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06 ご近所さんと親友Ⅱ

 ふいに見知った姿を見つけ、春樹は無意識に呟いた。


「あ」

「お」


 ――呟きを聞き逃さなかった相手もまた驚いたように目を見張る。

 しかしそれもわずかな間で、相手――川岸は小さく笑った。

 自転車を押しながらやってくる。


 春樹は一度、ぺこりと頭を下げた。

 彼はコウスケの友人であるが、春樹自身も彼と話したことがあるし、今後もコウスケを介して会うことがあるかもしれない。

 礼儀を忘れないようにしないと。


「買い物か?」


 すぐ近くまでやって来た川岸は春樹の持つ袋に目を止めたらしい。

 確かに袋の中にはたくさんの食料やら日常用品やらが詰め込まれていた。


「はい、今日の夕飯を……」

「へぇ、手伝いか。本当に偉いなー」

「いえ……」


 手伝いというより夕飯も全て春樹が作るのだが。

 しかしわざわざ訂正することでもないし、説明するのも手間がかかる。

 春樹は曖昧に笑っておいた。

 しかし川岸は気にした風もなく話し続ける。


「いや、でも本当に意外というか。初めコウスケに話を聞いてた時はどんなくそ生意気なガキかと思ってたんだよ。なんかごめんな」

「いえ、そんな」


 気にしていないとばかりに首を振る。この場合、むしろ謝るのはコウスケの方だ。

 とはいえ、コウスケも全くの嘘は言っていないのだろう。

 事実、春樹は他人と比べてコウスケに対してはやや遠慮がない。

 しかし川岸の反応からするに、恐らく通常よりも大袈裟に語られているのだろうなと春樹は見当をつけた。


「そういえば、そのコウスケさんなんですけど」

「ん?」

「可愛くないとうるさいんで、色々と考えて可愛いげあるように振る舞ってみたことがあるんですよ」

「ほう?」

「だけど、今度は気持ち悪いって」


 はあ、とため息。

 別にコウスケに「可愛くない」と言われようが「気持ち悪い」と言われようが春樹は気にしない。

 しかし一応相手のことを汲み取って振る舞ってやったというのに否定されては理不尽に思わざるを得なかった。

 「じゃあどうしろと」と問い詰めてやりたい衝動に駆られる。

 実際に問い詰めたところで有用な答えは返ってきそうにないが。


「あー」


 想像したのだろう、川岸はケラケラと笑った。

 軽く口を開く。どこまでも軽快にあっけらかんと。


「あいつMだからさ」

「……」

「……」


「……なるほど」

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