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作者: 零月

昔書いたお話を色々といじくっております・・・。

楽しんでいただけたら幸いです。

実は友人のお子様をお借りしています。

詳しい事はあとがきにて。

「ミル!ちょうど良いところに来たわね。あのね私、この人と付き合っているの。」


と海の見える小高い丘に作られた小さな公園で、黒髪の少女が隣にいる銀髪の青年の腕に手を絡ませて嬉しそうに言う。


「え・・・。」


ミルと呼ばれた少女は呆然と言う。


「だからぁ」


少女がもう1度言おうと口を開くがミルはそのまま走り去っていった。


2人はその後ろ姿を見送り、しばらくその場にいた。


「これで、良かったの?」


銀髪の青年が少女を見ながら言う。


「うん。こうでもしないと、あの子はずっとここに留まってしまうから・・・」


少女はうつむいて言った。







ことの始まりは死神界のとある部屋から始まった。


机を挟んで2人の少女が座っている。


「ねぇ、シャドウ。このままだとあのミルって子消えてしまうわよ。」


書類に目を通しながら椅子に座っている少女がシャドウに言う。


「それは。どういうことですか?」


深刻そうに聞くシャドウをチラリと見てから、少女は説明を始めた。


「あの子まだ力の使い方をわかっていないみたいよ。」


「・・・?」


「どうやら知らなかったみたいね」


スルーの言葉にシャドウは目をそらす。


そして、スルーはそのまま続ける


「あの子は他の子と違って飲み込みは早いんだけど、力の使い方がわからないから無意識にその力を使ってしまうの。」


「それは、力の制御が出来ていないと・・・?」


「そういうことね。」


スルーがシャドウを見ずに答える。そして続けて言う。


「力は使っていればいずれなくなるものよ。」


「・・・。ミルは・・・もう・・・」


シャドウが途切れ途切れに言う。


「そういうこと。早く成仏させてあげないとね。」


スルーがシャドウに優しく言う。


「・・・でも・・・」


「あの子には好きな人がいるって?」


スルーがお見通しといわんばかりに驚くシャドウを横目に言う。


「だったら、あきらめさせないと。」


「どうやって・・・?」


「彼にも手伝ってもらうの・・・。」


スルーが不適な笑みを浮かべて言った。







赤いリボンをした黒髪の少女・・・シャドウは死神界から人間界に戻ってきた。


目的は、そう。スルーの言われたことを実行するからだ。


そして、今は道端で協力してもらう相手、銀髪の青年を待っている。


「兄さん、あそこに誰かいるよ。もしかしてクライアントじゃない?」


髪の毛を縦ロールにし、それを2つに結んだ少女のような風貌の子が言う。


実は男の子だ。


「・・・。」


兄さんと呼ばれた銀髪の青年が少年指す方向を見る。


そこには真っ赤なリボンを髪につけた少女が立っている。


少女は、この兄弟に気がついたらしく頭を下げた。


「やっぱりクライアントだよ!」


少年が嬉しそうに言う。


「あれはクライアントじゃないよ。」


青年は冷ややかに返す。


「じゃあなに?」


「さぁ」


という短い会話を歩きながらしているうちに少女の前に来た。


「こんばんは。」


少年が笑顔で言う。


「・・・。」


リボンをつけた少女はやはり無言で頭を下げる。


「私たちに何か御用?」


少年は笑顔で聞く。


「・・・はい。あまり気は乗らないのですがお願いが・・・。」


と目をそらしながら小さな声で言った。


「じゃぁ話は早いわ!私はルキア。こっちは・・・」


「ゼファー。」


ルキアが紹介する前にゼファーが面倒くさそうに言う。


「あなたがゼファー君ですか?」


少女の目の色が変わる。


そして続けて言った。


「お願いがあります!上からの命令なのでどうしても・・・あの、天に逝けない少女が居るんです!その子を天に上げるには・・・」


「俺に力を貸せと?」


少女の言葉をさえぎってゼファーが言う。


「はい。」


少女は辛そうに頷いた。


「何故俺が必要?」


