暗躍する者
黒を基調とした絢爛豪華な廊下を、仮面をつけた男が歩く。
足取りは軽快で、迷うことなく一つの部屋の前に辿り着いた。
戸を二回叩き、返事を待たずに戸を開ける。
入口の真正面。
入口に向かって置かれた椅子には、金の髪をした男が仏頂面で座っていた。
仮面の男は最近よく見る光景に心底呆れる。
その集中力たるや凄まじく、入室の合図をしたにもかかわらず、自身が入って来たことに気付いていないようだ。
「また見てるのかい?それ」
金髪の男の下を訪れるたびに、彼は水晶に移る映像を食い入るように見つめていた。
映像には勿論、緑の髪の弓使いが映っている。
声がかかってやっとその存在に気付いた金髪の男は、一瞬だけ横目で仮面の男を確認すると、吐き出すように口を開いた。
「一戦ごとの力の伸びが恐ろしく高い。私の計画に支障をきたす可能性も十分ある。無視はできん」
水晶から顔を逸らさずに金髪の男は答える。
彼の顔には鬼気迫るものがあり、そこには驕りや見下しといった負の感情は見えない。
仮面の男は、持ってきた情報を彼に伝える。
「そんなに気になるのなら、実際に会ってみたらいいじゃないか」
その言葉を聞いて、漸く彼は水晶から顔を逸らした。
「どういう意味だ……」
彼の眼は軽く怒気を孕んでいるように見える。
仮面の男は、その威圧感に顔を顰めたが、仮面をつけている為相手に見えていないことに安堵する。
声に動揺が出ないように気を付けながら口を開いた。
「彼、今そこの森に来てるよ。あっち側だけどね」
立てた親指で背後を指し示した仮面の男を見て、金髪の男は音を立て椅子から立ち上がると、壁にかけてある剣を持ち、部屋から大慌てで飛び出していった。
部屋の中に残るのは仮面の男一人だけ。
誰もいない薄暗い部屋の中でヒヒと笑う。
「なんとも扱いやすい男だ。計画は順調。精々楽しく踊ってくれよ?」
無人の部屋に不気味な笑い声が響いた。




