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臆病者の弓使い  作者: 菅原
118/119

悲しき戦い3

 石畳の上で、七人の魔法使いは詠唱を始める。

青の宝石を握り締め“ノゼリエ”が。

紫の宝石を握り締め“ルルムス”が。


「「我が身に宿りし聖霊よ」」


黒の宝石を握り締め“サラシャ”が。

白の宝石を握り締め“レシュノア”が。


「「彼の身に宿りて力となれ」」


淡い色が重なり、辺りを染め上げる。

歌はまだ続く。


黄の宝石を握り締め“メイレイ”が。

緑の宝石を首にかけ“ウィン”が。


「「世界の調和、繁栄の為に」」


 ネイノートが構える矢の先に、六色の魔法陣が現れた。

その魔法陣は次第に輝きを増し……

最後に赤の宝石を握り締め、赤く染まった髪を揺らしカノンカが願う。


「この世界で暮らす……皆の未来の為に!」


赤の魔法陣が一番奥に現れて、全ての準備が完了する。

ネイノートは落ち着いた心で……


矢を放った。


 魔法陣の中心を通る度、その身に一つずつ加護を宿していく。

青、紫、黒……魔法石と同じ色を帯びていく。

七つ目の魔法陣を通った時、矢は光り輝き、白銀の矢となった。

勇者目掛けて飛ぶ様はまるで、人の願いを叶える『流れ星』。

それは人々の願いを乗せ、吸い込まれるように勇者の胸に飛び込む。


 矢に宿る精霊の力が、迎撃を始める勇者の加護を打ち消していく。

炎を、雷を、水を、風を、地を、そして光の盾と闇の盾を。

勇者は目を見開き、その矢を見ていた。

斧を受けとめている為、身体を動かすことは出来ない。

仮に体が動いても、反応出来なかっただろう。

その矢は余りにも……眩しすぎた。

輝きを失った一本の矢は、勇者の鎧を貫き、その心臓を打ち抜いた。



 勇者は口から血を吐き、膝をつく。

即死の一撃。

だが彼は、召喚者だからか、はたまた異常な執念からか、命の灯はまだ潰えていない。

勇者は城壁にいるネイノートを睨みつけ叫んだ。

「何故だぁ!貴様も一人だった筈だ!親父を失い、ずっと一人で……なのに何故絶望しない!」

地面は口からあふれる血で黒く染まっている。

必死に吐き出した声は城壁まで届かず、仮に届いていても少年の返事を待つことは出来ず、勇者はそのまま地に倒れた。

視界は霞み、もはや体も動かない。

荒く短い息遣いも、次第にゆっくりとなっていく。


 苦しむ勇者に向けて、傷らだけのオーガキングが声をかけた。

彼は城壁の上を見つめている。

そこでは弓使いの少年が、多くの人に囲まれていた。

「苦しみを、悲しみを分かち合うことが出来る仲間。そんな仲間がお前にもいただろ?」

その言葉で勇者は、懐かしき日を思い出す。

呆れ顔のメイレイ。

怒った顔のガンゼオラ。

笑顔のキュオレ。

 皆、いいやつだった。

楽しかったんだ、ずっと。

その筈だったんだ……どうして……俺は……

最後に懐かしい妹の顔を思い出し、勇者の意識は闇の中へ沈んでいく。



 勇者が倒れた事に喜びの声を上げる城壁の上で、タイロンがサラシャを呼ぶ。

その命はもう風前の灯火。

だからこそ彼はある提案をした。

サラシャもそれに同意し、最後の神の奇跡を発動する。

 勇者の頭上。

晴れ渡った空に、巨大な魔法陣が現れた。

そこから一つの光の柱が射す。

それを受けた勇者の体は、光の粒子となって霧散した。

やがて、その役目を終えた魔法陣は、タイロンの命と共にその姿を消す。

二人の顔は僅かに微笑んでいた。


 長き戦いは終焉を迎える。

人も、魔族も、魔物も、皆手を取り合い喜び合う。

雲一つない青空が、彼らを見下ろしていた。


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