「それは・・・」


少女が言いづらそうにしているとルキアが口を挟む。


「その子が兄さんのことが好きになっちゃったとか・・・?」


「・・・はい。」


「ふぅん。で、兄さんを諦めさせるために兄さんに手伝ってほしいんだ。」


ルキアが少女の言いたいことをまとめて言う。


「でも・・・゛彼女゛が居るならそれはそれで・・・」


そう言って少女がルキアとゼファーを見比べる。


しばらく静寂があたりを包む。


「・・・。」


そして、辺りの静寂を切り裂くようにルキアが叫ぶ


「ちっがぁぁぁぁぁぁぁう!!!私と兄さんは兄弟!!わかる!?き・ょ・う・だ・い!!それに、私はさっきから兄さんのこと『兄さん』って呼んでいるし!!」


「あっ・・・スミマセン見かけで・・・」


少女が申し訳なさそうに言う


「見かけで判断しないでください!!」


ルキアは肩で呼吸をしながら言う。


そして、短い静寂が訪れる。


「・・・やはり引き受けられないですか・・・?」


静寂を破ったのは申し訳なさそうに言う少女の声であった。


「まさか。面白そうだし引き受けるわよ。ねぇ?兄さん。」


ルキアが楽しそうに言う。


「・・・」


だが、ゼファーは無言のままだ。


「・・・。兄さんはほっといて2人で話を進めましょうw」


「・・・。それで彼女は報われるのか?」


ゼファーは一人ごとのように呟いた。


「・・・?兄さん何か言った?」


「いや。なんでもない。」


小首をかしげるルキアにゼファーは無表情のまま答えた。







「2人とも何でそんなに神経衰弱強いのよぅ!!」


紫の髪を揺らしながら少女が悔しがる。


「それはミルが良く力を使いすぎているからだろう?」


「そうそう!それにちゃんと寝ないで遊んでいるし。私とイリスはちゃんと寝ているもの!」


青い髪をかきあげて少女が楽しそうにトランプをめくる。


「またあたり〜!」


「今回もヘブンの1人勝ちか?」


イリスが呆れて言う。


「へへ〜ん」


ヘブンと呼ばれた少女が楽しそうに笑う。


「もう!やめ!!外に行こうよ!」


ミルが楽しそうに2人にいうが2人は残念そうに首を横に振る。


「ごめんね今日は用事があってさ・・・。」


「私も・・・だから今日はここまでだ。」


「また遊ぼうね」


ミルが残念そうに言う。


「また明日くるから。」


ヘブンが言い、隣でイリスがうなずく。


それを見て満足したのかミルが笑顔で手を振った


「また明日遊ぼうね!!」


そして、ミルはいつもの場所へ行く。


そこは海の見える小高い丘に作られた小さな公園である。


この時間は誰も居ない。


日が海に沈む、この景色がミルは大好きだ。


いつかこの場所を大好きな人と見るのを夢見ている。


だが、今日はいつもと違う。


その場所に人影があるのだ。





「いい?彼女役はシャドウだからね!」


ルキアが赤いリボンの少女を指差して言う。


そういえば名前を聞いていなかった!!というルキアの言葉にシャドウは申し訳なさそうに自分の名前を告げたのだ。


そして今は作戦を立てているのだ。


作戦内容はこう。


シャドウとゼファーがカップルになりまし、ターゲットを諦めさせて成仏させるという計画らしい。


「あとはターゲットの良く行く場所よね・・・。」


とルキアが考え込む。


「それなら、私。知っています。」


「えっ!?何処!?」


「海の見えて見晴らしの良い小さな公園です。私もアノ場所が好きで・・・。」


「ふぅん・・・。だって兄さん!ちゃんと聞いてた!?」


ルキアがゼファーを見て言う。


「ちゃんと聞いているよ。見晴らしの良い公園だろ?」


ゼファーがルキアをちらりと見て言う。


「聞いているなら宜しい。」


ルキアが満足そうに言う。


「じゃあ、明日の夕方結構ね!」







いつもは誰も居ない公園に影が出来ている。


ミルはその影を見ていると影はミルに気がつき話し掛けてきた。


「こんばんは。お嬢さん何処からいらしたの?」


「え?・・・そこの家から・・・。」


「あら、意外と近くにお住まいなのね。」


その女性はクスッと笑いながら言う。


