恋文
拝啓
あなたは今どこで何をしているのでしょう。
あなたは今何を思っているのでしょう。
あなたは今どうやって生きているのでしょう。
あなたは今何故生きているのでしょう。
あなたの中の片隅の、コートについた毛玉のような、ほんのちっぽけな存在でもいいから、私はいるのでしょうか。
私は今、あなたを思っています。
私は今、あなたのために生きています。
私の中の殆ど全てがあなたという存在で満たされ、私はあなたに呑まれてしまいそうなのです。
…なんて言ったら、あなたはまた、面倒臭いというのでしょうか。
それだけはどうか、避けたいものなのですが。
私はあなたに嫌われました。
あなたはそれに気づいていません。
あなたがかつて私に触れてくれたような優しい指先は、無機質なマネキンのように冷たくなってしまいました。
あなたがかつて私にかけてくれた甘い口許は、錆びれて耳障りなノイズしか聞こえません。
それでもあなたは私を好きと言います。
私はどうもそれがあなたの本心ではなく、私の機嫌をとっているようにしか見えず、また、悲しいのです。
あなたが呟く好きは、あなたの心ではないとわかっていても、桜吹雪が舞うのです。
まるで、あの時の気持ちが蘇るかのように、期待をしてしまいます。
それ故、私はあなたを拒むことができません。
それが余計酷く辛いのです。悲しいのです。
ですから、私はあなたにお別れを告げなくてはならなくなりました。
勝手な旅立ちを、お許しください。
私の大好きなあなたへ。あなたが、また、心から人を愛すことのできますように。
あなたが、また、心から人に愛されることのありますように。
あなたのあたたかい指先を忘れません。
その指先で、また、誰かに触れてください。
その名の通り恋文です。
大好きなあなたへ、お別れの。