ネイノート・フェルライトの夢
パーティーの申請も無事に済み、依頼を見ても良さそうものがなかった為、風の翼一行は『太陽と月の遊び場』に戻ってきていた。
目的はカノンカの新たな武器の製作だ。
あの魔法剣は本当に特別で、クロツチとノゼリエの合作だったのだ。
ノゼリエの経営する『太陽の遊び場』は、装飾品を主に取り扱っている。
銀で出来た首飾り、魔法石の耳飾り、紅玉の指輪、等々。
一見普通の装飾品に見えるそれらは、全て魔法が付与されている魔法付与道具だ。
彼女は『付与術師』である。
カノンカの魔法剣も、クロツチが叩いた物に彼女が付与した物であり、それを貶された上に壊された、と知ったノゼリエは憤慨した。
そして、前の物より強力な物を、と作り出したのだった。
彼女は打ち手のクロツチ、使い手のカノンカと共に工房に籠る。
ウィンの姿も見えないため、手持無沙汰になったネイノートは自室の寝台で横になっていた。
夢を見た。
何時もの夢。
優しい笑顔の父さんが僕の頭を撫でる。
僕は微笑む父さんにこれまでの活躍を自慢した。
「父さん、僕ね。空を飛んでる竜を弓で落としたんだよ!それにね、オークの眼も射抜いたんだ!それに……それに……」
夢の中で僕は、まるで子供のように父さんに甘える。
何時か覚めるその時まで、時間一杯使って。
でも、どんなに語り掛けても父さんは、唯笑って頭を撫でるだけ。
何も喋ってはくれない。
父さんが言った言葉は覚えていても、僕の記憶の中にある筈の父さんの声は、色褪せてしまって思い出せない。
でも大丈夫。
今もずっと父さんは僕に微笑みかけてくれるから。
例え夢の中だけだとしても、それだけで僕は頑張れるから……
彼は常に気丈に振る舞い、大人びた態度を取る。
それは弓の為、父の為に他ならない。
勇者との力比べの時、カノンカは彼のことを『怖いもの知らず』と言った。
果たしてそうだろうか?
C級冒険者でも苦戦する『ブラッドウルフ』が怖くない?
屈強な鍛冶師でも怖気づく『オーク』が?
B級冒険者もかなわない、国をも亡ぼすことが出来る『火竜』が?
魔王すら容易に打倒する『勇者』が?
ネイノートの年は十六。まだまだ子供だ。
怖くない訳が無いだろう。恐れない訳が無いだろう。
何時も震える体を押さえつけ、歯を噛み締めながら耐えていたのだ。
臆病な本当の姿を見せては、弓が馬鹿にされ、父が馬鹿にされる。
それを防ぐ一心で、彼は気丈に振る舞うのだ。
だからこそ彼は、夢の中だけで父に甘える。
もう二度と戻らないあの日を夢見る。
何時か……父の名誉を取り返すその日まで……




