虚言
カノンカとクロツチは地面にへたり込んでいた。
ネイノートは二人に歩み寄ると声をかける。
「おい、どうした?」
「あ……ネイ君。これ……」
カノンカの目の前には、彼女愛用の魔法剣が真っ二つに折れて転がっていた。
いや、断面を見るに折れたのではなく、切られたといったほうが正しいか。
「あいつら……道具に頼るなとか、根性無しの作る武器は脆いとか……好き勝手言っていきやがった」
何時もは陽気なクロツチも相当堪えたらしく、声にいつもの覇気がない。
ネイノートは小さくなっている二人の様子にため息をついた。
「しゃんとしろ。剣が折れたならまた作ればいいだろう?それに俺なんか、弓を使わないと何も出来ないぞ」
二人はネイノートの顔を仰ぎ見る。
少年の顔はいつも通り、つまらなそうな顔だ。
だが彼の眼は爛々と輝いている。
「アイツはズルをしていた」
ネイノートの言葉に二人は目を見開いた。
ネイノートは先の的当てで起きた、不審なことの説明を始める。
集中力の絶頂にあった彼の眼は捉えていたのだ。
彼の集中力を断ち切った、レシュノアの声に反応する勇者の銃身を。
僅かに右にずれたその弾は、本来ならば赤い円の中心に当たることは無い。
だが、弾が放たれる瞬間、ほんの少し銃が輝き結果は先の通り。
彼の放った弾は赤い円のど真ん中に命中したのだ。
信じ難いことだが、弾が放たれた後、その弾の進路が変わったとしか思えない。
口を止めたネイノートの代わりにカノンカが呟いた。
「銃が輝く……もしかして魔法?」
そこでクロツチも口を開いた。
「噂話でだが聞いたことがあるな。王国で新型の銃が研究されていると……」
その銃は従来の鉄の弾を『実弾』とし、魔法陣を銃身に刻むことで『魔法弾』を打つことが出来るらしい。
魔力を通すだけで、魔法陣で刻まれた魔法が、加護や才能も関係なく使うことが出来るようになるとのことだ。
勇者の銃は恐らく、その応用で自動追尾の魔法か何かが組み込まれた銃なのでは。
彼らの見解はそのように決まった。
「あいつは自分から魔法は禁止と言っていた。勿論奴が直接使ったものでは無いだろうが……」
「そいつはインチキだろうよ」
二人はネイノートの言葉に賛同した。
勇者は明確にこれが駄目でこれが良い、とは言っていなかったが、魔法を禁止としたのならば、魔法付与道具に付与された魔法の起動も禁止、と考えるのが普通だろう。
惜しむらくは、こちらの言い分を信じてくれる人が殆どいないことだろうか。
勇者の言葉は国王にも匹敵する発言力を有する。
その彼が知らぬ存ぜぬを通せば、容易にネイノートが嘘つきということになるだろう。
だからこそ少年もこの場でしか言わない。
「地力なら俺が勝っていた」
事実そうであったかもしれないが、大胆にも断言するネイノートの言葉に、カノンカは笑いを漏らした。
「ふふっ、ネイ君てば怖いもの知らずね」
カノンカとクロツチは笑いながら立ち上がる。
勇者の仲間はあれだけ堂々と、道具に頼るな、努力不足だ、などと吹いていたが、蓋を開けてみれば、当の勇者が未熟な部分を道具で隠していたのだ。
ならば彼らの言葉も然程気にならない。
賢者の話は正しい。
便利な道具を持っていても、その道具を使い熟す技術がなければ話にならないだろう。
だが、ネイノートの話は、二人を元気づけるのに十分な物だった。
「おし!今度はあいつらも驚くような、もっとすげぇ武器を作ってやるぜ!」
「私も馬鹿にされないように、もっと魔法の練習をするわ!」
気を取り直したカノンカとクロツチを先頭に、風の翼一行は揚々とギルドへ向けて歩きだした。




