裏で動く者
薄暗い部屋の中、一人の男が豪華な椅子に座っている。
部屋はあまり広くなく、寝台が一つ備わっているだけだ。
年は若く見え、真っ黒な服装がよく似合う色男だ。
彼は机の上に置かれた水晶を見つめ、恨めしそうに机を叩いた。
「竜種もやられちまったんだって?」
それは椅子に座る男の声ではない。
部屋の端、壁にもたれかかっている者の声だ。
フードとローブで全身を隠している。また変わった仮面をつけていて、顔も見えない。声からかろうじて男と分かるくらいだ。
「貴様のせいだろうが!貴様が勇者やA級の厄介な連中が出払っているというから、貴重な竜種まで向かわせたのだぞ!?」
椅子に座る男は仮面の男を指さし声を荒げる。
彼に苛立ちを隠す気はさらさらない。
「確かに勇者やA級冒険者はいなかったんだけどね……良くてB級が数名いるくらいだったのに、いやぁ、あんな奴がいるなんて知らなかったぜ」
「これで三度目だぞ?ブラッドウルフ、オーク、極めつけはあの火竜だ。あの弓使いと魔法使いは要注意だな」
黒服の男は机の棚から新たな水晶を二つだし手をかざす。
すると水晶は怪しく光り、ある映像を映し出した。
それはブラッドウルフとオークが死んだときの戦闘の様子だ。
水晶に移る映像を見ながら、怒りに顔をゆ歪ませる。
その様子を見て仮面の男はとても楽しそうに言葉を放つ。
「まぁまぁ、少し落ち着きなよ。もうすぐしたら勇者も戻ってくるから、動きづらくなる。暫く自重しときなよ?」
「わかっている!私を誰だと思っているのだ!」
仮面の男は怒る男に、大げさに頭を下げながらヒヒと笑う。
「フン!いつも気味の悪い男だ……また何かあったら知らせろ」
椅子に座っていた男は機嫌悪そうに椅子から立ち上がると、部屋から出ていく。
薄暗い部屋の中には仮面の男の笑い声がいつまでも響いた。




