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臆病者の弓使い  作者: 菅原
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嵐の前の静けさ

 巨大なミミズが張ったような跡を辿り、彼らは森の奥へと入っていく。

辺りは静寂に包まれていて、彼らがかき分ける草の音だけが響いた。

 森で生きてきたネイノートは、かつて感じた事のない違和感を感じていた。

(……静かすぎる)

どんなに静かでも小鳥のさえずりや、虫の鳴き声は聞こえる物だが、このときはそういった些細な音も止んでいたのだ。

 道中には幾つか血だまりが出来ている場所もあり、戦闘の形跡が見られた。地面がえぐれ、木々が倒されている場所もある。

その血が例の冒険者たちの物でないことを祈りながら、彼らは更に跡を追った。

やがて彼らはそこに辿り着く。


 むき出しの岩肌に洞窟があった。

引きずった跡は洞窟の中へと続いている。

草木に隠れて様子を見ていた風の翼一行は、その洞窟の入口に醜悪な魔物の姿を確認した。

 豚を二足歩行させたような姿、腰に一枚の布をつけただけの風貌で、手には棍棒を持っている。

人を優に超える巨体からは、対峙することさえ躊躇ためらわれるほどの威圧感が感じられた。

『オーク』という魔物である。

の魔物は知能が低い。だがそれを補って余りある筋力を持ち、更に頑丈な皮膚は岩にも匹敵する強敵だ。

 確かに彼奴等きゃつらならばプレートを凹ませるくらい容易いだろう。

駆け出しはおろかE級でも到底勝てない魔物であり、勿論森の表層に生息する魔物ではない。

「カノンカ、クロツチ。あいつらに勝てるか?」

ネイノートの言葉にカノンカ、次いでクロツチが答える。

「あいつらはオークね。E級じゃまず無理。D級の私たちでも囲まれたら危険よ」

「やり合うなら一対一じゃないと話にならないだろうな」

現在確認できるオークは、洞窟の外で徘徊する三体のみ。

洞窟の中に何体いるかはわからないが、今なら三体三で勝つ見込みもある、ということだ。

ウィンがいれば、風を読む探知魔法で洞窟内の様子まで分かったであろうに。

痒い所に手が届かないこの現状に、少年は顔を顰めた。


 ネイノートは弓を固く握りしめ指示を出す。

「オークを撃破して冒険者を救出する。ただし無理はするな。洞窟の中に何匹いるかわからないからな。増援が来て敵の数のほうが多くなったら撤退する」

「本気か!?奴らの巣だぞ!逃げるなら今のうちだ!」

クロツチはネイノートの肩をつかみ声をあげた。その声はこれまでにないくらい切羽詰まっている。

「なんだいクロツチ。怖くなったか?」

 ネイノートはクロツチを煽ったが、その言葉に発奮するほどの余裕を、今の彼は持ち合わせていない。

年下に言われた事実に、プライドが邪魔して素直に返事できないクロツチは、曖昧な返事をするしかなかった。

「当り前じゃない。こんなの依頼で来ても、D級パーティ一組でやるような仕事じゃないもの。賢い選択は、すぐに冒険者ギルドに戻って報告することよ」

呆れたようにカノンカは、クロツチに助け舟を出す。

人命救助は大事だが、自分が死んでは元も子もない。もっと言えば命の危険にさらされるのは御免。

彼等が言いたいことはそういうことだろう。

ネイノートとしてもそれには同感だったが……


 それでもネイノートは考えを曲げなかった。もし冒険者が奴らに連れ去られたとするならば、時間が経てば経つほどに生きている可能性は低くなる。

ここから王国まで戻るにしても、どんなに急いだって昼頃になるだろう。直ぐ様冒険者を連れ引き返しても、戦闘に入るのは日が暮れ始める時間だ。それだけ放置してしまえば死んでしまってもおかしくない。

 何を言っても少年は意見を変えないだろう、と察した二人は愚痴を垂れだした。

「おいおい……どうなっても知らねぇぞ」

「諦めましょう。クロさん。どうやらネイノート君はかなり頑固者よ」

「お前はいいだろうさ、戦闘経験も豊富で技術もある。俺なんか昨日まで槌振ってただけだぞ?」

ネイノートには冒険者たちを助ける理由があり、全てを語ってもいいのだが、ゆっくりしていたら状況が変わってしまう可能性がある。

「ゆっくりしている暇はないんだぞ」

少年がそう呟き睨みつけると、漸く観念した二人は武器を構えた。

「初撃は俺が射る。矢が当たったら一気に攻めろ」

ネイノートは弓に矢を番えオークに狙いを定める。


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