あっけにとられているミルに女性は深々と頭を下げて名前を言った。


「私はラファイエルと申します。」


「私はミルです。」


ミルもラファイエルに習って頭を下げる。


「ミルちゃんって言うのですね。可愛らしいお名前ですこと。」


ラファイエルは楽しそうに言う。


「ラファイエルさんはとても幸せそうですね。」


ミルはラファイエルを見ながら楽しそうに言う。


「えぇ。とても幸せです。好きな殿方と一緒に居られることはとても幸せなことですよ。」


ラファイエルはとても幸せそうに笑いながら答えた。


「へぇ・・・好きな人と・・・」


ミルは羨ましそうにラファイエルを見つめた。


「えぇ。ミルちゃんも好きな方と一緒に居られると良いですね。」


「はい。」


ミルは嬉しそうに答えた。


「じゃあ、私はコレで。」


そう言ってラファイエルは公園から姿をけした。


ラファイエルの姿を見送り太陽を飲み込んだ海を少し眺めてから、ミルは家路についた。







「ねぇ、シャドウ?その話本当なの?」


ヘブンが聞く。


「本当よ。それより、一番近くにいるあなたがどうして気がつかないの?」


「だって・・・」


シャドウの問いにヘブンが黙る。


「まぁ、彼女は近いうちに消えてしまうってことは事実。そうなる前にとっとと成仏させてあげましょう。」


「イヤ。」


「え?」


「イヤよ!!ようは力を使わせなければ良いのでしょう!?だったら、私が・・・」


「それで彼女は力を使わなくなるの?」


「それは・・・」


シャドウの問いにやはり黙ってしまうヘブン。


けれどヘブンは強い支線でシャドウを見返し言った。


「やってみないとわからないわ!とにかく私が近くにいるときだけでも力は使わせないわ!」


「そう。でも、こっちはこっちで動くから。何があっても邪魔はなしよ。」


シャドウはクスッと笑いヘブンに背を向けた。


いよいよ、時が迫っている・・・。


作戦決行まであと少し。





「さて!今日が作戦結構の日よ!!気合いいれて行きましょう!!」


拳を空に突き上げて楽しそうに言うルキアを横目で見て、シャドウはクスッと笑う。


「ルキアちゃんホント楽しそうね。」


「ただ、テンションが高いだけ。いつもとそんなに変わっていないよ」


その横でゼファーがシャドウを見ながら言う。


ここはよくミルが現れるという小さな公園だ。


見晴らしもとてもよく、静かで昼下がりだというのに誰もいない。


「あら、今日はたくさんの人が来ているのね。」


そう言ったのは青い着物を着た女性・・・ラファイエルだ。


ラファイエルはその場にいる3人を見る。


「ご兄弟か何か?」


「いえ。この2人が兄弟で私は・・・」


シャドウがラファイエルの質問に答える。


「あら、そう。」


ラファイエルはとても楽しそうに相槌を打つ。


「昨日も女の子がここにいたわね。とても寂しそうに海を見るの。」


「その子はどんな子なんですか?」


「その子はね。紫色の髪色の子ですね。変わった子でしたわ。」


「どんな風に?」


「フフッ何か事情聴取されているみたいね」


ラファイエルが笑いながら言う。


「えっあっスミマセン」


シャドウが慌てて謝る。


「大丈夫よ。でも、これ以上お話するのは止めますわね。私はもう帰らないと。」


ラファイエルはそう言って公園から出て行った。


そして、しばらく風の音だけがその場に聞こえていた。


「あの人・・・」


ルキアが呆然としたように言う。


「知っているの?」


シャドウが聞く。


「ううん。ただきれいだなぁって・・・。」


「お前よりは綺麗だろ。」


ゼファーが即答する。


「兄さん今なんていった?」


ルキアが般若の形相のごとくゼファーに振り返る。


「いや。聞き返すなら聞こえていたってことだし言う必要ないだろ?」


「そうね。その通りね。全くもってその通りだわ。兄さんあなたを凄い殺したい。」


ルキアが怒りを抑えた笑顔で言う。


「あっそ。」


ゼファーは興味なさそうにルキアから視線をそらした。







「ねぇ、ミル?しばらく力を使わないでくれる?」


「突然どうしたの?」


