノートは同時に気付いた。

他の皆は変わらず楽しそうに談笑している。

 ウィンは直ぐ様(ちゅう)に舞い上がり、ネイノートは弓を手に持ち立ち上がる。

そのただならぬ様子に周囲にも緊張が走った。

「ネイノート君?何かあったのかい?」

ロンダニアも慌てて弓を持ち、ネイノートの視線の先……森の奥に向かって身構える。

 暫くして、カノンカとロンダニアもその存在に気付いた。

ブラッドウルフと同様、いや、それを超える程の威圧感。

例えるならば、山に積もる雪が目の前を滑り落ちてくるような感じだろうか。

 すぐに森を出て王国へ帰る選択肢もあったが、相手は明らかに真っすぐこちらを目指している。

追ってくるのは想像に難くない。

また夜にかかっているため、他の魔物とも出くわす可能性があった。

 ソーセインに小屋の中へ隠れるように促し、風の翼はそれが来るのを唯じっと待ち続ける。


 たき火の炎が弾ける音だけが辺りに響く中、それは現れた。

黒色の、貴族風の身なりをした男だ。

髪は金色で長く、後ろで一つに束ねてあり、顔立ちはまるで人形のように美しく、相当な色男だ。

その男は、鎧のようなものは一切着ていないが、一振りの剣を携えていた。

服と同じく真っ黒な剣だ。

その他に武器らしいものはなく、腰を見ても銃のような物は持っていない。

 その姿が人間の形をしていたため、ネイノートは最初、冒険者だろうか、と思った。

だが身のこなし、武装、そしてあふれ出る殺気が、その可能性を否定している。

黒衣の剣士は警戒するネイノート達と、たき火を隔てた位置に来ると、剣を抜き放った。


 眼前にいる男に、話が通じることを願ってネイノートは口を開く。

「何者だ!」

黒衣の剣士は返事に困ったのか、空いている手を顎に当て、一人でぶつぶつと呟き始める。

しかし、呟いていたのは少しの間で、視線は直ぐにネイノートへと向けられた。

「誰でもいいだろう?とりあえず顔を見(あいさつ)に来ただけだ」

彼は何が面白いのか、笑いながらそう述べる。

低い声だが、威圧といった口調ではない。地声が低いのだろう。


 風の翼一行は、とりあえず話が通じることに安堵する。

だが黒衣の剣士は剣を抜き放ったままだ。

まだ武器をしまうことも、警戒を解くことも出来ない。

彼は、右手に持つ剣を数回、その場で振りながら言葉を重ねる。

「我慢できなくなっちまってなぁ。少しは楽しませて貰えるといいんだが……」

言い終わるか終わらないかの瞬間、彼の体がぶれた。

 瞬き一つするだけで見失ってしまう程の速度で、彼はネイノートの真横まで移動する。

自らの言葉をさえぎって起こした唐突の行動に、カノンカもロンダニアも反応出来ない。

ウィンはかろうじて威嚇の声を上げ、ネイノートは視界から消えた敵に立ち向かうべく、弓を握る手に力を込めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