火竜との戦い2
飛び上がった火竜を見て、ネイノートは矢筒から矢を取り出す。
先が二股に分かれている特殊な矢だ。
「ちょっと……ネイノート君、何する気?」
その様子を見てカノンカが止めようとした。
だが彼は止まらない。
懐から袋を幾つか取り出し、その袋を矢の先端にかけ結ぶ。
「ねぇ、ちょっと!隠れていろってハワーズさんが……」
「あいつは確かに優秀だ。作戦も正しかっただろうが……あの馬鹿が全てを台無しにした」
カノンカも聞いていた銃声。そこから戦況が変わったのは彼女にも分かった。
飛ばせまいと撃っていた魔法が止み、その結果火竜は今、悠々と空を飛んでいる。
「カノンカはここに隠れていろ」
そう言ったネイノートは、カノンカの制止も聞かずに岩陰から飛び出した。
空に滞空する火竜の口からは、炎が溢れていた。今にも零れ落ちそうな程に。
ネイノートは三本の矢を引き絞る。一本は口を、二本は左右の翼を狙う。
チャンスは一度。火竜がブレスを吐こうと口を開けた時……
弓を最大に引き絞った時、火竜の口が大きく開かれた。
ネイノートは矢を放つ。放った矢は風切り音を残し、直線の軌道を描きながら、まさに炎を吐き出さんとする火竜の口の中に飛び込んだ。
その瞬間。
星が落ちてきたのでは、と勘違いするほどの轟音が鳴り響く。
振動で空気が震え、更に強い熱風が吹き荒れた。
岩陰に隠れていた冒険者は皆、手で耳を塞ぎ、事が過ぎるのを耐え待つ。
彼が放った矢に括り付けられた袋。
その中には目一杯の火薬が詰まっていたのだ。
ブレスの熱に反応したこの火薬が、火竜の口の中で大爆発を起こしたのである。
翼を狙った矢にそれぞれ括り付けてあった火薬は、火竜の口で起きた爆発に引火して、ネイノートより向かって右側の翼を爆破した。しかし残念ながら、左側の翼を狙った矢は少し逸れてしまい引火するに至らない。
それでもこの爆発で、火竜は多大なダメージを受けた。
バランスを崩した奴は翻筋斗を打って大地に叩きつけられる。
その振動で我を取り戻したハワーズは、一瞬で状況を把握し掛け声を上げた。
「今だ!全員突撃いいい!」
討伐隊は各々武器を取り、火竜に向かって走り出す。
火竜は見た。
炎を吐き出す直前……奴が矢を放ったのを。
緑色の髪の小さき人間。
これまでちらちらと岩陰から覗いていた奴こそが、この人間共の切り札だったのだ。
(早急に奴を殺さねば!)
次にあの攻撃を受ければ耐えられない。
地面に落ちた火竜は何とか起き上がると、倒れている少年目掛けて突進した。
討伐隊が駆ける中、火竜の眼が自身らを見ていないことにハワーズが気付く。
(なんだ!?一体どこを見ている?)
彼はそっと火竜の視線を追う。そこには先ほどの爆風で吹き飛ばされ、岩にぶつかり気を失ったであろうネイノートの姿があった。
迫る竜から主人を守ろうと、ウィンドバードが威嚇をしながら彼の前で飛んでいる。
(さっきのはやはり矢だったのか!早く助けないと……!)
ハワーズはすぐに身を翻し、倒れているネイノートへと向かう。
ダメージを受けた火竜の動きは緩慢だ。だが歩幅が違いすぎた。どう考えても間に合わない。
このまま火竜の頭がネイノートにぶつかる。そう思われた時、周囲を青い光が包み込んだ。