ヘブンの質問にミルが小首をかしげる。


「いいから、約束できる?」


「うん。」


意味がわからないとでも言いたげに、うなずく。


「そういえば今日はイリスがこないね。」


ミルが部屋の中を見回しながら言う。


「今日は色々と忙しいからこれないんだって。」


「へぇ・・・。」


ミルが少し寂しそうに相槌を打った。


「ミルは、私といるのいや?」


「ううん!そんなことないよ!ただ、もう会えなくなりそうな感じがするからさ・・・」


「え?どうい・・・。」


ミルの言葉にヘブンは驚いて聞き返そうとしたが、やめた。もしそれを聞いてしまったらミルが消えてしまうような気がしたからだ。


「何?」


「なんでもないよ」


「ならいいや。あのさ、ヘブンに見せたいとこがあるんだけどこない?この時間が一番綺麗なの!」


ミルが嬉しそうに言う。


「この時間が?」


「そうだよ!早くしないと、暗くなっちゃう!」


ミルがせかすように言う。


言われるがままにヘブンはミルの後についていく。


そのときにチラリと時計が目に入った。


時刻は5時30分。夕方だ。


「ヘブン!早く!!」


「はいはい今行くって!」


作戦開始







「ホントに綺麗!!」


「でしょ?」


ルキアが海の中に沈む太陽を見て嬉しそうに言うのを見ながらその様子を見てシャドウも


嬉しそうに言う。


「となると、そろそろターゲットがくるはずよね?私はそこに隠れているから!」


そう言ってルキアは近くの木の陰に隠れた。


残されたのはシャドウとゼファーだ。


そのときちょうど1人の少女が嬉しそうに公園の中に入ってきた。


そして、2つの影を見て笑顔が消える。


「あ・・・。」


少女は動揺を隠し切れないまま声を上げる。


それに気がついたシャドウは無理に笑顔を作り、ゼファーの腕に手を絡ませてこういった。


「ミル!紹介するわ。私の彼氏。ゼファーって言うの。」


ミルと呼ばれた少女は呆然と立ち尽くす。


そして、ミルの後ろから青い髪の少女。ヘブンが現れた。


ミルはヘブンに気がつきこういった。


「ヘブンは知ってた・・・?」


か細い声で聞かれ、何て言ったのか聞こえなかったが奥の様子で理解できたらしい。


首を横にふった。


そして、ミルはもう1度シャドウ達を見て何かを言おうとするが、それをやめ。


その場から出て行った。


「シャァァァドォォォ!!」


ヘブンがシャドウに飛び掛った。


「どういうこと!?アンタが何をしたかわかっているの!?」


「・・・」


「何か答えなさいよ!!こんなのアンタのやり方じゃないでしょ!?誰に言われたのよ!!今のあの子の状態がどういう状態だったか分かるでしょ!?ねぇ!」


涙をボロボロとこぼしながらヘブンがシャドウの胸倉を掴んで叫ぶ。


「それは彼女も一番良く分かっているから・・・。わかってあげて。今彼女も辛いんだ。」


ゼファーがヘブンを落ち着かせる。


「でもっ!!この気持ちをなくしたら、あの子は消えちゃう!」


ヘブンは縋るような目でゼファーに訴える。


「・・・大丈夫そうなる前に何とかするから・・・ごめんね・・・。」


下を向いて小さい声で言うシャドウを見てヘブンが真剣な声で同じ質問を言う。


「誰に言われてやったの?こんなのシャドウのやり方じゃないでしょ。」


「ヘブン・・・。昨日言ったよね?『何があっても邪魔はしない』今は私の作戦中だよ。」


「そうね。でも・・・」


「終わってから話すわ。あなたが居たら作戦の邪魔・・・。」


「わかったわよ。私は私のやり方でミルをどうにかするわ!」


そう言ってヘブンは消えた。


「へぇ、あの子凄いね。消えたよ。」


「そりゃ幽霊だから。」


「ふぅん・・・。ねぇ、ホントにコレで良かった?君の望む結果は得られた?」


ゼファーの問いにシャドウは悲しそうに言った。


「私の望む結果じゃないけど、こうしないと、あの子は消えるまでここにずっと居ることになる・・・。」







『紹介するわ。私の彼氏。ゼファーって言うのよ』


頭の中からその言葉が消えない。


ずっと想っていた人だった。


いつかこの想いを伝えたかった。


なのに・・・!


