2話
そして今現在、
目を開けたら鳥籠の中でした。
いやいや、ちょっと待ってほしい。確かに名前が鳥子だけども。いや、そうじゃなくてもなんかもうおかしい、色々とおかしい。なんで意識を飛ばしている間に更に訳の分からない状況に陥っているのか。……一旦これまでの事を整理してみようと思う。
まず始めに上司のパワハラ中胃が限界を突破して戦線離脱。その後トイレに逃げ込んだらそこは異世界で、巨大な人間にストレスMAXでリバースして気絶。そして目が覚めたら鳥籠の中。今ここ……って駄目だ、状況整理しても全く理解が追い付かない。
絶賛混乱中の脳を少しでも落ち着かせる為、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。数分後どうにか冷静さを取り戻し、再度状況把握を試みる。鳥籠の外は最初の部屋と変わりないようだ。何か台の上に乗せられているのか目線が高い。
鳥籠の中だというのに私はベッドに寝かされている。それもパイプベッドのように固いものではなく、枕元には大量のクッションが置かれ、布団に関しては少し動けばこれでもかという位身体が沈むふわふわもっこもこの柔らかいものだった。しかもキングサイズで天蓋付き。
良く良く見ると着なれた仕事用の制服ではなく、可愛らしいフリッフリの所謂ネグリジェを身に纏っていた。
他の調度品もテーブルや化粧台、洋服箪笥などありとあらゆるものが揃えられており、安アパートに居を構える自身の部屋の数百倍立派だ。……鳥籠の中なのに。
冷静に考えてみても全然状況が理解出来ないのは仕方がないと思う。ただ鳥籠という事を抜きにしても品揃えもいい一種のスイートルームのような場所を与えられたという事から巨大な人間は私に危害を加えるつもりはないという事は理解できた。あくまでも現段階では、だけど。
異世界の人種がどうなっているのかは知らないけど、普通小さな人間なんて珍しい生き物見つけたら少しでも高値で売り払おうとするだろう。そのための先行投資という形の可能性だってある。寧ろそっちの方が確率が高い。
まだ頭が混乱しているが、まず始めにする事は自分の安全を守る事だ。その為には如何にあの巨大な人間の機嫌を損ねず、売り払うのを戸惑わせる位私の地位を揺るぎないものにするかにかかっている。奇しくもブラック企業なありがたくもないわが職場のおかげで鍛えられた口先三寸なおべっかだけは一流品だ。
絶対に安心、安全、not胃薬な生活を手に入れて見せるっ!!と1人意気込む。……既にキリキリ痛む胃はこの際無視だ。
そんなこんなで決心を固めていると再び部屋のドアがガチャリと開閉音が部屋中に響き渡り、思わずびくりと肩を震わせ掛け布団を頭から被って隠れてしまった。
掛け布団の隙間からドアの方を盗み見ると、最初に出会ったあの巨大な人間が立っていた。
それにしても先程は衝撃が強すぎて気が付かなかったけれど、この巨大な人間の容姿を改めて視認して驚愕した。
女性が嫉妬する程小顔で肌はとても美しく白くきめ細かい。中性的ではあるけど、女性的というよりも男性だとはっきり分かる顔立ち。長すぎず短すぎない蜂蜜色の細く艶やかな髪は後ろに撫で付けるように流してまとめており、軍服にも似た衣服の上からでも分かる身体つきは長くすらりとしていてかつ、程よくついた筋肉がより一層男らしさを主張している。
まだるっこしいのではっきり言おう。
とんでもない国宝級の美形だ。