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臆病者の弓使い  作者: 菅原
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 カルテアの中である事が引っかかっていた。

それはスウェルマーニから王国へ向かう四日目。前方では総リーダーであるネイノートが、時々立ち止まると肩の鳥と話すようなそぶりを見せる。

この旅で幾度も見た光景だが、カルテアが気になったのはその理由だ。

 道を選ぶだけなのに一体何をしているのか。これがカルテアであれば、止まることなく気の向くままに進むだけの話。

 

 彼には一つ、思い当たることがあった。実は先の六日間と帰りの四日間、魔物を一匹も見かけていないのだ。

道を選んでいるのはネイノートであるため、彼が選ぶ道は幸か不幸か、全て魔物のいない道なのだろうか。

 否。そんなことはありえない。この世界では魔物の生息しない場所なんて無きに等しい。

旅の道程は、草原のような人間の領域に近い場所だけではなく、森の中や山道といった、魔物が多く住む場所も通る。

だというのに旅する一行は、今まで『ゴブリン』の一匹にも出会わず、見かけてすらいないのだ。

 当初はカルテアも、こんな時だってあるか、と思っていたが、これだけ長期間続くとさすがに異常だと気付く。


 その疑惑からカルテアはネイノートを見ると、肩にとまる小鳥に視線を奪われた。

(あの鳥は……どこかで見た覚えがあるな……確か……ウィンド……そうウィンドバードだ!)

彼も“臆病者と称され風を操る鳥の魔物”の話は聞いたことがあった。どうして今の今まで気づかなかったのか。

ネイノートがなぜ魔物を従えているのかは分からないが、臆病者と称されるウィンドバードがいるならば話は早い。

 カルテアは次の分かれ道がチャンスと口角を吊り上げた。


「おい!ちょっとまて!」

分かれ道に差し掛かる頃、カルテアは大きな声を上げた。

その言葉にネイノート、カノンカだけではなく、商人、仲間であるスリズの星一同も驚く。

彼は構わずにネイノートの前まで歩み寄った。

「その肩の鳥、ウィンドバードだろう?まさかそいつを使って、魔物のいない道を選んでるんじゃないだろうな」 

 ネイノートはどうしたものかと悩んだ。

正直に言えば文句を言われるだろうし、否定したところで悪評だらけの自分の言うことなど信じないだろう。

要はいちゃもんを付けられただけの事なのだが、彼の場合いちゃもんを付けられた時点で終わりなのだ。

 何とか事態を収拾しようと思案していたネイノートの沈黙を、肯定と捉えたカルテアは続ける。

「臆病者に総リーダーは務まらん。俺に変われ」

商人は、これまでの旅が快適だった、替える必要はないのではないか、と何度も口を挟むが、暴走したカルテアは聞く耳を持たない。

有無を言わせぬ態度に、ネイノートは頷くしかなかった。


 それから先の旅は酷い物だった。

道行く道は魔物の群れがいて、やり過ごせるだろう場面でも、兎に角戦闘が始まる。

勿論ネイノートも戦いに参加するが、問題はカルテアの戦い方だ。

 護衛任務というのは対象の護衛が最優先であり、例え敵を倒しても護衛対象が死んでいたら意味がない。今回で言うなら商人と積み荷だ。

だというのに彼は、荷馬車をそっちのけで魔物の群れに飛び込み敵を殲滅していく。更にリーダーが前に出たことで、残るメンバーもそれについていってしまう。

 必然ネイノートとカノンカは商人と積み荷を護る役目となるのだが……

カルテアは防戦一方の風の翼を見ては、やはり臆病者だ、と罵るのだった。


 総リーダーがカルテアになって五日が立ち、予定よりも二日遅い旅の終わりに、漸く王国の姿が見えた。

商人は憔悴しょうすいしきっていて、王国が見えるや否や荷馬車のスピードを上げ、逃げるように城門をくぐり王国の中に入っていった。

 共に行動するのもここまでだ。後はそれぞれ好きなときに冒険者ギルドへ赴くことになる。

カルテアは一杯の素材を抱え、勝ち誇ったようにネイノートを睨むが、ネイノートらはそれを無視して路地に消えていった。



「なんてことがあったんですよ!」

 その晩、カノンカは先の旅であったことをクロツチとノゼリエに愚痴っていた。

今は夕食後、食休みの時間だ。

「ひでぇ目にあったな。カルテアってやつは自分の事しか考えてなかったってことか」

クロツチの言葉にそうだそうだと、女性二人は賛同している。

 先ほどから、同じような内容の愚痴に嫌気がさしたネイノートは、クロツチに声をかけた。

「そういえばクロツチ。弓はどうだ?」

彼はにやりと笑って返す。

「おう、なかなかいいのができたぜ」


 クロツチが工房から持ってきたのは一つの弓だ。

だが木製ではない。赤褐色のその素材は鉄か何かだろうか。

「これは『シェルクラブ』という魔物の甲殻で作った弓だ。鉄のように硬い癖に鉄より軽い、いい素材だ」

そういって手渡された赤黒い弓の軽さにネイノートは驚く。

 大きさはネイノートの使う“ムルムの弓”よりも大きい。

何度か弦を引きしぼり、感覚を確かめる。更には実際射てみようと外に出る彼を、三人は大慌てで引き留めるのだった。


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