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臆病者の弓使い  作者: 菅原
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戦いの始まり

 レシュノアは自身のした行い、その行動の結果起きたことに非常に満足していた。

少しだけ余韻に浸り、近くに立つ国王の前に跪く。

「出過ぎた真似を、お許しください!」

出過ぎたなど、とんでもない。

あのまま行けば、国王は何も言葉を発することが出来ず、最悪な状態で魔王軍と交戦に入っていただろう。

少年の行いは無くてはならないことだった。

 王は一介の貴族のように、自分の立場を盾に威張り散らす陳腐な誇りなど持ち合わせていない。

反省すべきことは反省し、謝罪すべきことは謝罪し、感謝すべきことは感謝する。

国王は確かにレシュノアに向かって頭を下げた。

「すまぬな。私がやらなければならないことだった。感謝する」

辺りの兵はそれに驚く。

だがレシュノアは慌てることなく、国王の謝罪を素直に受け更に遜る。

「失礼ながら国王様。兵士たちが貴方様の言葉を待っています」

頭を下げながら、レシュノアは城壁の外側を手でさした。


 一方ネイノートは、ソーセインから一本の矢を渡されていた。

それは弓で放つことで風を受け、笛のように音が鳴る特殊な矢である。

注意を引く事が目的で作られたそれは、正に英雄の放つ最初の一射に相応しい。

敵軍にも自身の存在を知らせることで、意識を分散させることが出来る。

また、いつでも命を奪えるぞ、と相手に知らせる意味もあった。

ネイノートはその矢を弓にかけて、その時を待つ。


 国王は城壁の端まで寄ると、眼下の兵士を見下ろした。

ぎらりと目を輝かせ、突撃の号令を今か今かと待ち続ける兵士達。

その期待に応えるべく、国王は声を上げた。

「皆の者!魔王軍は既に目と鼻の先である!奴らに見せてやろうではないか!我々人間の力を!」

国王の目線での合図を受けて、ネイノートは番えていた矢を放つ。

一直線に魔王軍へ向かって飛ぶ矢は、風を受けて甲高い音を立てた。


 ヒョォォォ……


その音は王国軍だけにとどまらず、魔王軍の気も引き付けた。

行軍を止めることはないが、その足は僅かに鈍り、皆矢の飛ぶ先に気を取られる。

 矢はまっすぐに、獣型の魔物の上にまたがる、魔王タイロンの下へと飛行した。

狙いは寸分たがわずその左胸。心臓のある位置だ。

タイロンは煩わしそうに剣で矢を叩き切る。

王国軍はそのことを気にも留めない。

もし今の一射で命を奪えるのならば、元からこんな戦争が起きることはなかっただろう。

タイロンが矢を斬ったと同時に、国王が最後の号令を出した。

「勇ましき戦士達よ!人々の未来の為に!全軍突撃ぃ!」

王国軍は、魔王軍に向けて進撃を開始する。

 軍の中央を賢者と剣聖、そしてカノンカが走り、そのすぐ後ろを何万という歩兵が追いかける。

その両側を馬に乗った騎兵隊がはさみ、真っ黒な軍隊目指して突撃した。



 城壁の上では、ロンダニア率いる弓兵団が弓を構えていた。

手に握る弓はクロツチが考案したもので、射程距離と威力を重視しつつ、従来の物より精密性が上がった新しい弓兵団の弓である。

その数はたった百。

それでも戦場を走る兵士にとって、彼らは期待を寄せるに値する存在であった。

「全員放てぇぇぇ!!」

ロンダニアの掛け声と共に、百数本の矢が放たれた。

それは放物戦を描きながら、迫りくる魔王軍へと襲い掛かる。

雲から降る雨のように、頭上から次々に降り注ぐ矢は、ゴブリンやオーガに突き刺さり、その命を奪っていった。

 しかし魔王軍の速度は変わらない。

倒れた魔物をよけ、踏みつぶし、そのまま行軍を続ける様は、『異様』以外の何物でもなく、否応いやおうなしに恐怖を掻き立てる。


 彼我の距離はもはや100の距離もない。

王国軍は声を上げ、剣や槍を握る手に力を籠める。

魔王軍は咆哮を上げ、棍棒や剣を振りかぶった。


 瞬く間に距離は縮まる。……70……50……20……

あと数歩で剣が届くところまで来た時、兵士の背後から飛来した三本の矢が、最前衛のゴブリンの頭に突き刺さった。

 王国兵は知っている。

1000の距離離れたゴブリンの頭を打ち抜く英雄を。

「英雄が付いているぞぉぉ!!」

近くの部隊長が声を上げ、それに答えるように皆剣を振りかぶる。

兵士が力の限り振り下ろした剣は、弓の狙撃を見て怯んだゴブリンを切り裂いた。


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