木霊する音
王国居住区の一画にある教会。
そこには多くの人が集まっていた。
口々に祝い事を述べ、笑顔を投げかける。
レシュノア、ロンダニアもまた、この日の主役にむかって声をかけた。
「めでたいな。漸くお前たちも一緒になったか」
「おめでとう。というか……まだくっついてなかったんだな」
椅子に座るのは、着馴れない礼服を着たクロツチだ。
彼は照れ隠しで頭を掻く。
その様子を眺めていたレシュノアは、彼に質問を投げかけた。
「なんていって告白したんだ?」
質問を受けたクロツチは突然狼狽えだす。
曖昧な言葉を並べ、要領を得ない。
そこへ、ドレスを着たノゼリエが現れた。
「何も言ってくれないから私から言ったのよ」
くすくす笑うノゼリエの言葉に、クロツチは頭を抱え、二人は驚く。
「クロツチ……お前……」
それは誰の言葉だったか。
どうにか話を移そうと、クロツチはレシュノアに問いかけた。
「そ、そういえば、お前のとこはもうすぐ生まれるんじゃなかったか?こんなとこにいていいのかよ」
尋ねられることを知っていたのか、レシュノアは慌てたりしない。
「もう少しだな。ルルにはちゃんと許可も取ってある。あいつには苦労かけてばかりだったからな。これからは少しは楽させてやらないと」
「魔族の国に魔物の国との交易が始まったようだし、ギルドマスター様は大変だな」
ロンダニアの言葉に、まぁまぁだ、とレシュノアは返した。
期待していた反応がなかった為、クロツチは更に話を広げる。
「しかしあのレシュノアが家を出るとはなぁ」
「仕方なかろう。成功したからいいものの、失敗していたら弓兵団を作るなんて行い、家名を汚しかねん」
それもそうか、と三人は笑い合う。
レシュノアはここにいない人物を思い出し、クロツチに問いかけた。
「クロツチよ。こんなにめでたい席だというのに、あいつらは来ていないのか?」
「あぁ、あいつらなら……」
クロツチの言葉を遮るように、ロンダニアへと声がかかる。
「副団長!また入団希望者です!団長の顔を一目見たいと……」
声の主は弓兵団の隊員だ。
その報告を受け、ロンダニアは驚き呆れる。
「はぁ!?最近多すぎるだろ!今日だけで何人目だよ!」
「ははは!団長様が不在だと副団長様は大変ですなぁ」
げんなりとするロンダニアに、クロツチが笑いかけた。
一頻り笑うとレシュノアに向き直る。
「あいつらは今森で休暇中なんだとさ。式の話が決まった時にはもういなかったんだ」
隊員を追い払ったロンダニアも口を挟んだ。
「自分みたいに寂しい思いをさせたくないんだってさ」
レシュノアはその会話を聞いて、彼も見上げているだろう青空を見上げる。
森の香りがする小屋の中、一人の女性が椅子に座っていた。
彼女が座る椅子は、前後に揺れる造りとなっていて、僅かに音を立てて揺れている。
彼女の視線の先には、一人の男の子がいた。
「母様!」
幼い声。
彼は、大好きな母親の下へ走り寄り、袖を引っ張る。
「なぁに?またあの話?」
首を縦に降る子供を抱きしめ、女性は何度も聞かせた話を語りだす。
少し感動的に着色し、それでいてありのままの物語を。
「ある森の中に、弓を使う狩人が住んでいました。彼は毎日、森で弓を……」
子供は楽しそうに、母親のお話に聞き耳を立てる。
大陸の東に位置する大山脈。
その周りには、実り豊かな大森林が広がっていた。
人間の住む国の周りは、見渡すかぎりの大草原が広がっており、国から山脈までを森と二分している。
国に比較的近いその森の中。
木々の間を一匹の兎が駆け抜け、その後を一人の青年が追い駆けるのが見えた。
その姿は、直ぐに木々に阻まれ見えなくなる。
山脈が見下ろす深緑の森には、矢が飛ぶ音と、鳥の鳴き声がいつまでも木霊していた。
これにて『臆病者の弓使い』完結となります。
これまで読んでくださった皆様方。感想を寄せて頂いた皆様方。
本当にありがとうございました。
現在、アルファポリス様にて、新しい話を投稿中です。
そちらの方も落ち着き次第、こちらに投稿しようと思っているので、また見かけた時は宜しくお願いします。
また、感想にて指摘して頂いた点につきまして、頑なに自論を押し付けていましたが、やはり一部説明が難しいところがあると思い、後々加筆修正させていただきます。ご了承ください。
最後に、繰り返しとなりますが、拙い文章ながら、ここまで読んで下さり、ありがとうございました。




