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臆病者の弓使い  作者: 菅原
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オークとの戦い1

 ネイノートはオークのどこを狙おうか迷っていた。

彼はこれまで生きてきて、オークと呼ばれた魔物は見た事も戦ったこともないのだ。

二人からは皮膚が強固で岩のようだと聞いている。

今の彼が持つ矢の鏃は石か動物の牙だから、オークの皮膚に通じない可能性が高い。

(ならば……)

彼は弓を引きしぼる。

 一呼吸置き、矢を放つ。

風きり音を鳴らしながら飛ぶ矢は、三体いるオークのうち一番洞窟に近いオークの眼球に突き刺さった。

オークは衝撃で吹き飛び、目を抑え悲鳴を上げながら転げまわる。

残りの二体は何が起きたのか理解できないようで狼狽うろたえるしかなかった。

 初撃は成功。

間髪入れずにクロツチとカノンカは草木をかき分け飛び出した。


 カノンカは剣を握る手に力を籠めた。

彼の放った矢はオークの眼球に突き刺さり、一体を無力化している。

 彼女は背筋に走るものがあった。

あんな小さな隙間を狙撃する技術があるなんて。

その技術もさることながら、弓という武器を心底見直す。

銃のような爆音が出るわけでもない。ほぼ無音で急所めがけて飛来する矢を、どうやって防げというのだ。

ネイノートに出会って以来、カノンカは自身の中で、弓という武器の常識が塗り替えられていくのを感じていた。


 彼女の狙うオークは、眼前で転げまわる同族に気を取られていてカノンカには気付かない。

今回の戦闘で大事なのは“速さ”だ。

倒すのに時間がかかればかかるほど危険が増す。

(増援が来る前に……!)

彼女は早々に決着をつけるため、愛用の剣に魔力を込めた。


 カノンカの持つ剣は『マジックアイテム』である。

魔法使いの名家に生まれたカノンカは、例に漏れず魔法の才に恵まれた。

だがカノンカには加護がなかったため、その実力は一般の魔法使いにも劣る始末。

カノンカの実力と白い髪を見た父と母そして姉は、ひどく落胆して彼女を家から追い出したのだ。

 その話を聞いたクロツチとノゼリエは一振りの剣を彼女に送る。

それは持ち主の魔力を効率的に伝達、循環し、様々な恩恵をもたらす唯一無二の魔法剣だった。


 魔法の剣に満ちた魔力が、その切れ味を最大限に強化する。

彼女の髪と同じ真っ白な刀身が淡く光り、通り過ぎた空間に白い光を残す。

カノンカはいまだ動揺の最中にいるオークに肉薄し剣を薙いだ。

驚異の切れ味を持った魔法の剣は、岩と同じといわれるオークの皮膚を、いとも容易く切り裂く。

「プギィィ!!」

腹から大量の血と内容物をまき散らしながらオークは暴れたが、やがて力尽き体を数度痙攣させ息絶える。

返す刃で、先のネイノートに狙撃され痛みに転がるオークの首筋を切り付け、とどめを刺した。


 交戦というにはあまりにもあっけなく、時間を図るのも馬鹿らしくなるほどの短い時間。

それを可能にしたのはやはり、初撃で放たれたネイノートの一矢のおかげだっただろう。

彼の矢のおかげで気づかれることなく近づけ、危険を冒すことなく隙だらけの体に一太刀浴びせることができたのだ。

オークを瞬殺し、まるで熟練の冒険者になったような錯覚を受け、彼女は軽く陶酔とうすいする。

(彼を仲間に引き入れたのはやはり正解だった!)

そう思いながら笑みをつくる彼女の背後で、鈍い音が響き渡った。

驚き振り返った彼女の眼に、倒れたクロツチの姿が映る。


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