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臆病者の弓使い  作者: 菅原
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火竜討伐隊

 その日もネイノートは、カノンカ、ウィンと共にギルドから依頼を受けていた。

風の翼だけで依頼を受けられるようにはなったが、彼らが弱いという噂が流れているせいか、その内容は専ら護衛依頼に偏る。“人の口に戸は立てられぬ”というように、商人の口伝くちづてに広まった噂は、数多の依頼主を連れてくる結果となっていた。

 何回目かもわからない護衛任務を終え、彼らが冒険者ギルドに顔を出したとき、それは起こった。

「ネイノート・フェルライトさん!今すぐこちらへ来ていただけますか!」

一階にあるホールを見渡せる二階の廊下から、ギルド職員が大声でネイノートを呼んだのだ。

その慌てぶり、異様な行動に、周囲の冒険者はにわかに騒ぎ出す。

 ネイノートとカノンカ、そして肩にとまるウィンは、職員の後を追いかけて二階にある一室に入った。

 

 部屋にはギルドマスター“グランド”を中心に、何人かの冒険者が集まっていた。

中にはあの“レシュノア・C・カエンスヴェル”もいる。

彼等は部屋に入ってくるネイノートを見ると驚く。驚かなかったのは二人。

グランドとその隣に立つ男だ

「おぉ、風の翼か……よく来た。よし役者は揃ったな。ではハワーズよ、説明を頼む」

ギルドマスターの言葉に、分かりました、と一礼してその男が一歩前に出る。

 短く切りそろえられた緑の髪。身長も高く美男といえるだろう。武装は剣と銃、鎧も着込んでいる。よわい三十といったところか。

彼“ハワーズ・オーガン”はB級冒険者である。

 C級冒険者を一人前とするならば、B級冒険者は一流とされる。その実力は勇者の折り紙付きだ。


 ハワーズは集まった冒険者を見回し、説明を始めた。

「では……皆忙しい中集まってくれて感謝する。僕の名は“ハワーズ・オーガン”。B級冒険者だ。実は早急に対処しなければいけない問題が発生した。貿易都市スウェルマーニより北にある山脈『ガノシュトロフさん』にて、火竜かりゅうの姿が確認された」

火竜という言葉に、部屋にいるネイノート以外の人間が息をのんだ。

「“火竜”というのは……灼熱の息を吐いて、大空を舞うあの“火竜”?」

カノンカの問いかけに、グランドとハワーズは揃って首を縦に振る。


 火竜。御伽話にも出てくる魔物で、クリスタルウルフと肩を並べるほど知名度も高い。

またその力も相当なもので、襲われれば小さな国の一つくらい簡単に滅んでしまう。

の竜は灼熱の炎を吐き、銃をも弾く強靭な鱗を持つ。その体の大きさは貴族の屋敷一つ分以上にもなり、知能も高い。


 ネイノートにはあまりピンとこない話だった。森にいたころに見た事はなく、冒険者になってからも聞いたことすらない。

 「ここにいる冒険者がその火竜とやらの討伐隊という事か?」

ネイノートの言葉に、ハワーズは歯切れ悪く返事する。

「ええと……実はね、君たちを呼んだのは別の理由なんだ。君の噂は大体聞いてるよ。『臆病者の弓使い』って言われてるらしいね」

 歯に衣着せぬというか、何とも正直に物を言う人だ。しかしそこに悪意がないことはネイノートにも分かる。

実際にはそんなことを堂々と言うのはレシュノア位なものだ。ネイノートが返事に悩んでいると彼は続けた。

「君たちにはね、僕たち討伐隊の護衛を頼みたいんだ。僕たちは火竜討伐の為、出来るだけ消耗を抑えて現地まで行きたいのさ。その役目を君達にお願いしたい。聞くところによると、魔物と出会わなくて済むようになるんだろう?」

 恐らく商人からの噂を聞いてきたのだろう。彼は、宜しく頼む、と付け加えると頭を下げた。


 護衛任務は、これまで何度もこなしてきた仕事だから、断わる必要もない。

と、火竜の恐ろしさを知らないネイノートは軽く了承してしまった。

「ちょっ!ちょっとネイノート君!?そんな簡単に……」

慌てるカノンカを手で制す。

 この件は彼等風の翼にとっても、とても良い話なのだ。この依頼を受け、成功させることで、彼らの名前は今以上に良い方へ広まるだろう。またギルドマスターであるグランドや、B級冒険者のハワーズにも恩を売ることが出来る。


「じゃあ風の翼諸君には了承を得られたということで、この件はオッケーだね。……それで、君達はなぜここにいるんだい?」

ハワーズの質問は、意外にもレシュノアにされたものだった。ネイノートは話が読めず顔を顰める。

 

 実は彼が呼んだのは“ロンダニア”という冒険者だったのだ。

だが今彼はレシュノアのパーティーに在籍していて、その話を聞いたレシュノアが、ルルムスと共に強引にこの場についてきたのだという。

「私が行けば、火竜など恐れるに足らん。違うか?」

 余りに的外れの発言に、グランドとハワーズ、風の翼一行は呆れ果て、大きなため息をつく。ネイノートの耳には誰かが、ちげぇよ、と呟いたのが聞こえた。

ロンダニアは長い沈黙の後、その通りです、と述べ頭を下げた。そのあとは何も話さない。


 これにはハワーズも参ってしまった。彼とロンダニアは同期の冒険者なのだ。

かつてのロンダニアは義に厚く、技もあり、口も達者な方だったのだが……様変わりした彼の様子にハワーズは驚くしかなかった。

 グランドとハワーズはやがて折れて、レシュノア・C・カエンスヴェル、ルルムス・ノクロス両名を、リーダーの命令に従うことを条件に、討伐隊への参加を許可した。


 討伐隊は総勢六名。B級冒険者ハワーズと、彼がパーティーから選出したB級冒険者、魔法使い“ジェゼム”、治癒術師“ブゥゲン”。それにC級冒険者ロンダニアとE級冒険者のレシュノアとルルムスだ。

 数は少ないが、実力のない者を連れて行っても犠牲が増えるだけ、という判断で、少数精鋭の形を取る。

この討伐隊を風の翼が護衛し、火竜の下へ向かう事となったのだった。


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