表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臆病者の弓使い  作者: 菅原
46/119

忠告

 混乱の最中にあった俺に向かって、仮面の男は再び問いかける。

何時もは賑やかな時間だというのに、辺りのゴブリンは警戒して一言も発しない。

静寂の中仮面の男の声だけが響く。

「なぜ黙っている?転生者じゃなかったかのか?」

仮面の男は大げさに手を広げて質問を重ねる。周りのゴブリンには難しい話だったようで、首を傾げる者も多い。

「……だとしたらどうだというんだ?」

「おお!やはり転生者だったか!これだけのゴブリンを従えるゴブリンが、ただのゴブリンな筈が無いものな!」

なぞなぞにあたった子供のように無邪気に喜ぶ様は、その容姿と相まって酷く不気味に見える。

仮面の男はそのまま続ける。

「いや実はな、最近竜種を倒す冒険者が現れたのだよ。だから忠告に寄ったというわけだ」

(竜を倒しただって!?上位種のさらに上、最高位種に名を連ねる種族じゃあないか!)

余りの出来事にめまいを覚える。


 『最高位種』というのはそもそものレベルが違う。

ゴブリンは数百の中から一体程の割合で進化して、俺のようにホブゴブリンになる。ホブゴブリンが強敵を倒し、魔力を高めるとやがてオーガとなり、オーガはさらにロード、キングとなって、ようやく幾多の魔物を従える上位種となるのだ。

 だがオーガキングは竜には勝てない。その種族差は絶望的な程の差がある。五体もいれば倒せるかもしれないが、そもそもの数が少なく、また竜がブレスを放てば皆仲良くあの世行きだ。


 言葉を失う俺を尻目に、仮面の男は話し続ける。

此方の様子を気にせずに話すその様は、まるで会社の定時連絡のように見えた。

「そいつらの中には弓矢を使う人間がいる。今の時代人間は皆弓矢を嫌っているから、弓矢を使う奴がいたらそいつらだ。戦わずに逃げたほうがいいぞ」

仮面の男が何者かわからないため、完全には信用できないが、心に留めといて損はないだろう。

 言いたいことを言い終えたのか、仮面の男は喋るのをやめた。

俺はふと思った疑問を訪ねる。

「忠告は感謝するが……どうしてそれを俺に教えるんだ?」

同じ魔物であれば、他種族が減るのは願ってもないことだろう。

人間でも同じだ。魔物が減れば人間の安全性は増す。

であれば、こいつは何者なのか。

「なぁに簡単だ。君たちが生き残ることは私のメリットになるのだよ。後は……勇者が近くまで来ているようだ。気を付けなさい」

仮面の顎部分に手を添えて、思い出す素振りをする。

大きなジェスチャー、捕まえ所のない様子から、俺は前世でみた『ピエロ』を思い出す。

 勇者が近くに……この世界の魔王は勇者に一方的に殺されたと聞いたことがある。

そんなやばい奴が来ているのなら、暫くおとなしくしているのが賢明だろう。

しかし、奴の言うメリットとは……何があるのだろうか?


 俺は顎に手を当て考える素振りを取る。

「まぁまぁ、余り悩みなさんな。はげるよ」

さっきまで落ち着いた態度だったのに今度はこれだ。

その飄々《ひょうひょう》とした態度は、本気なのかふざけているのか判断に困る。

警戒する俺たちゴブリンを他所に、仮面の男は大げさに一礼をした。

「今回は忠告によっただけです。また逢うことがあるやもしれません。その時はどうぞよしなに」

そういうと、奴は俺たちの目の前で姿を消した。

気配はもうなくなっていて、皆が安全を確認すると、やがて町の喧騒が帰ってきた。


 俺はすぐ隊長格のホブゴブリンを呼び出し、警戒レベルを引き上げる。弓矢を使う人間を特に注意するように、釘を刺しておいた。


後日、弓矢による攻撃を受けたという隊が出ることを、このときの俺はまだ知らない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