意外な評価
風の翼が護衛任務を受け、王国を出立する少し前。
ネイノートはクロツチと共に庭で弓を構えていた。
「大体お前さんが言っていた通りに作ってある。弓に三本棘のようなのが出ているだろう?」
クロツチはネイノートの手にある弓を指さす。
弓には矢を構えた時、矢と平行になるように三本の棒のようなものが付いていた。
「その棘は根元部分に矢を置けるようになってて、引き絞った時の指と同じ働きがするようにしてある。で、弓を握る場所には、その棘の間隔を調整する機能が仕込んである」
ネイノートは弓を三本取り出し、棘と平行になるように構えた。
のびた棘は人差し指、根元の突起部分が親指、といった感じだ。
それを手元のボタンを押すことで、ある程度自在に間隔を狭めたり広げたり出来るようになっていた。
この弓は三本の矢を一度に打つことが出来るようになっている。
ネイノートが考え、クロツチが作る弓の第一号だ。
例えば、以前オークと戦ったときこの弓があれば、三体のオークの眼を一度に狙撃する、なんて芸当が可能になる。
初めて木製以外の弓を握ったネイノートは、顔を顰め少し扱いずらそうだったが、暫く練習すると遜色ないほどに使いこなせるようになった。
あくまで眺めていたクロツチがそう思っただけで、ネイノートは満足していないようだが……
新しい弓を手に入れ気分が高揚しているのだろう。森や山に入ってから、彼の狩りが捗ったのは言うまでもない。
スウェルマーニへ行く道中、商人がなぜ風の翼を指名したのか教えてくれた。
「私ら商人は戦う力がありません。だから冒険者様を護衛として雇わねばならないのですが……冒険者様も稼ごうと、魔物と戦うことを望みます」
倒した魔物の素材は冒険者の物になるのだから、倒せば倒すほど儲かることになる。ましてや、商人が馬車を引いていようものなら、その荷台を借りることが出来る可能性も高いのだ。
ところが商人の立場としては、戦闘をすればするほど積み荷に被害が出る確率が高くなる。たとえ魔物からの直接的な被害が無くても、興奮した馬が暴れ、荷が崩れるといった劣化も起こりうる。
荷物を見張り、商人を守り、なおかつ敵を殲滅するのが理想だろうが、相当熟練したパーティーにしか成しえないだろう。
その点ネイノート達風の翼が護衛につけば、その戦闘をほぼ確実に回避できるというのだから、商人としては是が非でもお願いしたい立場なのだとか。
「実は商人たちでも立候補者が殺到してまして……仕方なくくじ引きをして、私に決まったんですよ」
嬉しそうに笑いながら商人は馬を歩かせる。
「それに、まさか旅の最中で、あんなに美味しい物まで食べられるとは思いませんでしたからね」
ネイノートはこれまで通り、森や山に入ると野生動物を狩り振る舞っていた。
勿論難しい調理は出来ず丸焼きではあるが、それでも欲し肉や乾燥させた果物なんかよりはましなようで、商人はこれを大層気に入った。
依頼はやはり往復で、前回の護衛任務とほぼ変わりない。
ネイノートとウィンの力もあって、往復で魔物と会った回数はゼロ。魔物が通り過ぎるのを待っても、毎回魔物と戦闘するよりは格段に速くなる。十四日かかるといわれる期間も十一日程で済んだ。
「いやぁ、まさかこんなに快適とは思いませんでしたよ。これはいい土産話ができました。また宜しくお願いしますね」
王国につくと商人はそう言ってネイノート達と別れた。