あの言葉を聞いたとき胸が張り裂けそうだった。


とても辛い。


自分がこの場から消えてしまいたいと思った。


涙が止まらない、納得できない。


あの場所であの人の隣に居るのは・・・。


「あら、ミルちゃん!そんなところで何をしていらっしゃるの?」


自分名前が呼ばれる声で思考回路を停止させた。


見るとラファイエルが笑顔で立っている。


彼女の隣には見慣れない男の人が居る。


「ラファイエルさん・・・」


ミルはボーッとしたような声で言う。


「ミルちゃんどうしたの?」


ラファイエルはしゃがみこんでもう1度同じことを聞く。


「私は・・・ただ・・・」


そう言ってさっきの光景を思い出し涙が出て来た。


「あらあら。泣かないで」


困ったようにハンカチを取り出しミルの涙を拭こうと頬に触れ・・・すり抜けた。


「?」


ラファイエルは小首をかしげる。


ミルも何が起こったかわからず、ただ目をぱちぱちと瞬きさせるだけだ。


「あの・・・」


ミルが不思議そうに口を開く。


「なぁに?」


ラファイエルは先程の出来事を忘れたように笑顔で聞き返す。


「その人は・・・?」


「彼?私の旦那様です。」


ラファイエルは嬉しそうに言った。


「旦那様・・・」


「えぇ。確か、ミルちゃんにも好きな人が居るのよね?」


「さっき失恋しちゃって・・・。」


ハハッと乾いた笑いを漏らすミルにラファイエルは「そう。」と悲しそうにいった。


「でも、ミルちゃんはちゃんとその人に自分の気持ちを伝えたのかしら?」


「彼女と居るところを見ただけで・・・。」


「もしかしたら、勘違いじゃないの?」


「彼女のほうがそう言っていて・・・」


ミルがそう言ってうつむく。


「そうですか・・・。でも、納得いっていないなら彼女が居ても自分の気持ちを伝えるのも良いのではないでしょうか?だって、もうふられませんし」


ラファイエルはクスッと笑って言った。


「そうだよね・・・!!うん。ラファイエルさん。ありがとう!!元気でた!」


そう言ってミルはラファイエルに背を向けて走っていった。


「フフッ元気な子ね。」


ミルの後姿を見送りながらラファイエルは楽しそうに言った。


「ラフィー…今誰と…?」


「フフフ…秘密です。」







「行っちゃったね。ここに居ればあの子は帰ってくるのに。」


ルキアが木の陰から出てきて言った。


「まぁ、自分の納得のいく行動をとればいいんじゃないの?」


「それもそうね。」


ゼファーの言葉に同意してルキアはこの場所の景色に見入る。


「あの子ちゃんと逝くことが出来るのかな?」


ゼファーがポツリと言った。


「あら?兄さんらしくもない。気になるの?」


その言葉に反応してルキアがゼファーの顔を覗き込む。


「別に。」


「つまんないの。」


ルキアはそう言って、また景色に見入る。


静寂が辺りを包む。







