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臆病者の弓使い  作者: 菅原
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初依頼

 風の翼一行は冒険者救出後、王国に戻ると一日の休息をとり、パーティー結成して以来初めての依頼を受けていた。

依頼内容は行商をする商人の護衛任務である。商人の行先は王国から西の方角。小さな森と山を通った先にある貿易都市『スウェルマーニ』だ。

 王国を出てから既に四日が過ぎており、ネイノートとカノンカ、それにウィンは現在、山道を歩いていた。クロツチは今回ついてきておらず、工房に籠りネイノート用の弓を試行錯誤しながら制作中である。

 旅は至って順調で、予定では七日間だった旅だが、三日過ぎた時点でもう既に道程は半分を超えていた。


 今回の護衛任務に就いたのは風の翼だけではない。

メンバー数五人のE級パーティ「スリズの星」と共同任務となっていた。

 冒険者はその実力でSからFの七つに等級分けされるが、それに伴い、パーティー自体にも等級が与えられている。

これらの振り分けはポイント制になっていて、依頼を達成すると難易度に見合ったポイントが加算されていく仕組みとなっていた。

個人では所持するポイントが、パーティーではメンバーのポイントの合計が、それぞれ一定値以上になって漸く、冒険者としての格が上がるようになっているのだ。

 そして先日新たなルールが出来たのだが、そのルールがネイノート達の……いや、何人かの冒険者の頭を悩ませる種となっていた。

そのルールとは、F級とE級のパーティーは複数で依頼を受注する事、というものだ。

 森の表層に本来生息しないはずの『ブラッドウルフ』『オーク』が立て続けに出現したことで、実力の足りない駆け出しのパーティーは、技術が成熟するまで多数のパーティーで依頼を受ける決まりとなった。

技術が成熟した目安として、パーティーがD級以上であることが挙げられる。

 風の翼はF級冒険者が一人、D級冒険者が二人のパーティーであり、現在の合計ポイントではE級パーティーに分類されている。少なくともネイノートがE級に上がらない限り、風の翼だけで依頼を受けることが出来ないのが現状である。



 青々と木々の茂る山道を、黄色く短い髪を揺らしながら歩く青年、“カルテア・シグナリス”は魔物と会わないことをいいことに、思考にふけっていた。

 カルテアはE級冒険者である。パーティーメンバーも全員同期同郷の仲間で、パーティー共にE級とされていた。

 護衛任務というのは冒険者に敬遠される仕事の一つであり、彼が最も嫌いな仕事でもあった。拘束時間が多い割に報酬が少ない。旅慣れしていない商人にも腹が立つし、なにより自分は誰かを守る性分ではない。

護衛任務か討伐依頼かと言われれば、断然討伐依頼を受けるだろう。だがE級パーティーである彼らは、討伐依頼すら同行パーティーが必要となる。

これは簡単に言ってしまえば稼ぎが半分になってしまうのだ。魔物を倒せば素材も手に入るのだが、それすらも受注パーティーで折半となるだろう。

 

 どの依頼を受けるか悩んでいたカルテアに声をかけたのが風の翼だ。

彼等が持ってきた話は実にいいものだった。

 護衛任務の場合、襲ってくる魔物の素材は倒した冒険者の取り分になるのが常識なのだが、彼等はその素材の権利を放棄したのだ。

この話を受けたことによって、依頼主からの報酬は折半になるが、倒した魔物は独り占めというわけだ。

 普通なら何か裏がある話なのだが、相手からの要求はなく、カルテアはそこに何の疑念も抱かない。

何故なら風の翼のリーダーは巷で有名な『臆病者』だったからだ。

(大方、魔物を倒せない言い訳として素材の権利を手放すことで、戦闘に参加すらしないのだろうな)

カルテア等は自分に都合のいいように理由をまとめる。

 自分らの戦う雄姿をみた行商人は旅先で話のタネとするだろう。そこから噂が広まり、名が売れていく。冒険者というのは得てしてそういうものだ……と。


 カルテアは自身の名声が高まる様を妄想しながら山道を行く。

『安全な旅』という明らかにおかしい事実に気付かぬまま……


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