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臆病者の弓使い  作者: 菅原
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指名依頼

 翌朝、ウィンを肩にしたネイノートとカノンカは冒険者ギルドを訪れていた。

勿論昨日の依頼を報告するためだ。

だが門をくぐったネイノートらに向けられたのは嘲笑ちょうしょうさげすみの眼だった。

トラウスをオークから救ったことで少し和らいでいたのだが、前よりも強く感じる。


「今度はゴブリンから逃げ出したんだって?臆病者」

ネイノートはこういう時に声をかけてくる人物に心当たりがあった。

声の方を向くと予想通り、レシュノアが嫌な笑みを浮かべて立っている。

 彼の後ろには多くの見知った顔があった。

その中には、先日一緒に護衛依頼を受けたカルテアとそのパーティーメンバーも見える。

どうやら彼らは、あの後すぐギルドに寄り話を持ち込んでいたようだ。ネイノートは彼らを一瞥いちべつするとレシュノアを見る。

 身なりは変わらないが、剣と銃が新調されていた。見るからに高級な物をたずさえている。

それはレシュノアに限ったことではなく、後ろにいるルルムスを先頭に他の者も装備が軒並み新調されていた。

 それを気付かれずに確認したネイノートは、レシュノアに向かって言葉を放つ。

「そいつらのせいで、こっちは大変だったんだ」

ネイノートは顎でレシュノアの後ろにいるカルテアを指した。

「何が大変だった、だ!お前がおかしなことをしていたせいで、こっちは大損したんだぞ!」

カルテアは大声で反論するが、やはり彼は自分の事しか考えていない。呆れるネイノートは適当に受け流すことに決める。


「あの!すみません!」

周りからの罵声を適当に受け流すという構図だが、ヒートアップする場で一人の女性職員が声を上げた。

周囲にいる冒険者の視線が集まる。

しんと静まる空気の中、言いづらそうに職員が口を開いた。

「あの……名指しの依頼がありまして……」

尻すぼみになる言葉を聞いて、あたりが騒然とする。


 冒険者ギルドに依頼を申し込むのに、これといった条件はない。

報酬額を提示して、それに見合った内容であれば、老若男女、たとえ子供でも依頼を申し込むことが出来る。

そこへ指名手数料として別途に金銭等を上乗せすることで、特定の冒険者を指名して依頼することも可能になっていた。

しかしそこまでして依頼するのは、相当名の売れた冒険者に頼みたかったり、お抱えの冒険者を囲っている者位だ。


 ネイノートはある意味で名が売れていたが、彼を嬉々として雇う物好きがはたしているだろうか。巷に流れている彼の噂が悪い方向であるのは明白だ。

 つまりここで声を上げるのは……

「フッ、ようやく来たか。遅すぎる程だが……今は喜ぶとしよう。それで依頼主は?」

レシュノアである。彼は自分が指名されたと信じて疑わない。

勿論彼の仲間も、周りにいる冒険者も、ネイノートにカノンカですらも彼が指名されたと思っていた。

「ええと……すみません、カエンスヴェル様じゃないんです。ネイノート・フェルライトさん、あちらで依頼主様がお待ちです」

だが呼ばれたのはネイノートだった。ネイノートは職員に連れられてカウンターに向かう。

その場にいた冒険者は皆口を開け、放心するのだった。


 ネイノートに依頼された任務は護衛任務だった。

依頼主はやはり商人で、ネイノートを笑顔で迎え入れる。

場所は前回の依頼と同じく貿易都市スウェルマーニだ。話を聞くに、昨晩ギルドに駆け込んできた商人の話を聞いて指名したらしい。

「今日の昼頃には出発しようと思っているのですが、大丈夫でしょうか?」

 商人という人種は得てして噂にさといものだ。ネイノートを臆病者と知っているはずだが、馬鹿にしないその紳士的な態度に彼は好感を覚えた。

 了承しようとした彼らだが、しかしここで一つの問題がある。E級以下のパーティーは複数で依頼を受けなければいけない、というルールだ。

「だが、俺たちはE級パーティーだ。別のパーティーと一緒でなければ受けられない」

そう商人に伝えると、受付員が慌てたように口を挟んだ。

「あぁ!すみません!実は先日の依頼を成功させた折、ネイノートさんがE級に上がりましたので、パーティーもD級に昇格されました!」

女性職員が、おめでとうございます、と一人で拍手する中、何とも慌ただしい昇進報告に感慨も余韻もない。

 ネイノートはつい先日冒険者になったばかりだ。だというのにもう等級が上がるというのは異例と言える。

その事を疑問の思ったカノンカは職員に質問を投げかけた。

「ネイノート君がD級になったのは嬉しいんですが、少し早くありませんか?」

彼女のその質問に職員は答える。


 何でもグランドがギルドマスター権限を使い、便宜を図ってくれたようだ。

オークの死体を確認し、矢が刺さっていることから、証言通り風の翼が討伐したのは確かだろう。依頼として申し込まれたわけではないが、人を救ったことに変わりはないため、相当のポイントを進呈する、とのことだ。

 問題が解決された彼等に拒否する理由はない為、商人の依頼を受注することにした。

了承の意を伝えた風の翼一行は、旅の準備の為に冒険者ギルドを後にする。


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