「ヘブン。どうした?こんなところで。」


「あぁ。イリスか・・・。あのさ、ミルを見なかった?」


「ミル?見ていないな。」


ヘブンの問い掛けに首を横に振るイリス。


それを見て残念そうにため息をつく。


「ミルがどうした?」


「あのね。あの子・・・早く見つけないと消えちゃうの・・・。」


「どういうことだ?」


イリスに簡単な説明をした。


「そうか。となると、ヘブンは今のままでいたいのか?」


「だって今のままのほうが楽しいじゃない。」


「でも、いつかは別れる時がくる。」


「そうだけど・・・今はとにかく、ミルを探しましょ!」


そう言ってヘブンはイリスを引っ張ってミルの捜索を開始した。



「見つけた。こんなところにいたの?」


シャドウが透明な翼を広げてミルの前に降り立った。


「何?」


警戒するミルにシャドウは肩を竦めて言った。


「さっきのは嘘なの。こうでもしないと簡単にこの場所から離れてくれないでしょ?」


「嘘?」


「そう。私とゼファー君は何も無いの。彼氏でも彼女でもない。彼にはただ協力してもらっただけ。」


あっけにとられているミルにシャドウは真剣な表情で言う。


「本題に入るわよ。あなたはこのままだと、天に逝くことが出来ずに消えてしまうの。だから、とっとと、成仏してもらうわよ。」


そう言ってどこからともなく、鎌を出し。


それを掴むと同時に、シャドウの目が緋色に変わる。


「さぁ、近道を作ってあげるから、その道を通って・・・・ってどこに行くの!?」


「このまま逝くなんて嫌!消えてもいい!!でも!あの人に言うまでは私は逝きたくない!!」


ミルはそのままシャドウを横切って走り出した。


目的地は決まっているさっきの公園だ。


「ちょっ・・・待ちなさい!!」


シャドウはミルのあとを追いかける。


「シャドウ!」


「!?」


空からの声にシャドウは上を向く。


「何してんの?」


「見れば分かるでしょ?時間が無いの!!」


「もう!?」


「そうよ!早くミルを連れて行かないと・・・」


「本当にミルは消えてしまうのか・・・?」


2人の話にイリスが割り込む。


「そうよ!」


シャドウがはっきりと答える。


「そうか。なら、私はミルと最後に話がしたい・・・。」


「でも、あの子にはもう、そんなに多くの時間が残されていないわ。きっと、あの公園に着くころにはもう・・・。」


シャドウがイリスから目を離す。


「そうか・・・」


イリスも悲しそうにその話を止めた。







いつかこの日が来ることはわかっていた。


最後にあの人に会いたくて・・・想いを伝えたくて走っている。


走らなくても飛べばもっと速いんだろうケド・・・飛ぶと力を使いそうで怖いから、走っている。


あの人は、私のことが見えるのかな?


今ごろになって思ってしまうけど、でもそんなの関係ない。


とにかく自分の気持ちを伝えて逝くなり消えるなりしたい!


