祝福の力
翌日。
ネイノート達『風の翼』は、ソーセインの依頼を受け東の森に来ていた。
道中の会話で皆すっかり打ち解けたようで、年も近いことから、ネイノートに初めて同世代の友達といえる存在が出来た。
ネイノートは内心、そんな友達がウィンに対して、どんな行動をとるのか気が気でなかったのだが、ソーセインが緑色の羽根を撫でては楽しそうに顔を綻ばせる姿が見え、取り合えず胸を撫で下ろす。
一行は既に、森にあるネイノートの家に到着していて、野営の準備も終え、後は薬草を集めるだけの状態となっている。
いよいよ作業を、と準備をしながら、ソーセインが説明を始めた。
「取れ高にもよりますが、ここで二日くらいを予定しています。宜しくお願いしますね」
彼は折り畳み式の籠を取り出し、地面に積み重ねていく。
数にして十個。
それを慣れた手つきで持ち上げ、目的地へと向かい歩き出した。
その余りにも自然な行動に、ネイノートは声をかけそびれてしまう。
「ちょっと、ソーセイン君!俺も持つよ」
慌てて声を上げたのはロンダニアだ。
次いでカノンカ、ネイノートも籠を持つと提案した。
「ありがとうございます。いやぁ、護衛の冒険者様が荷物を持ってくれたのは、前回に引き続き二回目です」
声をかけて貰えたのがとても嬉しかったのか、満面の笑みでそんなことを言う。
その言葉に風の翼一行は目を丸くした。
幾ら何でも、こんな小さな子供が荷物を持っているのに、声をかけない者がいるのだろうか。
その理由はわからないが、ロンダニアだけ納得したように頷いた。
「確かに、ソーセイン君の『祝福』を知っていたら、そうなっちゃうかもしれないけどね」
ネイノートとカノンカの説明を求める目に、ロンダニアは更に続ける。
「あぁ、カノンカちゃんは知ってると思ってたけど……ソーセイン君の祝福はね、『軽量化』なんだ。なんでも、物の重さを十分の一くらいまで減らすことが出来るらしいよ?」
補足としてソーセインが続けた。
「でも僕の体に触れていないと駄目なんです。だから他の人が持つと元の重さに戻っちゃうんですよ」
そこからソーセインの、祝福についての説明会が始まった。
今ネイノートは籠を二個、カノンカも二個、ロンダニアは三個持っている。
つまりソーセインも三個持っているのだが、彼らの中で、運んでいる籠の総重量が一番軽いのは、ソーセインとなる。
同じように計算すると、ソーセインの持つ十個の籠を、冒険者が一つ代わりに持つだけで、ソーセインの持っている九個の籠のほうが軽くなるのだ。
こうなれば自分の事しか考えない、レシュノアやカルテアのような冒険者は、断固として持とうとはしないだろう。
祝福の説明を受けていると、目的の場所に到着する。
「今回はこの辺で取ろうと思います。欲しい薬草は……っと、あった。この草なんですけど、見分けられる人いますか?」
それはネイノートがよく傷薬として取っていた野草だ。
彼にとって他の草と見分けるのも容易い。
そう伝えるとソーセインは、嬉しそうに頷いてこう述べる。
「じゃあ、ウィンちゃんがいるから必要か分かりませんが、ネイ君と僕で薬草を採って、ロンダニアさんとカノンカさんでそれぞれ護衛するって感じにしたいんですけど……」
本来であれば、護衛依頼を受けた冒険者であるネイノートが、商人の目的である薬草摘みを手伝う必要はない。
だがネイノートは森の狩人。
王国で暮らすソーセインよりも森の事は詳しいだろう。
それに初めて出来た友達の頼みごとを、無碍に断るほど彼は浅い人間ではなかった。
ネイノートは二つ返事で了承し、話し合いの結果、ネイノートにはカノンカが、ソーセインにはロンダニアが護衛として付き添うことになった。
各自、日が沈む限界まで薬草摘みに精を出す。




