オークとの戦い2
カノンカが飛び出すのとほぼ同時に、クロツチもオーク目掛けてて突進した。
しかし彼女程の身軽さを持たない彼は、直ぐにオークに気付かれてしまう。
だがここで止まるわけにはいかない。視界の隅ではもう既に、カノンカが一体のオークに肉薄するのが見えた。
(俺より若い奴に……負けるかよ!)
負けず嫌いの彼は構わずに殴りかかる。
オークは手に持った棍棒で迎え撃った。
クロツチの得意とする戦い方は、日頃槌を振って得た筋力と、武器の性能に頼った大振りの一撃だ。
単純ではあるがその破壊力は凄まじく、オークにも引けを取らない。プレートを凹ませることも可能だろう。
しかしそれは破壊力を比べた場合であり、種族として人間より筋力の多いオークは、同じ力を長く保つことができる。
クロツチの初撃をオークはぎりぎりで躱す。
当たればカノンカ同様、一撃のもとに屠れたであろうその攻撃を躱されたのは、唯我武者羅に振り回した結果に他ならない。
明らかな実戦経験不足から来る、戦術的駆け引きのなさが原因だろう。要は正直で直線的すぎるのだ。だがそれはオークも同じであった。
数度空振りした後、大きな音を立ててクロツチの槌とオークの棍棒がぶつかり合った。
しめた、と力を込めたクロツチだが、オークも狙いは同じだったようで、鍔迫り合いのように互いに押し合う形となった。
力の程はほぼ互角……だがここで種族の差が顕著に表れる。
次第に押され、やがて堪え切れなくなったクロツチは、思い切り吹き飛ばされた。
彼が体勢を立て直す頃、眼前にはオークが棍棒を振りかぶる姿が見えた。
(やばい!!)
危機一髪で横に転がり避けたものの、その体勢で彼は再び振りかぶったオークを見た。
間延びする思考の中、クロツチは自身の命が潰えることを悟る。プレートは着ていないからあの死体のように苦しまなくて済むが、身体はぐちゃぐちゃになるだろう。
オークが渾身の力を籠め棍棒を振り下ろす様を、彼の眼はゆっくりと捉えていた。
(終わった……避けきれん)
そう思った時、オークの腕が何かに弾かれ、棍棒はクロツチのすぐ横に叩きつけられた。
鈍い音と共に地面が大きく陥没し、棍棒が土に埋まっている。
諦め閉じようとした彼の眼には、オークの腕をはじいた物がしっかりと映った。
それはネイノートの放った矢だ。彼は高速で振り下ろされる腕を狙って矢を放ったのだ。
その威力は申し分なく、突き刺さることはなかったが、軌道をずらすには十分な物だった。
オークには大きな隙ができ、クロツチは体勢を立て直すとすぐさま攻撃に移る。
クロツチがまず狙ったのはオークの膝。
巨体を支える足、その関節部分を狙った攻撃は、狙い通りオークの足を奪う。
悲鳴を上げながら地面を転がるオークを見下ろし、クロツチは仕返しといわんばかりに大きく槌を振りかぶる。
次の瞬間にはオークの頭がぐちゃぐちゃにつぶれていた。
三体のオークを倒し、風の翼一行は洞窟の前で集まっていた。
「クロさん大丈夫!?」
カノンカがクロツチの安否を気遣い駆け寄る。
「ああ、ネイノートが助けてくれた。しかし振り下ろす腕を打ち抜くなんて、信じられんことをするな。もう少し早く助けてくれてもよかったんじゃないか?」
冗談の混ざったその言葉を聞きカノンカは目を見開く。
彼女が振り向いた時、既に棍棒は地面に叩きつけられた後だったため、その光景を見ていないのだ。
もしそれが本当ならば、オークの眼を狙撃したことといい、その技術力には驚愕の一言しかない。
「何が起きるか分からなかったから様子を見てたんだよ。一回に打てる矢にも限りがある。……さぁまだ気を抜くなよ。洞窟の中にもまだいるかもしれない」
ため息をつき言ったネイノートの言葉に、両者は顔を引き締める。
洞窟内、更に周囲から増援の気配がないことを確認し、話し合いの末彼らは、オークに力負けしないクロツチを先頭に洞窟の中を探索することにした。