そうこう考えているうちに公園に着いた。


そこに、彼はいた。


「あ・・・あのっ」


高ぶる気持ちを抑えつつミルは精一杯、呼びかけた。


その声に彼は気がつき振り向いた。


銀髪と赤い瞳が夕日に照らされてとても綺麗だった。


「何?」


ミルを見て彼・・・ゼファーは無表情な声で言う。


ミルはゼファーに近づき、自分の想っていたことを言った。


「私・・・あなたのことが好きです。」


その言葉を言い終えたと同時にミルの姿が薄くなる。


「あっ・・・もう時間がないんだ・・・」


などと呆然と言うミルをゼファーは黙って見ている。


「ははっこんなことなら早く言っておけば良かったです。」


一筋の涙を零しながら言うミルにゼファーは何か言いかけるが、言葉より先に行動にでた。


随分と体が景色に溶けて、触れることすら出来ないミルの身体に腕をまわし抱きしめる。


そして、ミルにこう言った。


「ごめん。君の気持ちに答える事は出来ないよ・・・。」


その言葉を聞いてミルはゼファーを見つめて笑顔で言った。


「やっぱり、そうですよね・・・。その答えだと思っていました・・・。」


膜を張ったような声。そして、ゼファーから離れ、完全に景色に溶けかけている身体を

クルリと反転させ、満面の笑みでこう言った。


―私のこと、忘れないでくださいね・・・。


そうして、1人の少女が消えていった。







しばらくしてから1人の少女がその場に辿り着いた。


「間に合わなかった・・・?」


「さっき消えたよ。」


「そう・・・。」


という短い会話をし少女が、地面に泣き崩れる。


その様子を見ながら青年は静かに言った。


「笑顔で消えていったよ。とても悲しそうには思えないくらい。あの結果でもあの子は満足していたよ。」


「でも・・・」


涙で濡れた顔をあげる。


「私が、あんな事をしなければ・・・・」


「そんなに自分を責めなくてもあの子は十分幸せそうだったからいいんじゃない?あの子はそういうのを望んでいないよ?」


少女のような風貌の少年がウィンクして言う。


「・・・。」


少女は少しの間悩み。そして、涙を拭いて強く頷いた。


「そう・・そうだよね・・・。」


そして、続けてこう言い


「お二方。今回はご協力、ありがとうございました。」


2人に頭を下げた。


空には、星が広がっている。







その日、1人の少女が天に召されることなく消えた。

その日は、不運と言うべきか…少女の誕生日だった…。







そして、風とともに少女の声が聞こえる・・・。


― いつかきっと・・・いつかまた会えるよね・・・。


その声に1人の青年が振り返る。


そして、


「会えるよ。」


そう言って青年は闇に消えた。




end

NO NAME−あとがき−


NO NAME作品について

こちらも創作関係ですね。

相変わらず酷い感じだと思います

こちらも凄い影響受けまくりのお話かなぁ…?

加筆してます。

ふと、思った台詞が2行ともう1つ…。

最後のもう1つのおかげでずいぶんと残酷なお話しになったような気がします。

と、このNO NAMEにて、協力者ならず被害者が…。

いつもお世話になっております。

弔人様の創作っ子がいらっしゃいますです。

というわけで、軽く登場人物の説明を…。


シャドウさん…我が家の死神さん…別名ツインズ姉。人の魂を送る時とかに必ず泣く。最近は本編よりも無愛想。

スルー様…我が家の死神さん。このお話が初登場。当時は意外と冷たい人のイメージが…。

最近ではそれとは掛け離れたおちゃらけた人になりました…。

ミル嬢…本編の主人公?なる存在。幽霊娘。

享年は16歳で弓道部所属のけっこう明るい女の子。

今は彼氏がいらっしゃる。

ヘブンさん…友人から頂いた子です。シャドウさんのパートナーの幽霊さん。

ミル嬢のお友達。

イリスさん…同じく友人から頂いた子…。こちらはミル嬢の友人。サイコゴーストさんです。   

続いて弔人様からお借りしたお子様方…。

ゼファー様・ルキア君・ラファイエルさん・旦那様

弔人様のお子様方なので変に語ることは出来ないです(汗)


このお話は弔人様の協力がなければ出来上がることがなかったです。

ありがとうございました!


コレを読む皆様へ…。楽しんでいただけたら光栄です。


H18.6.2



とサイトにあるものを引っ張り出してきたのですが・・・実は続きが存在すると言う・・・。

いつか公開出来たら良いなぁ・・・(遠い目)

ちゃんとサウンドのベルに出来たら公開したい・・・。


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