ウィンの決意
ネイノートはギルドの屋根を見た。
勇者との勝負をする前に、ウィンは肩から飛び立ちあそこにとまった筈だ。
だがそこにウィンの姿は無く、ただ青い空が広がるだけ。
「……ウィン?」
少し辺りを見渡し探してみたが、見つからない。
夜には帰ってくるか、と軽く考えたネイノートは、カノンカとクロツチを追うのだった。
私は今、的を狙う勇者とネイの姿を見ている。
力は互角。
いや、勇者から微かに魔力の流れを感じるから、地力ではネイの方が上だろう。
彼の雄姿を見ている間、私の頭の中ではある思いが湧き上がった。
ネイは何時も私を守ってくれる。
幼い頃ご飯をくれたのは何時もネイだし、熱にうなされる私を励ましてくれたのもネイだ。
ネイのお父さんが死んじゃった時は、一緒に泣き崩れたっけ。
小さかった彼は一晩中泣きじゃくっていたのも覚えている。
私はその時誓ったんだ。
これからもネイとずっと一緒にいるって。
これ以上彼を悲しませないためにも……
でも王国に来てから、私はずっと彼の足を引っ張っているのが現実。
常日頃から私のせいで、注目を浴びて罵倒が重なる。
私がいなければもう少し動きやすかっただろうに、私が『ヒト』じゃないから、私が臆病だから、私が弱いから。
二人でいる時は気にならなかったのに最近では、どうして私は人間じゃないんだろう、と何時も思うようになった。
人間だったら……人間になれたら……
勿論そんなことを願ったって人にはなれない。
御伽噺の世界じゃないんだから。
(せめて自分の身を守れるようにならないと)
そうしないと、ネイにいつまでも迷惑をかけてしまう。
彼はそんなこと気にしないって言うだろうけど。
ネイには、勇敢な父の真似をして、自分の身を犠牲にしてでも他者を守ろうとする節がある。
彼自身が父に命を賭して守って貰ったからかもしれない。
それは正しい行動だと思うけど、例えば、火竜のような相手と戦う時、私を庇って攻撃をその身に受けるネイの姿が容易に想像できる。
(このままじゃ駄目!私は変わるんだ!強くなるんだ!)
そう決心した瞬間、突然睡魔が襲ってきた。
誰かの魔法攻撃かと思って周囲を警戒してみたけど、何も反応が無いところを見ると、どうやら危険性は無さそうだ。
我ながら緊張感の無いものだと呆れる。
抗うことが困難なほどの睡魔。
おまけに身体が熱くなってきた。
とりあえず私は、自分の身の安全を確保する為に、近くの木にとまる。
やがて私の意識は闇の中へ落ちていった……
人が去った訓練場で、彼女の体に起きた変化に気付く者はいない。




